こらぼでほすと 夏休み1.5
「おまえが三蔵と子供でも作れば活用できるだろ? 」
「刹那くーん、おかーさん、子供産めないから。それ、冗談だよな? 」
「トダカさんが言ってたぞ? どうにかならないかと。」
うちのお父さんも、何、孫に言ってんですかーと、内心でニールはツッコミだ。以前から結婚したら、と、トダカは熱心に勧めているが、そこまで言うとは思わなかった。俺の性別思い出してください、と、言いたい。
そんな調子で、いつものように時間は進んでいく。三時のオヤツを食べ終わって、のんべんだらりとしていたら、迎えのクルマがやってきた。歌姫様がエスコート役で、フェルトと一緒に顔を出した。
「そろそろ、お時間です。」
大きな荷物は運んでしまったから、ほとんど荷物はない。じゃあ、行こうか、と、ライルが立ち上がる。ここから、エアポートまで出向いて、そちらで自家用機でオーヴということになっている。だから、エアポートと言っても一般客の居るデパーチャーゲートではなく、個人機専用のゲートまで送った。そこには、シンやレイもいて、トダカも見送りに来ていた。
マイスター組を見つけると、トダカは近寄ってきて、「うちの娘さんは寂しがり屋だから、定期的に顔は見せてやってくれ。」 と、頼まれる。
「そうですよ、うちのママは外面はよろしいですけど、内面は繊細なんです。」
「ラクス、俺のこと貶してないか? おまえさん。」
「事実ですわ。今日から、私とフェルトが寺に泊まりますから、ご心配はなさらないでくださいね。どうぞ、お気をつけて。」
「ラクス、うちのおかんをよろしく頼む。」
マイスター組リーダーとして刹那が代表して挨拶する。それに、他のマイスターも一緒にお辞儀する。
それから、リヒティーたちとニールが別れの挨拶をして、全員が搭乗ゲートに消えると、すぐに専用機は飛び立った。ああ、いっちゃったーとニールが見送っていると、背中をポンと叩かれる。
「ニール、今日は私も寺で食べていいかな? 」
「ええ、トダカさん。リクエストがあれば? 」
トダカは気落ちしてしまうニールを知っているから、用事を言いつける。こうすると、そちらに意識が向いてしまうから被害が少ない。
「手間のかからないのにしよう。焼きソバとかでいいんじゃないか? フェルトちゃんも好きだったね? 」
「うん。」
「じゃあ、帰りに買い物して・・・・・なあ、ラクス。」
そして、ニールはラクスに頼み事だ。その内容を知っている歌姫様は、クスクスと笑って先に頷いている。
「今夜はフェルトと私でハーレムですわよ? 」
「すまないなーなんか、今日はダメなんだよ。」
毎度のことなので、歌姫様も慣れたものだ。マイスター組が帰ると、それまで一緒だった体温が傍になくなって眠れないらしい。だから、帰ったその日は、誰かと布団を並べている。
「なんなら、私くしといかがです? 以前よりは色香が出てまいりました。」
クスクスと笑いつつ歌姫様は、親猫の腕に自分の腕を絡める。きちんと右側だ。そして、フェルトが左側に同じように懐いている。
「おまえは、いつまでたっても、俺より年下だろ? 無理言うな。」
「じゃあ、あたしが寝てやろうか? ママ。ご希望通りの年上の美女だよ? 」
からかうようにヒルダが言うので、ニールは苦笑する。
「嫁に貰われるつもりはありませんから。」
「つれないねぇー。あたしが、どんなにプロポーズしても靡かないんだから。」
「そんな気ないくせに。俺を貰いたいんなら、三蔵さんに話を通してください。たぶん、もれなく三蔵さんもついてくるので、そちらにも了解を取ってもらわないと困ります。」
「え? あの亭主、付いてくるのかい? 」
「来るんじゃないですか? 」
おまえがいないと話にならんと常々言っているのだから、嫁ぎ先にも付いてくるだろう。というか、寺に夫婦で住め、と、言うに違いない。あんな大きな嫁入り道具は、こちらから願い下げだ、と、ヒルダも返して笑っている。
「ニール、すごい競争率だね。」
「いや、フェルト、この人たちのはからかってるだけ。・・・・焼きソバでいいのか? 」
「うん、紅しょうが一杯入れてね。」
「はいよ。オムオムもしてやろうな? 」
ぐりぐりとフェルトの頭を撫でると、歩き出す。また、どうせ戻ってくる。とりあえず、無事でいてくれればいいよ、と、内心でマイスター組に呼びかけて、家路に着いた。
作品名:こらぼでほすと 夏休み1.5 作家名:篠義