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こらぼでほすと 拾得物8

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 気絶したライルの頭に、水をぶっかけてニールは叱っているが、それをライルが理解したか、どうかは怪しい。その都度、そういうことは躾けろ、と、刹那に命じているのが、アレルヤには笑える事態だ。ニールの言い方が、まるで大型犬を躾けるようなものだったからだ。

「キラッッ、明日はMS交換しろっっ。」

「え? 死にたいの? ライル。」

 MSの性能の問題だと、ライルは考えたらしい。で、キラとしては、素直な意見だ。機体の防御機能も優れているSフリーダムから、それより劣っているエールストライカーに乗り換えて、自分と戦うなんていうのは、前述の意見になる。

「ライル、やめといたほうがいいよ? キラは、刹那と互角なんだから。・・・ああ、さっきの録画してるから、見ればわかるよ。」

 ほら、これを見てねと、録画していたものを、アレルヤが見せたら大人しくなった。凄まじすぎて、とても対抗できるものではない。

「これでも、トランザムも種割れもしてないから、本気じゃないんだよ? わかった? 」

 こういう時のアレルヤは、無意識だが容赦がない。アリオスでトランザムして超兵モードアレハレルヤなら、僕らも対抗できるかな? なんて簡単に言ってくれたりする。

「おみゃえは、みじゅくだとじかくしりょっっ。」

 ニールにだっこされているティエリアも、ぷんぷん怒っている。現役マイスターが、あんなに簡単にやられるとは何事だ、と、言いたいらしい。

「まあまあ、ティエリア。キラは、修羅場潜って来てるからな。ライルは、まだMS一年なんだから、訓練次第だよ。・・・・・・ライル、着替えて、お茶にしよう。もう大丈夫だろ? ・・・・アスラン、キラ、何が飲みたい? 」

 そう全員で責めるなよ? と、ニールが取り成して、訓練は終わった。後は整備があるが、一息入れてからでいい。

「おまえ、そろそろ寺へ帰れよ? ニール。三蔵さんが痺れを切らすぞ? 」

 全員で、管制ルームでティータイムになると、虎は、そう注意する。いつもより長めに寺を空けているので、そろそろ三蔵が連絡してくる頃だ。体調も落ち着いたし、向こうのほうが何かと動きやすいから、そう勧める。

「そうですね。悟空にまかせっきりになってるから、そろそろかな。フェルト、また寺でいいか? 」

「うん。」

「寺へ帰るんなら、花火大会しようね? ママ。あそこの境内が一番やりやすいんだ。」

 今年は、夏を満喫するぞ、と、はりきっているキラは、ひとつめの計画を準備する。七月の終わりに、悟空は、三蔵と本山へ出張するから、それまでに、先にやっておきたいことがある。

「いいけど、また肝試しもするつもりか? おまえら、後片付けちゃんとしろよ? 」

「大丈夫です、ニール。俺も参加しますから。」

「いや、アスラン、おまえ、キラを甘やかしすぎだ。ちゃんと、後始末も一緒にさせないと、ダメな大人になっちまうぞ? 」

 すでに二十四歳なんて年齢の大明神様だが、ニールからすると、まだ子供認定を受けている。

「もういいんですよ。キラは、俺がいないと生きていけないほうが、俺としては都合がいいんだから。」

「そうそう、僕は、アスランに一生、お世話してもらうんだからいいんだもん。」

 いつまでも新婚気分が抜けないので、ニールも笑うしかない。これだけ仲が良いと、何も言えないから、みな、笑うばかりだ。

 そんなところへ、ニールの携帯端末に着信して、相手は言わずもがなの三蔵だった。

「・・・・はいはい・・・・・帰りますよ・・・・・ええ、フェルトと一緒に・・・・・え? 刹那たちは、マンションでいいでしょう。・・・・え? 無理ですよ。・・・・ああ、まあ・・・・・はいはい・・・・・・」

 怒鳴り声が携帯からはみ出しているが、ニールは気にしないで、いつもの応答だ。せっかくだから、全員引き連れて帰って来い、と、いうことだった。

「三蔵さんが全員、寺へ戻れって言うんだが、どうする? 」

「おりぃはにーるぅといっしょがいい。」

「ということなら、僕も一緒だね。」

「俺も寺のほうがいい。」

「刹那の行くとこなら、俺も同伴だぜ。」

 マイスター組は、最初から、そのつもりだ。 これからの暑い季節は、おかんのフォローはしないといけないからだ。

「まあ、おまえらがいいんなら、俺はいいけどさ。じゃあ、適当に服を用意して移動だな。」

 というか、ティエリアの服を買おうな? と、アレルヤに声をかける。どいうこったい、というくらい女子用の服だけなのだ。ダコスタが八戒経由で用意してくれた男子用は三着しかないし、真夏用のものではない。

「そうだね。とりあえず、そこからだね。・・・・・・フェルト、服買うのつきあってくれる? 」

「うん、いいよ。それから、食料の買出しもだよね? ニール。」

「そうだろうなあ。こんだけの人数の食料はないだろうなあ。」

 かなりの量をストックしておいたが、一ヵ月半くらい留守をしたので、それも尽きているだろう。そうなると一から作らないといけない。

「ニール、俺たちも手伝いに行きますよ。」

「でも、アスラン、おまえら、店があるだろ?」

「今日は、デリバリーでもしてください。明日から、俺たちやシンたちも合流しますからね。」

 せっかく、マイスター組も揃ったから、夏休みに突入したら、盛大に遊ぶつもりだ。まず大きい予定は、プールがあるし、次は水族館だの、遊園地だのと目白押しになっている。そうなると合流するのは、寺ということになる。一人で、それだけの人数の食事の準備は大変だから、年少組も当番制で手伝うのは、いつものことだ。

「ママーーーっっ、そうめん流しするからっっ。今年は、ちゃんと流れるやつするからねっっ」

「はいはい、せいぜい、がんばってくれ。」

 昨年、そうめん流しを試みたのだが、竹の節が、うまく削れていなくて流れが詰まったのだ。最終的にタライにそうめんを放り込んで、ぐるぐると回して食べたというしょっぱい思い出になった。

「そうめんながし? 」

「うん、フェルト、ものすごくおもしろいんだよ。そうめんだけじゃなくてね、ところてんも流したりしてね。えへへへへ・・・・・いろいろ考えてるから楽しみにしてね。」

 また、なんかよからぬことを思いついたらしい。ま、いいか、と、ニールは笑っている。失敗してもいいのだ。それが、また楽しい思い出になる。

「とりあえず寺へ帰るぞ。みんな、準備しろ。それから、ライルと刹那は、キラたちの整備を手伝ってからだ。おまえらの服は、俺が用意しておいてやる。はい、動け。」

 パンと手を叩かれて、おかんの一声で、全員が動き出す。わたわたと動き出す面々を見て、虎とダコスタは微笑む。なんていうか、もう、ニールの調子が、ものすごくいいのだ。一段落ついた安堵で、精神的にも落ち着いたらしい。


 フェルトを伴いニールは、別荘のほうへ戻る。それに従おうとしたアレルヤを虎は呼び止めた。

「来週、エターナルを降下させるのに、俺たちはプラントへ上がるが、おまえらは、どうする? そろそろ、ティェリアの本体が仕上がってるだろ? 」
作品名:こらぼでほすと 拾得物8 作家名:篠義