東方~宝涙仙~ 其の伍(5)
東方〜宝涙仙〜
「私が力尽きようと、紅魔館を守らなきゃいけない義務があるの。」
ー紅魔館ー
夢子と風香は会話をしていた。
「あ、メイド長、先ほどお嬢様が」
「あぁ、散歩に行ったのよ。」
「ご存知でしたか。」
「当たり前でしょ。」
夢子は正直言ってメイド長風香をまだ信頼しきれていない。どこか雑な風香を信じていいものか迷っているのだ。
「ほら、掃除終わらせるよ。」
「あ、はい。」
しかし風香は仕事をしっかりとこなす。色々大雑把ながらしっかりとノルマは達成している。だからこそ文句は言えないから余計困る。
夢子と指示通り掃除を始める為掃除用具を取りに向かった。指示した本人はおそらく洗濯中であろう、大量の服の入った(いや、ここまでくるともう積んであるに近い)洗濯籠を運んでいる。
見た目怪力とは無縁そうな体型のわりには重いものを軽々と運ぶ。よく見ると空気を操って空気の気流に乗せて運んでるだけだが。
彼女が歩くと空気が綺麗になる。"紅魔館の空気清浄鬼"と呼んでいる下っ端メイドもいる。"鬼"というほど怖い性格ではないが、一度彼女を怒らせた奴がいて、その時の怒り方こそまさに"鬼畜"だった。
いや、暴力的な事ではなかったが・・・やり方が汚いというかなんというかだった。
彼女は、怒りの発端となったメイドの周辺の空気を汚染させた。そのメイドはしばらく他のメイドから不快に思われる事となり軽蔑やら無視やらされた。
「やっぱ怒らせたくないからメイド長への文句は言わないようにしたほうがいかしら。」
夢子は掃除用具のある部屋を目指しながらささやかに呟いた。
「やっと全部運び終わったー。いやー大変大変。」
夢子に掃除の指示をし、洗濯物を外に運び終えた風香は日差しを見上げながら休憩していた。
ただ掃除よりも洗濯物を干すほうが圧倒的に楽なのだ。だからちゃっかり風香は夢子に掃除を押し付けた。そして運んだ洗濯物を下っ端メイドに押し付けるのも風香の仕事。
「頑張ってるようにみせるのに一苦労。こりゃ真面目にやってたら体が持ちませんな。」
周りからは大雑把ながら働き者と思われているが、実際大雑把なうえに中途半端にしか働かないというなかなかの廃人だった。
風香はその辺のメイドを呼び止めて洗濯物を干すように指示した。メイドは断ることなく笑顔で了解する。もしかしたら内心「自分でやれよ」とか思ってるかもしれないが、結局働いてくれるならそれでよしというのが風香の流儀だ。
風香は仕事(人に仕事を押し付ける仕事)を終え自分の部屋に戻ろうとした。しかしこれから次の仕事までずっと部屋にいるのも暇ということで、久々に門番が寝ていないか調べに行くことにした。
そして、門につくとやはり門番は寝ていた。あまりに気持ち良さそうに寝ているので腹を殴った。主に鳩尾(みぞおち)あたりを。
「グフゥッ!!」
「・・・。」
「本日二度目の鳩尾パンチ・・・ゲホッ。」
「おはよう。」
「なんかいろいろデジャヴ・・・。」
「てことはお嬢様にもやられたでしょ。」
「ええ、そうとう痛かったですよ。どちらも。」
「そんなに寝て飽きない?」
「寝ることに飽きるなんてありますかねぇ。」
焦り笑いを浮かべる美鈴は本当に苦しそうだった。なんかもう卵とか産みそうな表情だった。
「ちゃんと門番しなさいよ?」
「イエッ・・・サ・・・。ゴホッ。」
おもいの他大ダメージを与えられたので風香は満足そうに門を後にし、部屋へ向かった。門から玄関までが無駄に遠い紅魔館。リフォームして全体的に狭くするべきだと風香は昔レミリアに訴えていた。無論拒否されたが。
「やっと着いたぁ。はぁもう無理、動きたくないー。」
余った力で紅魔館の扉を開ける風香はまるでニート生活を50年間くらい行って弱体化した人くらいのに非力にみえる。
足をずるずる引きずるようにだらだらと歩く風香。赤いカーペットの毛並みがその引きずったところをラインを引くように跡が残る。
「部屋まで遠いなぁ・・・。もういっそここらで寝てしまおうか。ちょうど図書館近いし。」
風香の体が元々目指していた方向と違う方向にまがる。
風香の向かう先は図書館に確定したようだ。というか図書館で寝るつもりなのだろうかこの新メイド長は。
この紅魔館には紅魔館名所(自称)の大図書館がある。大というレベルではないほど広く、無限に広がる本棚と無数の本。魔女が経営している為か、魔法使いにしか読めない本も取り入れられているらしいという様々な分野に特化した図書館。
名は"ヴアル魔法図書館"。よく白黒魔法使いが遊びにくるという。遊びに来るたびに本が減っている気がするのが特徴、簡潔にいうと毎度盗まれている。
経営者の魔女のほうも本を盗まれては追加して、赤字で困ってしまう。そうでもないけど。
「入りますよー。」
「紅白?それとも白黒?」
「んー。三原色使用です。」
「あぁ、なんだ。アナタね。」
※パチュリー・ノーレッジ
二つ名:動かない大図書館
能力:火水木金土日月を操る程度の能力
紅白とはあの巫女を意味し。白黒はあの魔法使いを意味する、らしい。
「あの魔法使いに盗られた本は返ってきました?」
「ええ、4冊。」
「貸した数は?」
「貸した本なんてないわよ。」
あーたしかに。と風香が困った笑みを浮かべて納得する。
「じゃあ盗まれた本の数は?」
「数えたこともないわ。38冊ほど紛失してるけど。」
「まだ38冊返ってきてないようですね。」
すなわち44冊も持っていかれたのだろう。見事生還した4冊の勇者以外の38冊は盗んだ本人がまだ持っているのだろうか。案外あっさり捨ててそうだ。
「私が取り返しに行きましょうか?」
「アナタ語でそれを翻訳すると『部下のメイドに取り返しに行かせましょうか』になるんだけどあってる?」
「さすがです。いやはや、パチュリー様はお嬢様より私を見抜いてる気が・・・。」
現実はそのお嬢様にも見抜かれてるのだが、それを見抜いていない風香。
風香はその辺のソファーに腰掛け目を閉じた。基本的に寝るときは座って寝る。というか寝っ転がって寝れないのだ、色々訳があって(後ほど投稿予定、キャラ詳細編参照)。
パチュリーはその姿を気にも止めなかった。黙々と本を読んでいた。
風香が目をつぶって数分後、爆発音が聞えた。近い。この部屋からたしかに近い場所で爆発が起きた。
「今の・・・爆発?」
さすがのパチュリーもこれには気に止めた。
「そのようですね。部外者でしょうか。」
「わからないわ。見に行きましょう。」
「はい。」
風香の表情が珍しく本気の表情になった。二人は図書館をでて爆発音の鳴ったと思われる方向を目指した。
途中オロオロしながら廊下で怯えている掃除メイド妖精や、野次馬のように音源を捜す好奇心旺盛な洗濯メイド妖精などがいた。
「外から探したほうがよさそうね。外から炎上している部分を探しましょう。」
「はい。」
今の風香にはただ返事をしてパチュリーに着いて行くしかなかった。
「私が力尽きようと、紅魔館を守らなきゃいけない義務があるの。」
ー紅魔館ー
夢子と風香は会話をしていた。
「あ、メイド長、先ほどお嬢様が」
「あぁ、散歩に行ったのよ。」
「ご存知でしたか。」
「当たり前でしょ。」
夢子は正直言ってメイド長風香をまだ信頼しきれていない。どこか雑な風香を信じていいものか迷っているのだ。
「ほら、掃除終わらせるよ。」
「あ、はい。」
しかし風香は仕事をしっかりとこなす。色々大雑把ながらしっかりとノルマは達成している。だからこそ文句は言えないから余計困る。
夢子と指示通り掃除を始める為掃除用具を取りに向かった。指示した本人はおそらく洗濯中であろう、大量の服の入った(いや、ここまでくるともう積んであるに近い)洗濯籠を運んでいる。
見た目怪力とは無縁そうな体型のわりには重いものを軽々と運ぶ。よく見ると空気を操って空気の気流に乗せて運んでるだけだが。
彼女が歩くと空気が綺麗になる。"紅魔館の空気清浄鬼"と呼んでいる下っ端メイドもいる。"鬼"というほど怖い性格ではないが、一度彼女を怒らせた奴がいて、その時の怒り方こそまさに"鬼畜"だった。
いや、暴力的な事ではなかったが・・・やり方が汚いというかなんというかだった。
彼女は、怒りの発端となったメイドの周辺の空気を汚染させた。そのメイドはしばらく他のメイドから不快に思われる事となり軽蔑やら無視やらされた。
「やっぱ怒らせたくないからメイド長への文句は言わないようにしたほうがいかしら。」
夢子は掃除用具のある部屋を目指しながらささやかに呟いた。
「やっと全部運び終わったー。いやー大変大変。」
夢子に掃除の指示をし、洗濯物を外に運び終えた風香は日差しを見上げながら休憩していた。
ただ掃除よりも洗濯物を干すほうが圧倒的に楽なのだ。だからちゃっかり風香は夢子に掃除を押し付けた。そして運んだ洗濯物を下っ端メイドに押し付けるのも風香の仕事。
「頑張ってるようにみせるのに一苦労。こりゃ真面目にやってたら体が持ちませんな。」
周りからは大雑把ながら働き者と思われているが、実際大雑把なうえに中途半端にしか働かないというなかなかの廃人だった。
風香はその辺のメイドを呼び止めて洗濯物を干すように指示した。メイドは断ることなく笑顔で了解する。もしかしたら内心「自分でやれよ」とか思ってるかもしれないが、結局働いてくれるならそれでよしというのが風香の流儀だ。
風香は仕事(人に仕事を押し付ける仕事)を終え自分の部屋に戻ろうとした。しかしこれから次の仕事までずっと部屋にいるのも暇ということで、久々に門番が寝ていないか調べに行くことにした。
そして、門につくとやはり門番は寝ていた。あまりに気持ち良さそうに寝ているので腹を殴った。主に鳩尾(みぞおち)あたりを。
「グフゥッ!!」
「・・・。」
「本日二度目の鳩尾パンチ・・・ゲホッ。」
「おはよう。」
「なんかいろいろデジャヴ・・・。」
「てことはお嬢様にもやられたでしょ。」
「ええ、そうとう痛かったですよ。どちらも。」
「そんなに寝て飽きない?」
「寝ることに飽きるなんてありますかねぇ。」
焦り笑いを浮かべる美鈴は本当に苦しそうだった。なんかもう卵とか産みそうな表情だった。
「ちゃんと門番しなさいよ?」
「イエッ・・・サ・・・。ゴホッ。」
おもいの他大ダメージを与えられたので風香は満足そうに門を後にし、部屋へ向かった。門から玄関までが無駄に遠い紅魔館。リフォームして全体的に狭くするべきだと風香は昔レミリアに訴えていた。無論拒否されたが。
「やっと着いたぁ。はぁもう無理、動きたくないー。」
余った力で紅魔館の扉を開ける風香はまるでニート生活を50年間くらい行って弱体化した人くらいのに非力にみえる。
足をずるずる引きずるようにだらだらと歩く風香。赤いカーペットの毛並みがその引きずったところをラインを引くように跡が残る。
「部屋まで遠いなぁ・・・。もういっそここらで寝てしまおうか。ちょうど図書館近いし。」
風香の体が元々目指していた方向と違う方向にまがる。
風香の向かう先は図書館に確定したようだ。というか図書館で寝るつもりなのだろうかこの新メイド長は。
この紅魔館には紅魔館名所(自称)の大図書館がある。大というレベルではないほど広く、無限に広がる本棚と無数の本。魔女が経営している為か、魔法使いにしか読めない本も取り入れられているらしいという様々な分野に特化した図書館。
名は"ヴアル魔法図書館"。よく白黒魔法使いが遊びにくるという。遊びに来るたびに本が減っている気がするのが特徴、簡潔にいうと毎度盗まれている。
経営者の魔女のほうも本を盗まれては追加して、赤字で困ってしまう。そうでもないけど。
「入りますよー。」
「紅白?それとも白黒?」
「んー。三原色使用です。」
「あぁ、なんだ。アナタね。」
※パチュリー・ノーレッジ
二つ名:動かない大図書館
能力:火水木金土日月を操る程度の能力
紅白とはあの巫女を意味し。白黒はあの魔法使いを意味する、らしい。
「あの魔法使いに盗られた本は返ってきました?」
「ええ、4冊。」
「貸した数は?」
「貸した本なんてないわよ。」
あーたしかに。と風香が困った笑みを浮かべて納得する。
「じゃあ盗まれた本の数は?」
「数えたこともないわ。38冊ほど紛失してるけど。」
「まだ38冊返ってきてないようですね。」
すなわち44冊も持っていかれたのだろう。見事生還した4冊の勇者以外の38冊は盗んだ本人がまだ持っているのだろうか。案外あっさり捨ててそうだ。
「私が取り返しに行きましょうか?」
「アナタ語でそれを翻訳すると『部下のメイドに取り返しに行かせましょうか』になるんだけどあってる?」
「さすがです。いやはや、パチュリー様はお嬢様より私を見抜いてる気が・・・。」
現実はそのお嬢様にも見抜かれてるのだが、それを見抜いていない風香。
風香はその辺のソファーに腰掛け目を閉じた。基本的に寝るときは座って寝る。というか寝っ転がって寝れないのだ、色々訳があって(後ほど投稿予定、キャラ詳細編参照)。
パチュリーはその姿を気にも止めなかった。黙々と本を読んでいた。
風香が目をつぶって数分後、爆発音が聞えた。近い。この部屋からたしかに近い場所で爆発が起きた。
「今の・・・爆発?」
さすがのパチュリーもこれには気に止めた。
「そのようですね。部外者でしょうか。」
「わからないわ。見に行きましょう。」
「はい。」
風香の表情が珍しく本気の表情になった。二人は図書館をでて爆発音の鳴ったと思われる方向を目指した。
途中オロオロしながら廊下で怯えている掃除メイド妖精や、野次馬のように音源を捜す好奇心旺盛な洗濯メイド妖精などがいた。
「外から探したほうがよさそうね。外から炎上している部分を探しましょう。」
「はい。」
今の風香にはただ返事をしてパチュリーに着いて行くしかなかった。
作品名:東方~宝涙仙~ 其の伍(5) 作家名:きんとき