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比翼連理

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 カッと閃光が薄暗い部屋を駆け巡る。
 ムウの小宇宙が異質な小宇宙に対して強く反発したのだ。その衝撃の強さにカミュ自身も痛みを伴いながら、辛抱強く押さえ込む。
「ぐ…ああっ…..!!」
 苦痛に苛まれながらも必死にムウも耐えていた。ようやく、小宇宙がムウの中に溶け込んだ時、ぐらりとカミュの身体が傾いた。
「カミュッ!」
「大…丈夫…..だ」
 カミュの小宇宙によって身体の損傷が回復していくのを感じながら、ムウの上に倒れこんだカミュを受け止めた。
「なんという無茶を……これでは貴方のほうが危ないではないですか!?」
 回復術を施すことができるほどに小宇宙は回復できていないムウは顔を歪めた。
「かまうな。それより……ムウ。なぜ、おまえはあれほどまでに傷ついていたのだ?」
 カミュが少しでも楽になるようにと今度はムウがカミュを床に横たわらせた。カミュが与えてくれた小宇宙のおかげでムウを苛んでいた痛みがとれていくのを感じる。傷ついていた皮膚も少しずつ再生し始めていた。
「―――シャカを追っていったのですが……強力な結界に弾かれてしまったんです。この城に張り巡らされていたはずの結界が一箇所に集められ、凝縮されていました。あれはまるで……太陽のような激しい熱量の塊。無用心にもわたしは…その中心に飛び込んでしまい、弾き飛ばされたのです」
 焼け爛れた皮膚を忌々しそうにムウは見つめる。ジクジクと不快な痛みを感じた。
「そうか……ずっと我々はこの場所を探していたのだが、見つけられなかった。ところが、霧が晴れたようにこの場所の存在を感じ、ここを見つけることができたのだ。たぶん結界が消失したことによって、この場所が判ったのだろうな」
 はぁと一息ついたカミュにムウは口端を少し上げた。
「たぶん、そうなのだと思います。ここら一帯を覆っていたはずの結界が一箇所に集められたから、場所を特定できたのでしょう」
「おまえが飛び込んだという、その一箇所にシャカはいるのか?」
 カミュはムウから視線を逸らし、暗い表情で言った。
「おそらく……いえ、彼はそこにいました。それが何か?」
 表情を曇らせたカミュにムウが不信感を抱く。自分が聖域を離れている間に何か不味いことでも起きたのだろうかとムウは不安に駆られた。
 カミュはすっと一度瞳を閉じるとムウを真っ直ぐ見つめた。
「―――いいか、ムウ。よく聞いてくれ」
 ムウの腕にそっと手を置き、一言ひとことを噛み締めるようにムウに告げる。
「アテナは我らに……シャカの抹殺を命じられた」
 瞳を見開き言葉を失くしたムウに、カミュは力なく微笑むと瞳を閉じた。
「でもアテナは……本心ではシャカを救いたいと望んでおられるのだと……サガが言っていた」
「サガが?」
「ああ。そしてシャカを救うためにはムウ、おまえが鍵となるだろうとも。だから……行け。行ってくれ」
「しかし、それでは貴方が―――」
 敵の気配がヒタヒタとこの場所に迫っているのをムウは感じていた。恐らくカミュも感じているはずだ。
 このままの状態ではカミュは戦うことなどできない。敵に見つかれば最後、命はないと思える。それが判っていて、見捨てることなどムウにはできなかった。
 そっとカミュがムウの腕に手を重ねると真摯な瞳でムウを見つめた。
「―――シャカには…..借りがあるんだ……ムウ」
 カミュの言わんとしていることにムウは気づくと、痛みを堪えるようかのように顔を歪めた。
「―――わかりました。カミュ」
 観念したように瞳を伏せたムウは無理に笑顔を作ろうとしたが、口元が震えてうまく笑顔を作ることができなかった。まるであの時と同じように……沙羅双樹の園へと続く扉の前に立っているような錯覚にムウは陥っていた。
「早く行け。時間がない!私は大丈夫だから……すぐにシュラがこっちに来るだろう。行ってくれ。シャカを……そしてアテナを守ってくれ」
 ぐっとムウの腕を握るカミュにコクリとムウは頷くと意を決するように立ち上がる。
「どうか……カミュ、ご無事で」
「ムウ、君も」
 すっと口元に笑みを浮かべたカミュに答えるように、ムウもまた口元を和らげるとスウっと姿を消した。
「頼んだぞ、ムウ」
 そう小さく呟いたカミュは穏やかな笑みを浮かべると、そっと静かに瞳を閉じた。




作品名:比翼連理 作家名:千珠