こらぼでほすと デート1
保護者のほうに顔を向けて、それに気付いた。保護者の夏物のグレーのシャツは、半分、その色を変えていたのだ。自分のほうは、濡れていない。濡れないように、こちらに傘をかけてくれていたらしい。ぐいっと傘を押し付けて、そこから飛び出して、クルマに走った。こらっっと怒鳴っている声が背後から聞こえるが、そんなものは無視だ。エンジンをかけて、ヒーターを温かい温度に設定する。すぐに、戻ってきた保護者も、助手席に座った。
「この利かん坊めっっ。風邪ひいたら、どーすんだ? 」
ぺしっと頭をはたかれたが、そんなものは無視だ。とりあえず、温かいものが飲める場所を探すことにして、ナビシステムを動かした。
「刹那、腹減ったんなら、おやつがあるから慌てなさんな。ほら、これ。」
おそらく、休憩したSAで買ったのだろうスナック菓子を渡された。そして、カコンとプルトップを外す音がして、缶のカフェオレも渡された。カフェオレの匂いで、空腹が呼び起こされたらしく、腹がくうっと鳴った。
「何がいいんだ? 探してやるから言ってみな? 」
「温かいものがいい。」
「温かいもの? それなら、どこでもいいんじゃないか? 市街地に戻れば、ファミレスがあんだろ? そこでいいか? 」
ぴっぴっと検索する音がしている。食べられれば、なんでもいいのだが、保護者のことを考えて、そう言った。
「あんたの希望は? 」
「なんでもいいよ。腹減ってるからな。」
「じゃあ、最寄のファミレスを設定してくれ。」
「はいよ。・・・・くくくくく・・・・景色に見蕩れて、空腹を忘れるなんて、なかなかロマンチストじゃないか。」
いやいや、いいもん見せてもらったな、と、保護者は大笑いしている。
作品名:こらぼでほすと デート1 作家名:篠義