DISC0RD
―Ⅰ―
DISC 0 RD
手を洗い、いつものように料理を始める。
ロビンが新たに麦わら一味に加わった。
それぞれ思うところがあるが、おれ達はロビンを歓迎した。
その後、伝説の島、空島へ行った。
なんて楽しい毎日なんだ・・と思う。
10歳の時、乗っていた船が嵐に巻き込まれた。
曖昧な記憶の中で、船が壊れていき、人が海に落ちていくのだけは覚えている。
何故その船に乗っていたのか、10歳より前は何をしていたのか、
あの事故がトラウマとして記憶されたからか・・・おれは覚えていない。
だが、おれはその運命を嬉しく思っている。
海で拾ってくれたジジィ。
この出会いがおれの全てだと思うから。
「サーーンジッ今日の飯なんだ?」
「今日はパスタだ。」
「美味そうだなぁ。」
「もう少しだから待ってろ。」
「おうっ。」
料理はおれのかけがえのないものになった。
この船に乗ることが出来たのも料理のおかげ。
本当にありがたい。
冒険には憧れていた。
小さい頃から『外に出たい』という感情が強かった。
ひたすらに外へ出たいと願って、想像していた気がする。
バラティエで働き始めたとき、客から聞く話が楽しくて仕方なかった。
そんな時、ジジィに聞かされた『オールブルー』。
それが今のおれの夢。
ルフィ達の仲間になって、いつかこの船で辿り着きたい。
いつか辿り着くことが出来るんだと思うと、興奮した。
それは今も、今日も、毎日、変わらない。
「出来たぞーーーーーーー。」
「うんめぇーーー!!!!!」
「聞いてくれよ、昨日サンジ風呂で溺れたんだ。」
「えぇー・・ダッサ。」
「うわぁそれは無いなぁサンジくん。」
「ナミすぁんひどいよぉ~・・・ウソップお前後で覚えてろ。」
「ひぃっ・・・・・!!!????」
「考え事でもしてたのかしら?」
「うんめぇーーーっ!!!」
「ロビンちゃーん流石っその通りですぅ。・・あーこらルフィよく噛め。」
「アホだな。」
「ぁあ!!!???」
「はいはい落ち着いて。」
「サンジーーーーーーおかわりくれぇ!!!」
「おまっもう食ったのかっ!!???」
太陽のあるうちは騒がしく。
夜になっても時に朝まで。
この馬鹿騒ぎがおれ達を前へ進ませる力になる。
全員が寝静まり、ゴーイングメリー号がおとなしくなる。
つまみと酒を持って不寝番の元へ向かう。
「ゾロ。」
「・・・。」
「ほれ、」
「座れよ。」
「おう。」
酒を注ぎ合い。
乾杯する。
おー寒ぃと言いながら体を寄せても拒まれることはない。
ゾロの肩に頭を乗せる。
「重ぇ。」
「退くか?」
「いや、・・・・いい。」
「ははっじゃ、このままで。」
ゾロのことは好きだ。
それがどんな好きなのかは分からない。
ただ、喧嘩でも構わない。
話していたい。目を合わせていたい。
傍にいたい。触れていたい。
「ゾロ。」
「んだよ。」
「楽しいな。」
「・・は?」
「楽しい。」
「おめぇ大丈夫か?」
「好きだぜお前のこと。」
「・・・・・っ!!??」
「ん?どした?」
「・・・・・・・・別に・・・」
「ゾロ?・・・・・ぁ・・」
ゾロの顔を覗き込むと、そこには真っ赤なゾロが居た。
今まで見たことが無いほど照れたゾロ。
思わず笑っちまった。
「・・・笑ってんじゃねぇ。」
「だって・・・お前っ・・ははっん―――
気付いたらおれは肩を掴まれてゾロにキスをされていた。
初めてのキスだった。
親のことを何一つ覚えていないおれにとって、本当に初めてのキス。
「・・・我慢出来ねぇ。」
何が?とは聞かなかった。
分かったから。
ただ一言、
「良いぜ。」
ゾロはおれの服を脱がしていった。
嫌じゃなかった。
むしろ嬉しくて、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
求められたことが、おれの感情がゾロに喜びを与えたことが。
嬉しかった。
おれも触れたかった。
もっと近くに感じたかった。
だから、その夜を境におれ達は気付くと互いを求めるようになっていった。
不寝番の度に時間を共にする。
そうしてどちらからともなく相手に触れた。
「コック・・・好きだ。」
ゾロの言葉がくすぐったかった。
甘過ぎるほど、ゾロの言葉が優しい。
ゾロが日に日に愛おしくなっていく。
ゾロに対する好きがどんな意味かを知った。
なんて幸せなんだろう・・・
知りたくなんかなかった。
知らなければいけない事実でも、知りたくなんかない。
それがおれの運命でも、逆らえない運命でも、そんな運命信じたくない。
そんな運命歩みたくない。
なぁ・・・・・・・・・嘘だと言ってくれ。
おれは何だ?
おれは誰だ?
おれはちゃんと生きてるか?
おれの生きる意味は・・・・・・・・っ・・