東方~宝涙仙~ 其の伍(5)
今さらな説明だがパチュリーは元々重度の喘息をわずらっている。下手をすればそのまま動けなくなるほど発作に体力を奪われる。その為あまり全力では移動できないのだ。しかし紅魔館の緊急事態にそんなことを気にしてはいられない。パチュリーがその喘息がいつ発症してもいいように風香は備えていた。が、いざなったらどうしようか悩んでいた。
「ゴホッ」
パチュリーが咳をしだした。
(やっぱ耐え切れなかったか、でも私にはなにも・・・)
風香は心の中で罪悪感に追われていた。これ以上無理させるわけにはいかない。まだ症状が軽いうちに止めておこうと思い声をかけた。
「パ、パチュリー様・・・」
「大丈夫よ、急ぎましょう。」
「でもその喘息じゃ!」
「私が力尽きようと、紅魔館は守らなきゃいけない義務があるの。」
「しかしあなたがここで無理をされれば・・・」
「あなたも誰かに拾われて、その人の為に紅魔館でこうしてメイド長やってるんでしょ。」
「・・・。」
「動けなくなったら死ぬわけじゃないんだし、大丈夫よ。心配してくれてありがとう。」
「無理なさらないでくださいね。」
正直なところパチュリーは辛かった。爆発による煙を吸い、さらに全力で移動している。飛んで移動しているとはいえ彼女にはかなりの負担だった。
ただ、自分の人生の全てといえる紅魔館を喘息ごときで見捨てるわけにはいかなかった。
二人の前に紅魔館本館エントランスが見えてきた。その頃にはすでにパチュリーも限界が近づいてきていた。
エントランスには大勢の妖精メイドが集まっていた。
「あ、メイド長!無事でしたか!」
風香は紅魔館の危機であるなか逃げて紅魔館を見物している妖精メイドが許せなかった。
「なんで逃げてボーっとしてるのよアナタ達!」
「え?」
「人命救助だとか原因探しくらいしなさいよ!」
「す、すいません・・・。」
「メイドが圧倒的に少ないな、食事班は?」
「それが・・・まだでして・・・。」
「もういいわ。アナタ達はパチュリー様を診ていて。私が食事班を探すわ。おそらくキッチンにいるでしょうけど。」
「他にすることは・・・」
「自分達で考えろ!」
そう言って風香は全速力で紅魔館内部へと戻って行った。
炎上が強まり、一部が崩落していた。
外では美鈴が爆発した場所を探していた。
「まずいわね・・・。あの崩落した部屋は確か・・・・・。」
外からも中からも紅魔館は緊迫した空気に包まれていた。
▼其の陸(6)に続く
作品名:東方~宝涙仙~ 其の伍(5) 作家名:きんとき