比翼連理
=Epilogue=
さわとそよぐ風が夏の終わりを告げ、悪戯に黄金の髪を舞わせる。
触れ合う沙羅双樹の木の葉の音に耳を傾けながら、シャカは静かに瞳を開けた。
地上にはない種の花が一斉に花開いていく。
その美しさに目を細め、高鳴っていく鼓動。
流れる雲が一瞬、太陽を覆い隠す。
そして―――。
「もう!シャカったら…….!せっかく、お土産でも持たせようと思ったのに」
小さく頬を膨らましながら、それでもどこか嬉しそうに笑った沙織は主不在の沙羅双樹の園を眩しく見つめた。
「予定より一日早い気がするのですが……」
ブツブツと不満そうにいうムウに、サガは笑いながら答えた。
「きっと時差があるのだろう……それも随分と冥王にとっては都合の良い時差が」
「そうだな、サガ。アテナ、我々はきっちりと時間厳守で迎えに行きましょう」
フンと鼻息の荒いアイオリアに沙織は笑いながら答えた。
「―――いいじゃない、アイオリア。その時はのんびりと迎えにいきましょう。ああ、でも。もしも、予定より早くシャカが帰ってくるようなら、簡単には渡しませんけれど」
にっこりと笑む沙織にそれでこそ我が女神、と皆が笑い声を上げた。
「では……さっそく色々と策を練っておきましょうか。きっとすぐに帰ってきますよ、シャカは」
そう言いながら遠く彼方を見つめるカミュ。
サガは沙織をエスコートしつつ、周囲に微笑みながらカミュの言葉を受けて皆に告げた。
「今から作戦会議でも開くとするか?」
「そうですね」
「それはいいな」
「うふふ。素敵な案ね。みんな集まって美味しいお茶でも飲みながら、作戦会議を開きましょうか」
沙羅双樹の園から少しずつ賑やかな声が遠ざかっていく。やがて、ひっそりと静まり返った園。
優しい風が撫でるように吹き抜け、静かに処女宮の扉は閉じられた。
Fin.