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こらぼでほすと 夏休み1.5

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「いいけど・・・ああ、なあ、カガリ。おまえんとこに月餅の美味いのの店ないか? ティエリアたちに持たせたいんだけどさ。」

「月餅か・・・ちょっと待て。キサカに尋ねる。明日、間に合えばいいんだろ? 」

「日持ちするやつな。」

「わかってる。」

 オーヴは多民族国家なので、いろんなお菓子もある。もしかして、と、尋ねたら、それに見合うものはあると、カガリが連絡を終えて、保証してくれた。明日の出航は、オーヴからだから、それに間に合うように届けてくれることになった。

「ティエリア、ミレイナに渡すのに、いい手土産ができたぞ。」

 イアンの娘なので、ニールも知っている。ただし、ニールが知っているのは、小さい頃のミレイナだ。だから、気分的には小さい子供に用意する気分だ。クッキーやブレッドケーキより、珍しいもののほうが喜ばれると思ってのことだ。

「ありぎゃとうにゃ、にーりゅ。でも、おりぃは、こっちのほうがおすすめにゃ。」

「うん、私もニールのクッキーのほうが喜ぶと思う。」

「ミレイナなら、どっちも喜ぶと思うな。」

 ミレイナにしたら、先代ロックオンの作ったクッキーのほうが喜ぶだろう。なんせ、みんながおかん自慢をしまくっているからだ。

「しぇちゅにゃ、とどけておいくりぇりゅきゃ? 」

 ティエリアは、まず、身体を交換しなければならないので、一旦、ヴェーダへ戻る。だから、組織へ先に戻る刹那に、それを頼んだが、刹那は拒否した。

「泣かしたのは、おまえなんだから、ちゃんと手土産持参で謝れ。日持ちするんだから、それでも大丈夫だ。」

「僕も、そのほうがいいと思うよ、ティエリア。ミレイナは、本当に悲しんでたからね。」

 刹那とアレルヤにも言われて、ティエリアもこくんと頷く。あれしか方法がなかったとはいえ、さすがに本体を壊したのはまずかったと反省はした。ちゃんと、元の状態の本体で、ミレイナに謝るほうがいい。

「なんなら、そのまま帰ったら、どうだ? ティエリア。その姿で、『ごみんなちゃい』って言えば、誰だってイチコロでメロメロだぞ? 」

 カガリが、大笑いして提案したら、全員、ぶっと噴出して笑い出した。確かに、この姿は強烈だ。ミレイナじゃなくても、驚くに違いない。

「かがりぃぃーーばんちっっ。」

「おお、受けて立つぞ。」

「カガリ、そこで喧嘩吹っかけてないで、生地捏ねるほうに専念しろ。」

 ニールが叱ると、作業は再開した。明日、夜半にエターナルは出航する。それまで、こうやってバカ騒ぎして送り出すには、カガリの存在は有難かった。どうしても沈んでしまう気分を、勝手に盛り上げてくれるからだ。



 夕方まで、お菓子作りに専念したら、かなりの量が出来上がった。カガリが少し貰うと、クッキーとブレッドケーキを一本取ったが、それでも山のようなクッキーと七本のブレッドケーキが残っている。

「作りすぎたな。」

「そうでもないよ。クリスたちにもあげたらいいし、ラッセたちにも、いいお土産になる。全部貰っていくからね、ニール。」

 そこで、クリスたちに挨拶するのを失念していたことに気付いた。クリスとリヒティー、ドクターモレノもエターナルでプラントに戻る。

「しまった。挨拶すんの忘れた。明日、どういう予定なんだ? 刹那。」

「三時に迎えが来て、エアポートに集合することになっている。そこから、小型ジェットで移動する。」

「それなら、エアポートまで送りがてらに出向いて挨拶するか。」

 三蔵たちがいないから、これといって予定はない。それに最初から、見送るつもりをしていたから、そこで挨拶はすることにした。

「え? 大丈夫なのか? ニール。」

 すでに、ばりぼりとクッキーを食べているカガリが心配する。あまり暑い最中の外出はさせないように、と、カガリにまでニール取り扱い注意書は届いているからだ。

「クルマで移動するから問題ないよ、カガリ。それより、おまえ、明日帰るんだろ? 今日はどうするんだ? 」

「ああ、おまえのメシを食ったら、フェルトとラクスんとこへ泊まって、私だけ一足先にオーヴへ帰る。」

「リクエストは? 」

「カレーうどんがいいなあ。」

 なぜ、一国の国家元首様が庶民的なのか、気にしてはいけない。この国家元首様、過去にレジスタンスをやっていたなんて経歴がある特殊な生き物だ。だから、基本的に、なんでも食うし、家庭料理チックなものが大好物だ。

「辛い目のやつか? 」

「ああ、汗が噴出すようなのを頼む。それと、さっぱりしたサラダとか・・・・春雨サラダの酸っぱいバージョン。」

「わかった。・・・・そういうことなら、あんまクッキー食うな。腹空かしとけ。」

「ニール、女の子にとってはな、甘いものは別腹なんだ。」

「おまえ、その食いっぷりは、そんな可愛い表現にあてはまらねぇーよっっ。」

 冷ましているクッキーを、ばりぼりと食っているのだが、すでに、十個は腹に収まっている。別腹とかいう量ではない。

「じゃあ、腹ごなしに運動するから、刹那、付き合ってくれ。」

「わかった。」

 で、運動が体術の稽古だったりするのだから、ほんと、この国家元首は特殊だ。刹那に相手をさせておいて、とりあえず、クッキーを詰める作業を開始する。

「フェルト、おまえのおやつの分は少し取っておけ。それから、ケーキも一本、うち用にな。」

「うん。」

 寺は人の出入りが激しいので、何かしらお茶請けは必要だから、その分は確保させる。それを外して、クッキーは適当に袋に詰めた。それから、ケーキも一本ずつ、包装する。渡す相手別に、紙袋に入れて作業は終了だ。いくつかの紙袋を見て、ああ、帰るんだなあーと、それを実感すると、寂しい気分になる。この騒々しいのも、明日で終わりだ。

「フェルトはカガリと、あっちに戻るの? 一緒に、こっちで寝ればいいのに。」

「ううん、たまには五人で寝たいでしょ? ラクスが、そう言ってたから、ラクスのとこで泊まる。」

 最終日というのは、いつも、マイスター組で固まって雑魚寝する。フェルトだけ、一人で寝るというのもおかしな感じだし、それなら、ラクスたちとワイワイ騒いで寝るほうが楽しい。

「にぃーりゅのよこがいいにゃ。」

「じゃあ、僕はティエリアの横だね。ということは、逆は刹那でライルかな。」

「なんで、そんな決まりができてんだかなあ。」

「まいしゅたぁーくみにょきまりにゃ。」

「なんか、みんなで寝ると楽しいんだよね。僕、四年ぶりぐらいだ。」

 アレルヤは、長いこと、それに参加していない。五人全員が揃うのは、初めてのことだ。

「そうだよなあ。五人揃うのは、これからもなかなかないだろうしな。」

 さすがに、全員が一斉に休暇を取るというのは、難しいので、五人揃うのは、これからも稀なことだ。


 カタロンの一団も、帰国するためにエアポートへ移動していた。中東支部の責任者だったクラウスだが、カタロン本部へ招聘されて、そちらで幹部をやっているので、戻るのはAEUだ。

「きみも明日には帰るのか? 」

「そうだよ。また、冬ぐらいには降りてくるつもりだけどさ。クラウスは忙しいだろ? 」