2011お年賀公開(reborn)
気付いたときにはもう手遅れ(獄ハル)
「獄寺さん」
そう呼ばれて俺は振り返った。
するとそこに笑顔で手招きをしているハルが居た。
いきなり話しかけられたことと、どうしてこんな所に居るのかと怪訝に思いながらハルに近づいた。
「獄寺さん、これどっちが良いと思います?」
「あぁ?何だよこれ?」
目の前に出された二つの物体。ぬいぐるみだ。
緑とピンク色の兎のぬいぐるみが目に入った。
「今年は干支が兎なので、新しいハルファミリーに兎さんを迎えようと思いまして!」
「いい歳してまだぬいぐるみと寝てんのか」
「…どっちが良いと思います?」
ズイ、と顔にモコモコしたぬいぐるみを押し付けられる。
それに眉間に皺が寄るのが自分でも分かった。
「おい」
「どっちが良いですか?」
「先ず俺の顔から退けてから訊け」
「それもそうですね」
…コイツ、偶に腹黒いよな。
ハルの手に持たれた二つのぬいぐるみを見ながら考える。
そして考えた結果、どっちも気に入らない。
「どっちもダメだな」
「なんでですかー!すごく可愛いですよ!?」
「気に入らねえ」
うるさく喚いているハルを余所に俺は辺りを見回して、見つけた違うぬいぐるみを手に取った。
「獄寺さん?」
「ソイツ、お前に似てるだろ」
手に掴んだ黒い兎をハルの腕の中へ渡した。
目がくりくりと照明で潤んでいるように見える黒い兎。
まるでハルみたいだった。大きな瞳がぱちくりしている。
「獄寺さん」
そしてまた呼ばれた。だが、俺は今度は振り返らなかった。
その後に続くだろうハルの言葉を待つように歩幅を調整して。
「あの、」
背を向けてゆっくりと離れていったが、次のハルの言葉でそれも格好着かず意味を無くした。
「ハルお財布忘れてしまったので、買ってください」
end.
リクエスト内容「微ギャグ要素アリな新年(獄ハル)」
作品名:2011お年賀公開(reborn) 作家名:煉@切れ痔