こらぼでほすと プール1.5
クラウスは、連合での会議に来ているので、ホテルも一流のところへ泊まっていた。軽い食事をして、それから少し飲んでから、部屋に誘われる。そこまでは、たわいもない話をしていた。
さすが、元カレとライルは内心で苦笑する。この一連の流れが、大人の駆け引きというものだ。言葉でなく秋波を使っているのが判る。
「戻らないとは聞いたが? 」
「ああ、どっちつかずのコウモリになるつもりはねぇーからな。カタロンのジーンワンは引退させてもらった。ただし、連絡は秘匿回線ってのを用意してもらうつもりだから、つけられるようにはしておくぜ? クラウス。」
部屋で、それまで出来なかった話になる。さすがに、人の視線と耳のあるところで、組織のことやカタロンのことは口に出来ない。
「だが、お兄さんが、あちらに復帰するなら、きみは、こちらでもいいんじゃないのか? 見たところ、お兄さんは元気そうだったろ? 」
ロックオン・ストラトスは、二人もいらない。それなら、ジーンワンでいればいいのではないか? と、クラウスは思った。
「兄さんは復帰させない。うちのダーリンは、そう決めてるし、俺も、それに賛成だ。あの人、片目がダメだから、射撃はできないんだよ? クラウス。気付いてなかった? 」
「え? 」
すっかりと片目が見えないハンデキャップは克服しているので、傍目には解らないが、たまに見えないからの動きというものがあって、ライルは、それに気付いた。身体は元に戻せるだろうが、視力は、どうだかわからない。それに、刹那は、二度と失う恐怖は味わいたくないと漏らしていた。だから、地上で暮らしていて欲しいのだ。もちろん、ライルも、その意見には賛成だった。せっかく生きていてくれたのだから、失いたくないのは、ライルも同じ気持ちだ。
「それに、五年も現役を離れているし、人妻なんだからさ。旦那さんと、穏やかに暮らして欲しいわけ。」
「ふーん。俺は、きみにも、それを望みたいんだけどね? それは? 」
「申し訳ないけど、それは無理だな。結婚した相手が、マイスターのリーダーだから、ダーリンと一緒に活動させてもらう。」
必要悪として、組織は活動する。戦いがあれば、その両者を力でねじ伏せるために降臨する。そこで、どれほどの人間を葬ることになっても、未来への礎となるなら構わない。そう覚悟した。カタロンのように、内から働きかけるのとは違うが、世界を平和にしていくには、そういう抑止力も必要だ。
カロンと氷を鳴らせて、グラスに入った酒を舐める。ぺろりと舌なめずりして、クラウスに視線を流す。やろうよ、という合図だ。
「シャワーを浴びてからにしないか? 」
「うん、そうだな。あーセーフティーセックスで頼むぜ。それから、痕はつけないでくれよ? 明日、プールなんだからさ。」
「ああ、了解。・・・・しかし、ラクス・クラインが一枚噛んでいるいるとは思わなかった。驚いた。」
クラウスも、自分のグラスから口に含む。平和の使者として名高い歌姫が、組織と関係があるなんて思わなかった。クリーンなイメージの人だとばかり思っていたので、刹那たちと接している姿には、正直、驚いたのだ。
「兄さんを助けてくれたのも、オーナーらしいぜ。そういや、一年程前に、ホストさせられただろ? あれも、オーナーの命令だったんだ。」
ああ、あれな、と、クラウスも思い出して笑った。テロリストがミッションとして、ホストクラブでホストをさせられるなんて、と、ライルが大騒ぎしていた。あの後、わざわざ中東まで、ライルは遠征してきて、散々に愚痴って行ったのだ。
「つまり、CBのスポンサーか? それともフィクサー? 」
「いや、そういうんでもないらしい。俺らを助けてくれたりはしてたけど、それだって、こっそりって感じだったからさ。あークラウス、その情報はカタロンでも公開しないほうがいいと思うぜ。なんか触らぬ神に祟りなしらしい。」
「その噂は、俺も聞いたことはある。だが、まったく真相は掴めなかった事案さ。たぶん、歌姫は、俺に、そういう意味での口止めはするだろう。そちらは、極秘事項ということにしておく。」
これから、連合を纏めて行く上で、カタロンもオブザーバーとして参加を要請されている。ひとつに統一されるのは、まだまだ時間のかかる作業だ。以前の連合に参加していない諸国も、今回は入ってもらうことになっているから、調整も大変なことになるだろう。大国の軋轢も、完全になくなったわけではない。だが、歌姫と通じることで入ってくる情報というものは貴重だ。その関係を成立させるには、こちらも、それなりの提案をしなければならないだろう、と、クラウスも考えている。綺麗事で済むはずはない。CBが動くような事態だって予想される。だから、カタロンの組織力だけでは手に入らない力を、クラウスだって欲する。力が全てではないが、あれば、すんなりと片付けられることもあるのは事実だ。
クラウスは、あくまでマトモに交渉していくつもりだが、それでも、使えるなら使いたいとは考えている。それをライルも感じて、ふっと笑う。
「あんたは知ってるんじゃないか? 『白い悪魔』 」
「キラ・ヤマトだったな。今は消息不明のはずだ。」
「『砂漠の虎』と『エンディミオンの鷹』は? 」
「アンドリュー・バルトフェルトとムウ・ラ・フラガだな。その二人も引退している。それが? 」
元AEUの軍人様だったクラウスは、その名前を知っている。プラントと一部国家群で形成されていた連合が起こした大戦の時の各陣営エースたちの名前だ。
「明日、逢えるぜ、そいつら。『エンディミオンの鷹』なんか、うちの兄さんの恋人なんだ。」
「はあ? 」
「兄さんさ、間男と恋人と旦那持ちなんだ。キラは、手のかかる親戚の子って感じだ。」
「え? 」
ライルは、元商社マンだから、大戦の英雄なんてものは知らなかった。だから、キラに凹にされてから、兄の間男から、いろいろとレクチャーを受けて、ようやく、ただものじゃない生物の集団だということを理解した。
「ラクス・クラインが極秘にやってる『吉祥富貴』ってホストクラブのホストってーのはさ、そういう過去、いろいろあった人たちなんだ。だから、明日、顔合わせして驚かされるんじゃないか? クラウス。ちなみに、ラクスは、兄さんを、『ママ』って呼ぶんだぜ? 」
え? という口をして、しばらく呆然としていたクラウスは、腹を抱えて笑い出した。つまり、自分も、その仲間入りさせるつもりなんだろうと、歌姫の意図に気付いたからだ。表立って、活動するつもりはないのだろうが、そういう人間を抱えていることだけは教えてくれるつもりらしい。
「なるほど、この繋がりについては、これから、いろいろと展開していきそうだ。そういうことなら有難い。俺たちの組織では賄えない部分をお願いしたい。」
さすが、元カレとライルは内心で苦笑する。この一連の流れが、大人の駆け引きというものだ。言葉でなく秋波を使っているのが判る。
「戻らないとは聞いたが? 」
「ああ、どっちつかずのコウモリになるつもりはねぇーからな。カタロンのジーンワンは引退させてもらった。ただし、連絡は秘匿回線ってのを用意してもらうつもりだから、つけられるようにはしておくぜ? クラウス。」
部屋で、それまで出来なかった話になる。さすがに、人の視線と耳のあるところで、組織のことやカタロンのことは口に出来ない。
「だが、お兄さんが、あちらに復帰するなら、きみは、こちらでもいいんじゃないのか? 見たところ、お兄さんは元気そうだったろ? 」
ロックオン・ストラトスは、二人もいらない。それなら、ジーンワンでいればいいのではないか? と、クラウスは思った。
「兄さんは復帰させない。うちのダーリンは、そう決めてるし、俺も、それに賛成だ。あの人、片目がダメだから、射撃はできないんだよ? クラウス。気付いてなかった? 」
「え? 」
すっかりと片目が見えないハンデキャップは克服しているので、傍目には解らないが、たまに見えないからの動きというものがあって、ライルは、それに気付いた。身体は元に戻せるだろうが、視力は、どうだかわからない。それに、刹那は、二度と失う恐怖は味わいたくないと漏らしていた。だから、地上で暮らしていて欲しいのだ。もちろん、ライルも、その意見には賛成だった。せっかく生きていてくれたのだから、失いたくないのは、ライルも同じ気持ちだ。
「それに、五年も現役を離れているし、人妻なんだからさ。旦那さんと、穏やかに暮らして欲しいわけ。」
「ふーん。俺は、きみにも、それを望みたいんだけどね? それは? 」
「申し訳ないけど、それは無理だな。結婚した相手が、マイスターのリーダーだから、ダーリンと一緒に活動させてもらう。」
必要悪として、組織は活動する。戦いがあれば、その両者を力でねじ伏せるために降臨する。そこで、どれほどの人間を葬ることになっても、未来への礎となるなら構わない。そう覚悟した。カタロンのように、内から働きかけるのとは違うが、世界を平和にしていくには、そういう抑止力も必要だ。
カロンと氷を鳴らせて、グラスに入った酒を舐める。ぺろりと舌なめずりして、クラウスに視線を流す。やろうよ、という合図だ。
「シャワーを浴びてからにしないか? 」
「うん、そうだな。あーセーフティーセックスで頼むぜ。それから、痕はつけないでくれよ? 明日、プールなんだからさ。」
「ああ、了解。・・・・しかし、ラクス・クラインが一枚噛んでいるいるとは思わなかった。驚いた。」
クラウスも、自分のグラスから口に含む。平和の使者として名高い歌姫が、組織と関係があるなんて思わなかった。クリーンなイメージの人だとばかり思っていたので、刹那たちと接している姿には、正直、驚いたのだ。
「兄さんを助けてくれたのも、オーナーらしいぜ。そういや、一年程前に、ホストさせられただろ? あれも、オーナーの命令だったんだ。」
ああ、あれな、と、クラウスも思い出して笑った。テロリストがミッションとして、ホストクラブでホストをさせられるなんて、と、ライルが大騒ぎしていた。あの後、わざわざ中東まで、ライルは遠征してきて、散々に愚痴って行ったのだ。
「つまり、CBのスポンサーか? それともフィクサー? 」
「いや、そういうんでもないらしい。俺らを助けてくれたりはしてたけど、それだって、こっそりって感じだったからさ。あークラウス、その情報はカタロンでも公開しないほうがいいと思うぜ。なんか触らぬ神に祟りなしらしい。」
「その噂は、俺も聞いたことはある。だが、まったく真相は掴めなかった事案さ。たぶん、歌姫は、俺に、そういう意味での口止めはするだろう。そちらは、極秘事項ということにしておく。」
これから、連合を纏めて行く上で、カタロンもオブザーバーとして参加を要請されている。ひとつに統一されるのは、まだまだ時間のかかる作業だ。以前の連合に参加していない諸国も、今回は入ってもらうことになっているから、調整も大変なことになるだろう。大国の軋轢も、完全になくなったわけではない。だが、歌姫と通じることで入ってくる情報というものは貴重だ。その関係を成立させるには、こちらも、それなりの提案をしなければならないだろう、と、クラウスも考えている。綺麗事で済むはずはない。CBが動くような事態だって予想される。だから、カタロンの組織力だけでは手に入らない力を、クラウスだって欲する。力が全てではないが、あれば、すんなりと片付けられることもあるのは事実だ。
クラウスは、あくまでマトモに交渉していくつもりだが、それでも、使えるなら使いたいとは考えている。それをライルも感じて、ふっと笑う。
「あんたは知ってるんじゃないか? 『白い悪魔』 」
「キラ・ヤマトだったな。今は消息不明のはずだ。」
「『砂漠の虎』と『エンディミオンの鷹』は? 」
「アンドリュー・バルトフェルトとムウ・ラ・フラガだな。その二人も引退している。それが? 」
元AEUの軍人様だったクラウスは、その名前を知っている。プラントと一部国家群で形成されていた連合が起こした大戦の時の各陣営エースたちの名前だ。
「明日、逢えるぜ、そいつら。『エンディミオンの鷹』なんか、うちの兄さんの恋人なんだ。」
「はあ? 」
「兄さんさ、間男と恋人と旦那持ちなんだ。キラは、手のかかる親戚の子って感じだ。」
「え? 」
ライルは、元商社マンだから、大戦の英雄なんてものは知らなかった。だから、キラに凹にされてから、兄の間男から、いろいろとレクチャーを受けて、ようやく、ただものじゃない生物の集団だということを理解した。
「ラクス・クラインが極秘にやってる『吉祥富貴』ってホストクラブのホストってーのはさ、そういう過去、いろいろあった人たちなんだ。だから、明日、顔合わせして驚かされるんじゃないか? クラウス。ちなみに、ラクスは、兄さんを、『ママ』って呼ぶんだぜ? 」
え? という口をして、しばらく呆然としていたクラウスは、腹を抱えて笑い出した。つまり、自分も、その仲間入りさせるつもりなんだろうと、歌姫の意図に気付いたからだ。表立って、活動するつもりはないのだろうが、そういう人間を抱えていることだけは教えてくれるつもりらしい。
「なるほど、この繋がりについては、これから、いろいろと展開していきそうだ。そういうことなら有難い。俺たちの組織では賄えない部分をお願いしたい。」
作品名:こらぼでほすと プール1.5 作家名:篠義