町内ライダー
「……そういう事情があったなら、説明してくれれば、俺だって無理に君達を引き離そうとはしなかった」
「聞かなかっただろ、あんた話聞かなかっただろ!」
神妙な面持ちで告げる名護に、剣崎が腹立ちを押さえ切れずツッこむ。
剣立は、持ち前の反射神経を発揮して、何とか店外へと逃れた。
その後、剣崎から事情を聞いた恵が、呆れ切った表情で剣崎と渡を見た。
「……なら要はブルマンが、彼がいる間はここにいなきゃいいんでしょ? 揃いも揃って、バッカじゃないの……」
「全くだな。そういう相談なら、まずは俺にすべきだ。君達は道を誤ったんだ」
「あなたも人の話を聞く癖をいい加減つけなさいよ、啓介」
恵に睨まれると、名護は敢えなく黙り込んだ。彼女の正しさに反論できる者は、ここにはいないようだった。
「マスター、ブルマン散歩に連れてくからね」
マスターが頷くと、恵は勝手知ったる様子でリードを取り出して、ブルマンの首輪に取り付けると、外へと引いていった。
そうして、無事に剣立は激甘ガトーショコラを堪能し、渡は、キバットの妙案を信用してはいけないという教訓を得たのだった。