こらぼでほすと 夏休み1.5
食事を終えたら、ライルはふらふら出かけ、ハイネとアイシャは、ライルより少し遅れて出て行った。残ったのは、いつものマイスターたちだ。
これといってやることもないし、昨日まで散々に出かけていたのだから、これから、どこかということもない。いつもの家事を終えると、全員がぼへぇーと居間で休憩なんてことになっている。刹那だけは、黙々とガンプラを仕上げているが、これも完成には程遠い。
「それ、持って行けばどうだ? 」
今回、刹那はたくさんのプラモデルを買ってもらったので、荷物がすごいことになっている。組織へ戻っても、空き時間とか休日はあるから、作れるだろうと、ニールは思っていた。そういう趣味の時間を持たさないと、刹那はトレーニングとか整備とかばかりで、他の事はしないのだ。
「半分持っていく。残りは預かってくれ。」
「ああ、わかった。・・・・・なあ、ティエリア、アレルヤ、おまえらもなんか買いに行こうか? 」
刹那には、デートの時に、これでもかとプラモデルを買ったのだが、二人には皆無だ。だから、何か欲しいものがあったら、と、提案した。
「そういうことなら、次回でいいけど、僕はデートして欲しいな。ハレルヤも、だから、二日間ね。」
「デート? 物好きだな? アレルヤ、ハレルヤ。別に全員、同じことをする必要はねぇーと思うんだけどな? 」
「何言ってやがる? おまえは、俺らのおかんだろ? 子供は全員、平等に扱え。」
「僕としてはね、ニールに服を見立ててもらいたいんだよね。フェルトの着てたの似合ってて羨ましかったんだ。」
「俺はドライブだ。ちびみたいなのじゃなくて、もうちょっと凝ったやつをな。スピードの出るやつを借りて走ろうぜ。」
まったく違うご意見だから、やはり二日かかるらしい。まあ、別にニールとしては構わないので、いいよ、と、返事はした。今の季節は、外出はキツイが、それ以外なら長時間、出かけても問題はない。
「おりぃは、あにゃたのお菓子をもってかえりたいにゃ。みれいにゃにもたびさしぇせてやりたいにょで。」
ティエリアのほうは、ミレイナのお土産も兼ねている。というか、死んだと思われていたので、その詫びも兼ねている。わんわん泣かれるのは勘弁なので、甘いもので気を逸らそうという魂胆だ。
「長持ちするのなら、クッキーとかフィナンシェとかでいいな。それなら、午後から作るとするか。」
「しょれなら、ひつようにゃもにょをメモするにゃ、にーる。おりぃとありぃりゅらでかってくるにゃ。」
じゃあ、早速、と、ニールは食料庫をチェックして足りないものを、チラシの裏にメモした。ここ五年ですっかりお菓子作りの腕前も上達したので、簡単なものならお茶の子さいさいだ。
「和菓子は日持ちしないからなあ。あー月餅も長持ちだけど、あれは難しいんだよなあ。」
中華なお菓子にも、長持ちするものはある。ただし、中の餡が独特で少々手間がかかるのだ。
「八戒さんなら、売ってるとこ知ってるかなあ。」
「ニールの作るのだけでいいよ。今度までにマスターしておいて。」
そこまで大量じゃなくてもいいから、と、アレルヤが止めた。ほっておくと際限なく作りそうだ。じゃあ、ブレッドケーキとクッキーぐらいで、と、ニールも折れた。買出しするものをメモすると、アレルヤとティエリアは、例のラウンドウォーカーという自転車で外出した。自転車に乗ったことがないというので、貸し出すことにしたのだ。
『吉祥富貴』のほうは、通常営業に戻りつつあるが、エターナルでシン、レイ、イザーク、ディアッカが里帰りするので、メンバーは少ない。予約はあるので、その指名以外の配置をどうするか、と、考えていた八戒は、亭主に頬を突かれた。それから、目の前にグリーンティーが差し出される。
「足りないなら、ママニャンを呼び出せよ。あいつ、明日からフリーだろ? 」
「まあ、それもアリですけどね。」
「ハイネが店に出るんだから、一緒に連れ出したほうが安全だ。どうせ、一人にしといたら、悶々とするに決まってるぞ。」
明日、子猫たちが帰ってしまうと、親猫は確実に落胆する。そうなると、具合が悪くなったりするから、悟浄は、そう提案するのだが、一匹残っていることを忘れている。
「フェルトちゃんが一人になるでしょ? 」
「・あ・・・・・ついでだから、フェルトちゃんにも出勤とか? 」
「うちはホストクラブですよ? 悟浄。」
「そうかー。坊主とサルもいねぇーしなあ。」
「だから、やりくりが大変なんじゃないですか。いっそのこと、爾燕さんもオモテに出てもらいましょうか? 」
「まあ、それでもいいんじゃねぇーか? てか、いっそのこと休みにしたほうがいいと思うぞ。」
「予約が入ってる日だけは、しょうがありません。それ以外は、休みにするようにトダカさんに進言しておきます。」
シンたちがMS訓練でエターナルに同乗するのが決まったのは最近だ。イザークとディアッカのほうは、先に決まっていたから、予定からも外していたので問題はないのだが、賑やかし役のシンとレイまで留守となると、店の営業は厳しくなる。休みにしようにも、先に予約は入っていたから、こちらからキャンセルもままならないものだ。
「指名がキラくんと僕なんで、当人たちは欠けてないんですけどね。」
「まあまあ、そこいらは、俺とハイネで盛り上げるからさ。」
「わかりました。そういうことで、アスランに連絡しておきます。」
フロアマネージャーのアスランに予約客への対応を報告するためにメールをうつ。これらも、本来ならアスランの仕事だが、エターナルの出航準備でオーヴにいるため八戒が代わって仕切っている。
「とうとう、ちびたちも戻るんだな。なんか、ミニティェのニャーニャーがなくなると寂しいな。」
「あははは・・確かに、あれは和みましたね。」
そして、稼がしてもいただいた。ミニティェ見たさに、常連客が押しかけていたからだ。たまに、あのサイズで降りてくれたら、店としては嬉しいんですけどねーと、八戒は考えつつ、メールを送信する。
午後からお菓子作りを始めたら、カガリがフェルトを連れて顔を出した。私も手伝うぞ、と、腕まくりしているが、ちょっと待て、と、ニールが止めた。
「おまえ、仕事は? 」
「明日の午後までキラが変わってくれている。」
「それは聞いたけど、大丈夫なのか? てか、そろそろやめてやれよ。あいつも、イヤがってるだろ? 」
「いや、今回は大人しかったぞ。フェルトが降りてるのに、ちっとも会えなかったからな。」
「けどな、あいつも、いい年なんだしな。女装っていうのはさ。」
「細かいことを考えるとハゲるぞ、ニール。ほら、何をやればいいんだ? 捏ねるのか? 」
そろそろ「とりかえばや」はやめてやれ、と、説教しているニールの言葉なんて、どこ吹く風で、カガリはフェルトと手を出す。もう、と、言いつつ、ニールも指示を出す。まあ、ブレッドケーキは力がいるので、腕力自慢のカガリの参戦は有難い。
「これ、手伝ったら少しくれるか? 」
作品名:こらぼでほすと 夏休み1.5 作家名:篠義