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非懐疑的人間の考察

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新年が明けて暫く経ち、然したる何事もないままただ戸外の寒気は募る。
 この時期の部活は辛い。そして2月に入る。
 鳳1年生の冬であった。
 宍戸の居所を問うて歩く鳳の姿が見られた。

 昼休み。教室のすぐ外の廊下で向日が言った。
 「ゆーし、宍戸どこいるか知ってる?」
 「なんで?」
 「さっき、鳳に聞かれたから」
 「お前も聞かれたんか」
 「ゆーしも?どこで?」
 「この辺」
 「え、鳳この辺まで来てたの?」
 「そや。居所どころか、

 『バレンタインデーに宍戸さんがヒマかどうか知りませんか?』

 と、フルセンテンスで会う人間ごとに聞きまくってるで」

 「そんな間接的な愛の告白みたいなことを総当りでしなくてもいいのにね…」

 鳳が宍戸に懐いているのは傍から見れば自明であった。
 しかし先輩後輩であることだし、どうも友達同士の付き合いをするようにもいかないようだ。部で一緒に練習することにでもなればまた違うだろう。
 これを機会に一気に距離を詰める気か!?と向日は思った。

 「でも、もう明後日じゃん。バレンタインデー」
 「そやねえ」
 確かにご招待にしては急すぎる。
 立ち話を続ける向日と忍足。廊下の向こうから、跡部と芥川が歩いてくる。

 「あ、ねえ~そこの二人!!」
 珍しく、寝起きではない顔をした芥川が、忍足と向日に声をかける。
 「宍戸どこいるか知ってる?」
 「…お前らもかい」

 たまたま集まってしまった面面は、全員が鳳から宍戸の14日の予定を聞かれていた。その真意を推測した。

 「だいたいなんでそんな日なのかなあ。ついに家族に嫁紹介かな?」
 芥川が言う。

 「なんやそれ。ちゅうか奴らはそこまでいってないんじゃ…」
 忍足が、観察眼鋭いツッコミを入れる。

 「じゃあ、『嫁当人の自覚がないまま、身内に勝手に披露の巻』だ」
 「あ、そうだねー」
 芥川と向日。面白がっている。

 「嫁という概念から離れろ貴様ら。大体、家に呼ぶとかは全然言ってないだろうが」
 跡部が言い、全員が気づいた。それも最もだ。


作品名:非懐疑的人間の考察 作家名:りょくや