ひたぎブラシ
「さっき間近で見た時、先日会った時よりも、阿良々木くんがカッコよく見えたから。私も釣り合うようにならないと、と思っただけ。」
「そ、そうか・・・///」
やばい、多分、今、僕の顔、真っ赤だぞ・・・
「外見だけでなく、内面も、よりカッコよくなって。気付いてあげられなかったのが、情けなく思うわ。」
「ほ、惚れ直したか?」
頑張って、ドヤ顔した。
瞬間、戦場ヶ原の顔が僕の眼前に迫った。
「直す必要なんかないわ、ずっと惚れてたから。」
「かはっ!!!」
堪らず、バタンっ!と床に伏せてしまった。
「それより阿良々木くん、これ、置きっぱなしだったわよ。」
戦場ヶ原が、歯磨き粉で汚れた上着を、僕の面上に持ってきた。
「お、おお、そういや濯ぐ事で精一杯で置きっぱなしだったな。」
赤面しつつ、というより、熱でもあるんじゃないか?と思うくらい、熱くなりながら、床から起き上がり、戦場ヶ原から汚れた上着を受け取った。
「早く、行きましょう、阿良々木くん。阿良々木くんと居ると、時間が経つのが早く感じて困るから。」
「ああ。」
そう言って、僕はリビングへと戻り、玄関から見えない位置に来たところで、上着のポケットからメモ帳を取りだした。
貝木との一件も落ち着いて、あれから戦場ヶ原とも一層仲良くなれた気がしたんだ。
僕が寝坊という、空回りがあった分、取り戻したい。
戦場ヶ原には楽しんで欲しい。
そう意気込んで、汚れた上着を椅子に掛けた。
代わりに新しい上着を持って、玄関へと戻り、戦場ヶ原と一緒に家を出る。
「戦場ヶ原は、何処から行きたい?やっぱり、新アトラクション?」
「・・・阿良々木くんに任せるわ。」
戦場ヶ原が微笑んだ。
「よし、分かった!じゃあ、行こうぜ。」
僕も微笑み返し、戦場ヶ原に手を差し伸べた。
―――― ひたぎブラシ 完 ―――――