【銀魂】過去作品まとめ【万事屋一家メイン】
「もういいアルかぁ」
チャイナは一人ごとをいいながら鍋をかき回す。大きい鍋だが、今の所焦げた匂いなどは感じない。綺麗な白粥だ。
「つか、それ食えんのかよ。俺が味見してやろうかぃ?」
「結構アル」
「まぁ、そういわずに」
おたまを掴むと、チャイナは直ぐにその手を離す。軽く傷つく。わかってやっているのだろうか。
粥を少し掬って口に含む。味はやっぱりというか…、
「味がねぇ」っと敢えて口にした。それ以外の感想は特に思い浮かばなかった。
「当たり前アル。病人食に濃いめの味付けは禁止ネ」
「まぁ、不味くはないけど」
もう一口残ったのを口にした。
そのままお玉を返すと、「あっそ」っと淡泊な答えが帰ってきた。
俺はじとーと粘っこい視線をチャイナに向ける。
「何アルか?」
「……褒めてんだけど」
「私には貶してるようにしか聞こえなかったアル」
「……褒めまさぁ。褒めてんだからちっとは笑えば?」
「はぁ?」
チャイナは眉を潜める。
要約すると、コイツ頭でも打ったか?と言った顔をした。
「だから――…、」
何を言おうとしたのだろう。とにかく俺はまた何か言おうと口を開こうと気構えた時だった…
「神楽ちゃん。お粥できたー?」
向こうの部屋からタイミングを狙っていた様にメガネが声をかける。本当にタイミングいい。盗聴器の存在を疑いたくなるくらいだ。俺とチャイナな会話は、そこで削がれた。
俺はボリボリと痒くもない頭をかく。
チャイナな一呼吸置いてから、「今持ってくアル」と返事を返す。
見るからに重そうな鍋を軽々と彼女は持ち上げる。手伝おうかと手を差し出す仕草をしたが、チャイナはそれを制止する。言葉はない、不機嫌な猫みたいな目で睨んできた。そしてすぐさま視線を外す。
「お前、早く帰れよナ」
チャイナはそう言い残して立ち去った。
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「銀ちゃーん。お粥作ったネ」
襖を開ける音と、チャイナの声が同時に聞こえる。
狭い部屋なので、その声はよく聞き取れた。
「お前ぇ…ゴホッ、それ本当に食べれんのか?」
「大丈夫ですよ。神楽ちゃんお粥系は得意なんですって」
「そうネ。病人食系はマミーによく作ってたネ」
マミーのお墨付きアル。とチャイナな嬉しそうに語った。
ゴホッゴホッと旦那が咳する。台所に座り込んで、彼らの会話に耳を傾けていた。粥を食べる為に旦那が腰をあげた、気がした。何時もよりより一層気だるそうな顔が目に浮かぶ。
「そりゃあれだろ、母ちゃんなら娘の手料理ならなんだって嬉しいだろ………ま、サンキュ」
その言葉にきっと、チャイナは嬉しそうに笑ったのだろう。楽しげなチャイナの声が聞こえてくる。
その後チャイナは予想通り、九割方のお粥を食べたらしい。食べすぎだよ。晩ご飯食べれなくなるでしょっとメガネに怒られていた。旦那は少しだけお粥を胃袋にいれ、また布団に体を潜り込ませる。
「銀ちゃん」
「んー……」
「眠るまで子守歌唄ってあげるネ。そうしたら起きた時にはバッチリ風邪が治ってるアル」
「んー……」
こほんっと咳ばらいすると、彼女が歌いだす。
チャイナはきっと俺なんかが見たことない笑顔で、笑っている。
かつて姉が俺にしてくれた様に、旦那の体を優しく叩きながら。
聞きなれぬ祖国の歌を口づさむ。
心がモヤモヤして重い。
此処はとても居心地が悪い。
だけど此処にいたかった。
無機質な板に背中を預けた。
俺はそのまま、今度は邪魔する事無く彼女の声に耳を傾けた。
作品名:【銀魂】過去作品まとめ【万事屋一家メイン】 作家名:千米ともち