emotional
「なーーーに怖い顔してんだよ傑」
「・・・・・・国松」
「なんだぁ?」
「俺は……」
「だああああああああああああっちょっと来いっ!」
グイッと手を引かれて教室から外へと連れ出される。
丁度昼休みと言うこともあり生徒達が騒いでいる廊下を歩くと周囲の視線が集まる。
「国松、何処に行く気だ?」
「ココだ!入れ!!」
連れて来られたのは毎日のように通っているサッカー部部室。
少し強引に中に入れられ座らされる。
バタンッと少し乱暴にドアを閉めると国松は真剣な顔でこちらを見た。
「国松?」
「はぁーーーーーッ、傑お前な、あんな大勢いる教室で何言おうとしやがったよ?」
「何って・・・・・」
「・・・・・・駆の事だろ?」
「!」
まさか言い当てられると思ってなかった為にかなり驚いた。
ギョッと視線を向ければ再度大きな溜息をつく。
「なん・・・・・で・・・・・」
「なんでってお前、何年の付き合いだと思ってんだよ?」
「・・・・・・」
「普段はクールなんて言われてるヤツが駆に対してだけ態度が違うんだぞ?それも、一目瞭然な位な」
「そう・・・・か?」
「ああ!駆にだけお前の態度が厳しいなんて言うヤツもいるがな、俺からしたら厳しいんじゃなくて他者より段違いに特別扱いしてるようにしか見えん!」
「!?」
「お前さ自覚ないのかよ?」
「?」
「お前が感情を出すのはサッカーしてる時か駆の事だけだって言う事に」
「!!」
それは思いもよらない指摘だった。
完璧に隠してると思ってた。
誰にも気がつかれないと、そう思っていたのに。
ゆっくりと血の気が引く。
「国松・・・・俺はッ」
「んな顔すんな、他のヤツは気がついてねーだろうよ」
「!?」
「当然、鈍感な駆もな」
「・・・・・ハァ」
重たい、本当に重たい溜息が出た。
心底ホッとしている。
手を額に当て再度溜息を吐く。
「どうする気なんだ?」
「……どうするとは?」
「とぼけんな、駆の事以外あるかよ」
「………たい」
「ん?」
「そんなの、俺が聞きたい」
「傑……」
俺にだってどうすればいいのかなんて分からない。
どれだけ長い間この気持ちに悩んできたと思ってんだ。
どれだけ長い間押さえてきたと。
どうすればいいのかなんて俺が聞きたい。
俺はどうしたら・・・・・・。
「日本サッカー界の至宝なんて言われてる王様が、なんで・・・・お前ならどんな子だって落とせるだろうが」
「………フッ、何でだろうな?」
「傑」
「何で俺は『駆』だったんだろうな、だけど、『駆』だけなんだ、どうしようもない、だろ?」
「本気……なのか?」
「冗談」
「・・・・・・・」
「だったら、良かったのにな」
「お前・・・・」
「本当に・・・・・冗談だったら・・・・・・ッ」
込み上げて来る感情にもう言葉は続けられなかった。
そんな俺に国松はそっと肩を優しく叩いた。
愛しい、愛しい、駆、お前が愛しいよ。
これは、どれだけ否定しても否定できない確かな『恋愛感情』だ。