こらぼでほすと 自転車
「あんたのばっかり買ったら拗ねそうだったからな。」
背後から声がしたので、振り返ったら、大きな箱を抱えたダーリンが笑っている。どうやら、プラモデル製作に勤しむ様子だ。
「刹那、これ、高いんだろ? 」
「あんたが今まで買ってくれたものよりは安い。たまには、贈らせろ。」
「いつのまに、そんな男前に育ったかねぇーおまえさん。」
「あんたの教育の賜物ということにしておけ。」
脇部屋の一角に巣でも作るように、ダーリンは、荷物を置いて広げ始めた。本気で、プラモデル製作に勤しむ様子だ。そして、兄は、家のほうへ戻って、冷たいものを運んできた。それを、俺とダーリンとに手渡すと、ティエリアの横に寝転がって、また、雑誌を捲っている。
ダーリンは、渡された麦茶を半分飲み、それを兄の額に触れさせた。もう、と、兄は文句を言いつつ、それを飲み干して、また横になる。それを確認するとダーリンは部品と説明書をにらめっこして、ニッパーで取り外し始める。
説明していた自転車を日陰に置き直して、俺もダーリンの巣の横に座って、ぎゅつと抱きついたら、ぽんぽんと頭を叩かれた。
作品名:こらぼでほすと 自転車 作家名:篠義