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加賀屋 藍(※撤退予定)
加賀屋 藍(※撤退予定)
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平和島静雄についての考察

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俺はたぶん、口が回る方だ。
というか、断定してもいいだろうね。こんなにもシズちゃんに嫌われてるぐらいだし。
舌先で人を翻弄する奴を、シズちゃんが死ぬほど…いいや、『殺す』ほど、嫌ってるのは知ってるでしょ?
そして俺は出会うなり自販機で潰しに掛かられる仲なわけだ。

けど、それはお互いさま。
言語という、人が身に付けた高等なコミュニケーション手段を全否定するシズちゃんが俺も大っ嫌い。
叶うなら今すぐにこの世から消え失せてほしいという意味で熱烈な両思い、とでも言っておこうか。
……実は実行しようとしたことがなくもなかったりとかね。
はは、やだなぁ!冗談だよ、ジョーダン。

ともかく、口もナイフも、俺が武器とするものはことごとくシズちゃんの前には無力なものとなって、響かない、刺さらない、代わりに薙ぎ倒される――わけだ。ま、簡単にやられる俺じゃないけど。

でも、それよりももっと苛立たしいことがあるんだよね。
さっきも言ったけど、職業選択にあたって、情報という人の合間を流れていくばかりものを専門にすることができたように、俺は言語を操るのを些か得意としている。
……だというのに、どんな言葉でもこの感情が形容できない、気持ち悪さといったらさぁ!
人が抱くささやかな優越感を、あの馬鹿げた筋力で叩き落としてくれるんだから、まったく憎たらしい生き物だと思わない?
わかるかな?
たとえば、そう――あの街を歩いているとき。
ふと煙草の匂いが鼻について、振り返るとする。
そこで細身のバーテン服の下から、堪えきれない苛烈な衝動が隆起するのを見たときの……あの!

ほら、わずか浅く早くなる呼吸と心音。
高揚感が体を走り、悔恨に似た悦びが胸を占めていく感じ。

憎んでる?
嫌ってる?
いっそ愛してる?

まさか!その全てとも違うね。
言語化されるのを強硬に厭う『何か』が、胸の内、聞き取れないほどの早口で喚き立てる――その感覚だ。
何と言おうかな?
俺は人間全てを愛しているし、その愛が歪んでいることも自覚しているけど。
シズちゃんに対する感情は、人全てに向ける愛しさとも、見るに値しないと定めたときの失望感とも到底同じようには出来ない。――さりとて無視するには大きい。

そもそも世界中の一体何で、彼を上手く形容することができるんだろうね?
形容できる何かであるほど、有り触れたものではないのに。

あぁ、前置きは長くなったけど、つまりは人の枠から外れたシズちゃんを、『シズちゃん』以外のどこにカテゴライズすればいいのかわからないんだよね、って話。