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たんぽぽが似合う君

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世話をしていく内に気づいたことがある。

この花は、似ている。何にという決定的なものはまだ思い浮かばない。
けれどきっと俺はそれに囚われているからこそ、気にかけるんだろうな。

そう考えに耽り込んでいると後ろから声がした。

「お前がこの花の世話をしていたのか」

その声に振り向けば、ラルがいた。

「ラル…?なんでこの場所知ってんだコラ」
「…俺の秘密の場所だからな」

俺の隣にやってきて、腰を低くすると爪先で身体を支え尻に踵をつけて座った。

秘密の場所…俺と同じだ。この場所は俺の秘密の場所でもある。
だとしたら、ラルもこの花のことを初めから知っていたのだろう。

まあ、細かいことは後で聞けばいいかと結論を出して。
そういえば…と脳内でパッと思い出した。

「今日はラルの誕生日だよなコラ」

言いながらラルの方を見つめれば、驚いた顔をされる。

「ラルのことだろ?簡単には忘れないぜコラ」

かと思えば途端に顔を赤くして、照れているんだと思った。
誕生日と言えばプレゼントだろう。けれど今は何も持っていない。

どうしようかと悩み、そして俺は考えた。


「これを今日の、一番最初の、ラルの誕生日プレゼントにする」

丁寧に育てていた花を摘むのは惜しいとは思う。
けれどやっぱり花もいつか萎れて枯れてしまう命。

それならば、一番輝いている時に摘んで、大事にしてくれる人に持っていてもらえる方がずっと輝ける。

「取れよ、その方がコイツも喜ぶぜコラ」


どうして放っておけないと思ったのか。
それが今、漸くわかった気がする。

似ているんだ、この小さくも気高く咲いている花が、ラルに似ていたんだ。


「この花、なんて名前だコラ」
「…たんぽぽぐらいは知っておけ」

ラルの綺麗な手に摘まれて、花びらに優しく触れられる。
呆れたように言うラルだが顔は笑っている。笑顔で花と戯れている。

その光景がすごく微笑ましく見えた。


「たんぽぽ…」

ふわふわした名前で、少しだけむず痒い。
でも何だか優しい響きのする花だな。

たんぽぽとラルの両方を見つめる。


「似合ってる」


手に持っているその花を奪って、ラルの髪に差し込んでそう言えば。
見る見るうちに彼女の耳が赤くなっていって、俺は笑った。




fin.
作品名:たんぽぽが似合う君 作家名:煉@切れ痔