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こらぼでほすと 自転車

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朝食の後片付けを終えると、俺のダーリンは本堂のほうへ行ってしまった。あちらからの騒がしい声が気になっていたからだ。

「あああああああーーーーー」

「にゃあーーーーっっ」

 フェルトとティエリアの叫び声に、こちらも廊下へ飛び出した。すると、ペンギンとイルカとおぼしき風船が、ふわふわと空へ上昇しているところだった。手を離してしまったらしい。すると、本堂から悟空と、俺のダーリンが滑り出てきて、ふたりして合図すると、境内の真ん中で仁王立ちになる。いきなり、どこから現れたのか、一本の棒が悟空の手にあって、それを、俺のダーリンが、同じようにしっかりと握ると、「伸びろ、如意棒」 と、悟空は叫んで、その棒の先端を掴んで、勝手に、ものすごい勢いで伸びる棒と共に飛び上がった。下で、それを支えているのが、俺のダーリンで、後から遅れて出てきた俺の兄も、それを支える為に手にした。

 するすると伸びた棒は、ふわふわと浮き上がる風船まで届いて、片手ずつに、それを手にすると、また、しゅるしゅると、今度はゆっくりと棒が縮んで、元の大きさに戻った。

「錘を先につけておかないと、ダメだぜ、フェルト。」

「うん、ありがとう、悟空。」

「裸足で飛び出してくるほどのことか? 」

「そりゃ、叫ばれたら慌てるだろ? 」

 駆け付けてきた兄を、ダーリンは叱っているが、実は、その顔はありがとう、なんて言ってたりする。たぶん、俺の兄も、その表情を読んでいるらしく、和やかな顔で反論していたりする。

「にーるぅー、ねてりょっっ。あしたは、おりぃとでーとだじょっっ。」

「はいはい、横になるよ。・・・・けどな、ティエリア、あまり遠いところは無理だぞ? 」

 刹那もフェルトもデートしたのだから、自分もやりたいと、ティエリアは言い出した。とはいうものの、ティエリアも自力で移動できる距離は短いし、俺の兄が、ずっとだっこしていては疲れてしまうから、近所へ散歩ぐらいだと、朝から言われていた。

「よるまで、ふたりにゃっっ。ふこうへーにゃ。」

「・・・まあ、いいけど・・・・行きたいところでも考えておいてくれ。」

「わかったじょ。」

 よしよしと頭を撫でて、脇部屋に姿を消した兄を追い駆けるように、刹那と悟空たちも続く。それから、遅れてフェルトとティエリアも、脇部屋に入った。



 その一連の動きを見ていたら、となりから、自分とは違う紫煙が漂ってきた。どうやら、同じように廊下から、その様子を眺めていた義理の兄であるらしい。

「悟空の、あれ、なんですか? 」

「ありゃ、如意棒だ。伸縮自在の便利な棒だ。」

「普通じゃないな?  」

「当たり前だ。おまえの亭主なんか人類じゃねぇーだろうが。」

 『吉祥富貴』は、普通ではない。それが合い言葉みたいに交わされているが、ようやく、俺も、それが事実だと理解した。遺伝子操作されたコーディネーターがいるぐらいで驚いてはいけない。さらに、その上のスーパーコーディネーターまで揃っているし、兄の旦那のように得体の知れない人間もいる。たぶん、人間? ぐらい得体が知れない。ついでに、先ほど、人類から脱皮してイノベーター純粋種なんてものに、俺のダーリンも変化してしまった。

 つまり、『吉祥富貴』に関係している人間というのは、そういうものばかりということになる。

「でも、うちの兄さん、ごくごく普通でしょ? 」

「はあ? 元テロリストってだけで、十分、普通の枠から外れてるぞ。」

 以前は、同じテロリストだったらしいが、今は、すっかりと一般人だ。五年前に、宇宙で一度、死にかけて生き返ってからは、そちらの仕事は引退している。ここの寺で主夫をして、時々、『吉祥富貴』でバックヤードの仕事をするぐらいの生活をして、俺のダーリンや他のマイスターたちの帰れる場所になっている。

・・・・・俺にとっても、帰れる場所だもんな・・・・・

 世界のどこにも帰る場所がなかったはずのマイスターや俺にとって、兄が、ここにあるというのは、とても気持ちが落ち着く。これといって、何か助けてもらえるということではないのだが、心から休息できる場所があるというのが、なんだか、心強いのだ。

 カチッとライターで火をつけようとしたが、なかなか点かない。おい、と、義兄が、自分の火がついているタバコを向けてくれた。それから火をもらって、すうっと肺に吸い込む。

 ちょっと、義兄のタバコの灰がついていたのか、あちらのタバコの匂いがした。ニッと笑ったら、へっと鼻で笑われた。

「以前は、そうだけど、今は、ただの主夫なんでしょ? ・・・・あの人、ああいうのが一番だと思うんで、これからも末永くよろしくお願いします。 俺にしても、もう危ないことを、あの人にさせたくないし、お義兄さんのところなら、俺も安心していられる。」

 超絶マイペースな義理の兄だが、それでも、俺の兄には、いろいろと気遣いはしてくれているし、長年、一緒に暮らしているから、兄のことも、よく解ってくれている。大切に、というと、ちょっと語弊はあるが、まあ、愛されているとは言えるだろう。

 すると、となりに立っていた義兄は、じろりと睨んでから、「うぜぇ」 と、吐いた。

「はい? 」

「てめぇーが、真面目な顔で頭なんか下げるから、胸糞悪りぃーんだよ。・・・・おまえに、そんなこと言われるまでもねぇ。・・・・それ以上に何か言いやがったら、殺すぞ。」

 紫紺の瞳で、じろりと睨まれると、ぞくりと背中に冷水をかけられたように、ぞっとする。まともでないのは、お互い様だが、義兄のまともでないは、自分とは、かなり違う方向にある。

「えーっと、それは、了承してもらったってことなんですかね? 」

「破戒僧の女房が、元テロリストなら釣り合いが取れてるだろ? 」

「ええ、まあ、そうですね。」

 本来、坊主というか聖職者は、酒もタバコもやらないものだし、拳銃を懐に忍ばせてもいない。そういう戒律を守らない聖職者である義兄と、その相方が、元テロリストというのは、理に叶っていると、義兄は言っているらしい。

「そんなことより、明日、おまえが運転手でもしてやれ。いくら、ミニ猫でも、ずっとだっこなんて、うちのにはきつい。」

  いや、それが・・・と、それについては、頭を掻いた。もちろん、立候補したし、フェルトも、連れて行け、と、俺のダーリンも言ったのだが、紫の子猫は、威嚇するように親猫の腕の中から、きしゃあーと吹いて、「にーるぅと、あしゃからよりゅまで、ふたりにゃっっ。」 と、言い放って拒絶されていた。そう説明したら、「なら、移動手段でも考えてやれ。」 と、命じられた。兄は、右目の視力は失くしているから、クルマの運転は控えている。移動手段と言われても、ぴんと来ない。

 はてさて、と、考えていたら、はらりと紙が一枚、足元に落ちてきた。

「それなら、スピードは出ねぇーし、ミニがいなくなったら、荷物入れに取り替えられる。それ、どっからか調達してこい、義弟。」

「え? 」

「徒歩よりはマシだ。荷物も運べるしな。」
作品名:こらぼでほすと 自転車 作家名:篠義