こらぼでほすと 拾得物9
「こっちも味見してみな。」
ニールは、自分の皿を、フェルトと交換する。フルコースとなると、ニールには量が多すぎて、食べきれない。
「あ、フルーツのソースなんだね。」
フェルトも食べ盛りの年齢だから、もぎもぎと、それを平らげていく。おいしい、という顔を見て、ニールも微笑む。本格的なフルコースとなると、時間もたっぷりとかかる。二時間近くかかって、デザートまで辿り着いた。もう入らない、と、デザートはフェルトに押しつける。
「ニール、ほんとに食事量が減ったね。」
「あんまり動いてないからなあ。・・・・・それより、大人のデートなら、この後、バーで一杯ってことになるけど、どうする? それとも、どこか腹ごなしの散歩でもするか? 」
「お酒? 」
「別に、ノンアルコールのカクテルもあるから大丈夫だ。」
「なら、体験してみたいな。」
はいはい、体験してください、と、親猫は笑って頷いた。こんなゆっくりとした時間を過ごせるのは、なかったことだ。歌姫からフェルトへのお疲れ様のご褒美なんだろう。
「ラクスに、お礼言わないとな? 」
「うん、そうだね。私だけ、こんなことさせてもらって悪いかな? 刹那もやりたいよね? 」
「刹那は、ライルがいるからいいだろう。たぶん、ラクスはさ、おまえさんが無事だったから喜んでいるんだよ。初めて会った時のフェルトの年齢が、ちょうど、ラクスが大戦に巻き込まれた年なんだ。だから、無事、乗り越えてきたことが、ラクスも嬉しいんだよ。」
状況は、かなりかけ離れてはいるが、15歳なんて年齢で、大きな戦いの流れに放り込まれたことは、どちらも同じだ。自分が体験したことを、フェルトも体験していくのだと思って、かなり心配したらしい。
「・・・・うん・・・・約束したんだ。絶対に生きて帰るって。」
フェルトも、組織が再始動する前の最後の休暇で、歌姫に約束させられた。何があっても生きることは諦めないで欲しい、と、言われた。諦めた瞬間に、全部終わるのだと言われたことが、心に残っていた。
「いい友達ができて、よかったな? 」
「・・・うん・・・・」
組織でしか知り合いがいなかったフェルトにしてみれば、外にできた友人だ。彼女たちが、組織では知りえないことを教えてくれる。それも、常に先を走っている相手だ。とても心強い友達だと、フェルトも頷いた。
「ニール、一口食べない? これは、ソルベだから甘くないよ。」
「おう、じゃあ、一口食べさせてくれ。」
口をパカッと開けて、ニールが顔を突き出す。あーん、と、フェルトが、その口にデザートスプーンで、ソルベを差し出す。うん、あっさりしているな、と、親猫が感想を述べるので、フェルトもニパッと笑う。これで、いちゃいちゃしているように見えないんだから、ある意味、すごいかもしれない。
まったりと親子猫がデートを楽しんでいる頃、『吉祥富貴』では、ティエリアが逃げ惑っていた。歌姫様が、あんみつを差し入れしてくれたのはいいたのだが、フランス人形のような衣装も持参していたからだ。
「いやにゃーーーーーやみいりょーーーー」
ちったかちったかとテーブルの合間を走っているわけだが、すぐに、歌姫様に捕まった。歌姫様も、コーディネーターだ。小さなティエリアの捕獲ぐらい造作もない。
「今回限りなんですから、サービスしてください、ティエリア。」
「もう、じゅうぶんらろーーーーー」
「いえ、まだまだです。ほほほほほ・・・・・着替えましょうね? 」
にゃーーーーと叫んでいるティエリアを救出できる猛者はいない。というか、微笑ましい光景というのにランクしている。
「期間限定だからな。」
「でも、トラウマになりそうですよ? 鷹さん。ここのところ、ティエリアの寝付きが悪いです。」
「テロリストは、擬似人格で演技することもあるだろ? その練習だと言えばいい。」
「性格は変えますけど、大きさは変えませんよ。」
また、今夜も機嫌が悪いんだろうなあーと、アレルヤは溜息をつく。楽しめばいいのに、と、キラは言う。基本ポジティブな大明神様にすると、着せ替えぐらいは、どうということもないらしい。
「キラだって女装させられたら、イヤだろ? 」
「僕、たまにしてるよ? アレルヤ。ラクスが、お揃いの服とか着せたがるから。ね? アスラン。」
歌姫様からすると、キラも、着せ替え対象である。随分と身長も伸びて体型が、男らしくなったから、最近は、あまり頼まれないが、四年前だと、水着もお揃いなんてことになっていた。
「キラは、気にしないからな。・・・・・ところで、アレルヤ。見舞いにAEUまで行くんだろ? ティエリアも連れて行くのか? 」
「ううん、ティエリアは、こっちに残るよ。たぶん、ニールが面倒を見てくれると思う。」
エターナルが降下してきたら、急いで、お見舞いをこなしてかなくてはならない。次に、エターナルが浮上する時は、一緒に宇宙へ上がらなければならないからだ。
「三週間くらいはかかると思うよ。慌てなくても大丈夫だ。」
「でも、三週間すると、ミニティエリアも帰っちゃうんだね。なんか、あのままでいいんじゃない? 可愛いのに。」
「二度と、あの姿で現れないだろう。あれだけやられたら、ティエリアもイヤになっただろうからなあ。」
小さいから逃げられない、ということが、よく分かったはずだ。いつもの姿なら避けられるのだから、ティエリアも、「急がば回れ」 は、身をもって学んだはずだ。
お客様が、歌姫様だけだから、スタッフも気楽なものだ。護衛のヒルダは、八戒の施術を受けていたが、それが戻ってきた。腕には、豪華なお姫様衣装のティエリアだ。
「ごらんよ、みんな。ヴィスクドールみたいで、可愛いじゃないか? いつものティエリアも可愛いけど、こっちも可愛いよねぇ。」
ヒルダも、やっぱり女性だから、小さいティエリアは可愛いらしい。チュッと頬にキスして笑っている。
「ひりゅらぁーーーーせきゅはりぃやらぁー」
「おや、おかしなことを、お言いだね? 美女のキスを、セクハラって。」
ティエリアは、中身はティエリアだから、「ばんちっっ。」 とか、叫んで暴れている。それを鷹が受け取って、今度は、鷹が、ちゅっとキスをする。
「にゃあーーーーーありぃるりぁっっ。たしゅけりょーーーーーーっっ。」
「アレルヤ、ハレルヤにチェンジして殲滅してもいいよ? ムウさん、そのティエリアのお尻を触ってる手がセクハラ。」
何枚も重ねられたペチコートの上からではあるが、鷹は楽しそうに、ティエリアの腰からお尻辺りを撫でている。やれやれ、と、ヒルダがティエリアを取り返しつつ、手を抓りあげた。
「おい、ヒルダ。本気で痛いぞ? 」
「当たり前だろ? 本気なんだから。ほら、アレハレルヤ、ちびを確保しときな。」
ひょいと軽く投げられて、ティエリアはアレルヤの腕に戻った。そこへ、同じ格好の歌姫様がいらっしゃって、ティエリアと並んで写真撮影なんてことになっていたりする。
ニールは、自分の皿を、フェルトと交換する。フルコースとなると、ニールには量が多すぎて、食べきれない。
「あ、フルーツのソースなんだね。」
フェルトも食べ盛りの年齢だから、もぎもぎと、それを平らげていく。おいしい、という顔を見て、ニールも微笑む。本格的なフルコースとなると、時間もたっぷりとかかる。二時間近くかかって、デザートまで辿り着いた。もう入らない、と、デザートはフェルトに押しつける。
「ニール、ほんとに食事量が減ったね。」
「あんまり動いてないからなあ。・・・・・それより、大人のデートなら、この後、バーで一杯ってことになるけど、どうする? それとも、どこか腹ごなしの散歩でもするか? 」
「お酒? 」
「別に、ノンアルコールのカクテルもあるから大丈夫だ。」
「なら、体験してみたいな。」
はいはい、体験してください、と、親猫は笑って頷いた。こんなゆっくりとした時間を過ごせるのは、なかったことだ。歌姫からフェルトへのお疲れ様のご褒美なんだろう。
「ラクスに、お礼言わないとな? 」
「うん、そうだね。私だけ、こんなことさせてもらって悪いかな? 刹那もやりたいよね? 」
「刹那は、ライルがいるからいいだろう。たぶん、ラクスはさ、おまえさんが無事だったから喜んでいるんだよ。初めて会った時のフェルトの年齢が、ちょうど、ラクスが大戦に巻き込まれた年なんだ。だから、無事、乗り越えてきたことが、ラクスも嬉しいんだよ。」
状況は、かなりかけ離れてはいるが、15歳なんて年齢で、大きな戦いの流れに放り込まれたことは、どちらも同じだ。自分が体験したことを、フェルトも体験していくのだと思って、かなり心配したらしい。
「・・・・うん・・・・約束したんだ。絶対に生きて帰るって。」
フェルトも、組織が再始動する前の最後の休暇で、歌姫に約束させられた。何があっても生きることは諦めないで欲しい、と、言われた。諦めた瞬間に、全部終わるのだと言われたことが、心に残っていた。
「いい友達ができて、よかったな? 」
「・・・うん・・・・」
組織でしか知り合いがいなかったフェルトにしてみれば、外にできた友人だ。彼女たちが、組織では知りえないことを教えてくれる。それも、常に先を走っている相手だ。とても心強い友達だと、フェルトも頷いた。
「ニール、一口食べない? これは、ソルベだから甘くないよ。」
「おう、じゃあ、一口食べさせてくれ。」
口をパカッと開けて、ニールが顔を突き出す。あーん、と、フェルトが、その口にデザートスプーンで、ソルベを差し出す。うん、あっさりしているな、と、親猫が感想を述べるので、フェルトもニパッと笑う。これで、いちゃいちゃしているように見えないんだから、ある意味、すごいかもしれない。
まったりと親子猫がデートを楽しんでいる頃、『吉祥富貴』では、ティエリアが逃げ惑っていた。歌姫様が、あんみつを差し入れしてくれたのはいいたのだが、フランス人形のような衣装も持参していたからだ。
「いやにゃーーーーーやみいりょーーーー」
ちったかちったかとテーブルの合間を走っているわけだが、すぐに、歌姫様に捕まった。歌姫様も、コーディネーターだ。小さなティエリアの捕獲ぐらい造作もない。
「今回限りなんですから、サービスしてください、ティエリア。」
「もう、じゅうぶんらろーーーーー」
「いえ、まだまだです。ほほほほほ・・・・・着替えましょうね? 」
にゃーーーーと叫んでいるティエリアを救出できる猛者はいない。というか、微笑ましい光景というのにランクしている。
「期間限定だからな。」
「でも、トラウマになりそうですよ? 鷹さん。ここのところ、ティエリアの寝付きが悪いです。」
「テロリストは、擬似人格で演技することもあるだろ? その練習だと言えばいい。」
「性格は変えますけど、大きさは変えませんよ。」
また、今夜も機嫌が悪いんだろうなあーと、アレルヤは溜息をつく。楽しめばいいのに、と、キラは言う。基本ポジティブな大明神様にすると、着せ替えぐらいは、どうということもないらしい。
「キラだって女装させられたら、イヤだろ? 」
「僕、たまにしてるよ? アレルヤ。ラクスが、お揃いの服とか着せたがるから。ね? アスラン。」
歌姫様からすると、キラも、着せ替え対象である。随分と身長も伸びて体型が、男らしくなったから、最近は、あまり頼まれないが、四年前だと、水着もお揃いなんてことになっていた。
「キラは、気にしないからな。・・・・・ところで、アレルヤ。見舞いにAEUまで行くんだろ? ティエリアも連れて行くのか? 」
「ううん、ティエリアは、こっちに残るよ。たぶん、ニールが面倒を見てくれると思う。」
エターナルが降下してきたら、急いで、お見舞いをこなしてかなくてはならない。次に、エターナルが浮上する時は、一緒に宇宙へ上がらなければならないからだ。
「三週間くらいはかかると思うよ。慌てなくても大丈夫だ。」
「でも、三週間すると、ミニティエリアも帰っちゃうんだね。なんか、あのままでいいんじゃない? 可愛いのに。」
「二度と、あの姿で現れないだろう。あれだけやられたら、ティエリアもイヤになっただろうからなあ。」
小さいから逃げられない、ということが、よく分かったはずだ。いつもの姿なら避けられるのだから、ティエリアも、「急がば回れ」 は、身をもって学んだはずだ。
お客様が、歌姫様だけだから、スタッフも気楽なものだ。護衛のヒルダは、八戒の施術を受けていたが、それが戻ってきた。腕には、豪華なお姫様衣装のティエリアだ。
「ごらんよ、みんな。ヴィスクドールみたいで、可愛いじゃないか? いつものティエリアも可愛いけど、こっちも可愛いよねぇ。」
ヒルダも、やっぱり女性だから、小さいティエリアは可愛いらしい。チュッと頬にキスして笑っている。
「ひりゅらぁーーーーせきゅはりぃやらぁー」
「おや、おかしなことを、お言いだね? 美女のキスを、セクハラって。」
ティエリアは、中身はティエリアだから、「ばんちっっ。」 とか、叫んで暴れている。それを鷹が受け取って、今度は、鷹が、ちゅっとキスをする。
「にゃあーーーーーありぃるりぁっっ。たしゅけりょーーーーーーっっ。」
「アレルヤ、ハレルヤにチェンジして殲滅してもいいよ? ムウさん、そのティエリアのお尻を触ってる手がセクハラ。」
何枚も重ねられたペチコートの上からではあるが、鷹は楽しそうに、ティエリアの腰からお尻辺りを撫でている。やれやれ、と、ヒルダがティエリアを取り返しつつ、手を抓りあげた。
「おい、ヒルダ。本気で痛いぞ? 」
「当たり前だろ? 本気なんだから。ほら、アレハレルヤ、ちびを確保しときな。」
ひょいと軽く投げられて、ティエリアはアレルヤの腕に戻った。そこへ、同じ格好の歌姫様がいらっしゃって、ティエリアと並んで写真撮影なんてことになっていたりする。
作品名:こらぼでほすと 拾得物9 作家名:篠義