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Weird sisters story

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Clotho 11




一瞬何をされたのか、判らなかった。
離れようともがいても、両手をとられ、壁に押し付けられる。
「…………ア…ス、」
名を呼ぼうにも、それさえ遮られる。
余りの息苦しさに徐々に意識が薄れてきて、やがてぐったりと腕から力が抜けた。
それを見計らったのか、ゆっくり唇が離れていく。
解放されたレイは、しかしまだ手を取られていた為に逃げる事も敵わず、顔を逸らせて視線を避けた。
浅く息を繰り返し、呼吸を整える。
「つらいんだろう」
そんな声が聞こえてきても、レイは顔を向けなかった。
「シンの事が、忘れられずに」
「…………放して、下さい」
そう呟くと、意外にもすんなりと腕が離れる。
押さえつけられていた手首が僅かに痺れていた。
「殴らないのか、俺を」
そう問われてキッと目の前の人を睨みつけた。
「出来るものならそうしています!」
でも、どうしても出来なかった。
苦しげに眉根を寄せて俯く。
小さく震えている様を見られたくなかった。
「相当なお人好しだな…」
呆れたような声。
同時に、短い溜息のようなものが聞こえた。
「何故……あんな事をしたんですか」
俯いたままで言った。
アスランは、レイの瞳に溜まる雫を指先で撫でた。
驚いて顔を上げるレイの頬を、すぅっと流れる物が在る。
「泣いていただろう、お前」
「………………」
ベッドで寝入るレイに残された、あの痕。
「悪いが俺は、泣いている人間を見過ごせない性質なんだ」
「泣いてなど…いません」
「そんな所は強情だな」
苦笑を零す笑顔。
流れた痕を拭われて、それが素直に暖かかった。
「気を悪くさせたなら謝る。済まなかった。ただこれだけは言っておきたい」
顔を真正面に向けさせられる。
真っ直ぐな瞳は深い色をしていた。
「シンが…あいつがお前を泣かせるというのなら、俺はそれを許さない」
レイはただ、息を呑むことしか出来なかった。






「随分と興味深い結果のようだが」
その人はデータファイルを眺めて、微笑と共に言い放った。
「はい、恐らくは貴方の思惑と合致するかと」
「思惑とは人聞きの悪い」
「では何と答えれば良いんですか」
少しだけ憮然として答える。
そうすると、面白そうに眺められるものだからレイは呆れた。
「そうだね…チェスに例えてみるのが一番だ」
「黒の駒ばかりのチェスなど見たこともありませんが」
嫌味のように答えると、さも可笑しそうに笑う。
「仕方がないさ、とうの昔に終わったゲームだ。ところで、その駒の方はどうかな?」
「全て順調に進んでいます。X56Sも予定通り…シン・アスカが搭乗します」
「なるほど」
「Sシリーズもそれぞれ最終フェイズを迎えていますが…ただ、X23SだけはMAへの変形フェイズがまだ未調整です」
手を組み静かに報告を聞いていたギルバートだが、そっと口を開いた。
「…大丈夫かね」
「ロールアウトの時期が若干遅れる程度で、開発そのものに問題は」
「そうではない」
言葉を遮られたレイは、数回瞬きをする。
その意思を汲み取ったのか、ギルバートは再び口を開く。
「君の方だ。だいぶ、無理をしているようだが…」
レイは唇を引き結ぶ。
どれだけ隠していても、ギルバートには判ってしまう。
小さい頃から、どうしても嘘だけはつけなかった。
「大丈夫です…これは私個人の事なので、支障はありません」
ギルバートは瞳を伏せた。
レイは気を取り直して、言い放つ。
「報告は以上です」
「そうか、ありがとう」
常ならば直ぐに踵を揃える音が聞こえ、敬礼をして出て行くはずなのに、今日に限ってそれがない。
訝しんだギルバートが瞳を開ければ、レイが何か言いたげな顔をしてそこに立っていた。
「…………あの、」
レイは視線を彷徨わせて、そしてギルバートのデスクに視線を落として言った。
「…いえ、なんでもありません」
そんな様子が可笑しくて、ギルバートは傍らのコーヒーを手に取った。
椅子を回し、窓から望む外の景色を眺める。
「ザクを一機失うのは、少し勿体無い気もするが」
「そんな事はありません!それが…適切な判断だと思います」
「…今、ちょうど面白い情報が入って来ているのだよ」
ギルバートはカップに口をつけた。
「話は、それからだ」
言われた言葉に、レイはさっと敬礼を返した。
色んな想いを、押し殺して。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ