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比翼連理

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-3-

「!?」
 来るはずの衝撃はなく目の前を光の粒子が通り過ぎていく。ムウの前に壁となったタナトスの膝が崩れ落ちた。
「死神が人間を庇うとは。これまた怪異なことだ」
「―――この者はハーデスさまの命を受けし者。それゆえ助けたまでだ。人間を庇うつもりなど毛頭ない!」
 嫌な音を伴いながら、口元から血塊を吐き出したタナトスは壮絶な笑みをヒュペリオンに向けた。
「ほう、ハーデスの命とな。ならば……その人間も生かしてはおけぬではないか」
 ぎりりと奥歯を噛み締め、膝を着くタナトスの前に一歩近づいたその時。

 ゴゴゴゴッ―――・・・

 激しい地鳴りが響き渡り、大気も同調するように震えていた。ぱらぱらと城壁が崩れ落ち、外の景色さえも伺えるようになっていた。
 明るかった空は厚い雲に覆われ、雷雲が立ち込めている。
「な…んだ……?」
 ビリビリと大気を震わす雷電が城壁を次々に破壊していく。崩れ落ちていく城壁によって濛々と砂塵は立ち込め、視界が奪われていった。遠くから怒声と悲鳴のような声が滑り落ちてくる。
「―――始まったか」
 すっと遠くを見つめるような瞳で、壊れた壁から覗く空を見上げたヒュペリオン。
「タナトス。決着をつけられなくて残念だ……」
 うっとり見惚れるような美しい笑顔を浮かべたヒュペリオンはすっと手を伸ばした。
「な……!?」
 その指先がサラサラと風に吹かれる砂のように空中に消えていくのをムウとタナトスが驚愕の眼差しで見つめた。
「我々も、おまえたちも所詮…『天球』の贄でしかない……』
 そう儚く笑んだ後、ヒュペリオンの姿はどこかへ吸い寄せられるように光の粒子となって消えていった。
「一体…どうなって……」
「時間稼ぎでしかなかったのかもしれぬ。“始まった”とヒュペリオンは言っていた。最初からティターン神族ですら捨て駒だったのだろう……プロメテウスめ!!」
 吐き捨てるようなタナトスの言葉にムウは青褪めた。
「それでは…シャカは……」
 縦横無尽に空をかけていた雷光が同時に城を囲うように建てられた高い塔に降り注いだ。轟音が四方八方から響き渡り鼓膜を揺する。
「くっ―――」
 顔を歪めた瞬間、ムウたちのいた足元の床が崩れ落ちた。だが、身体は落ちることはなく空中に縫いとめられた。タナトスが作る結界の中にいたおかげなのだと瞬時に悟った。
「あれを―――見ろ」
 タナトスが指し示す先……崩れ落ちていく城壁の中心は暗黒のような暗闇に満ちていた。やがて空間を引き裂きながら徐々に姿を現す巨大な光の球体に息を飲む。
そして、その球体に寄り添うような男の姿があった。
「あれは……」
「プロメテウス。此度の災厄の元凶の男……おい、おまえ。ハーデスさまを御呼びしろ」
「え?」
「ぐずぐずするな!」
「……わかりました」
 首にかけていたペンダントを取り出したムウは一度じっと見つめ深く息を吸い込むと意を決したように叫んだ。
「ハーデスよ!此処に現れたまえっ!!」
 カッとペンダントが光り、周囲が美しい闇色へと変化していくのをムウは見つめた。



作品名:比翼連理 作家名:千珠