鍵当番
「俺はさぁ、こんな仕事で帰る時間もまちまちだし、結局帝人君に寂しい思いさしてんのは変わんないのかもしれない。仕事の途中でシズちゃんと殺りあったりしてさ、ホントにこのまま死にそうって思うこともあるんだけど、帝人君が部屋で待っててくれてるなーって思ったら、もうちょっと頑張って帰ろうってなんとなく思えるんだよ。…だから一緒に暮らしたいっていったのは、完璧に俺の、自分のためだったのかもしれないけど」
「臨也さん…」
「君はただでさえあんまり感情を表に出さないんだからさ、せめて俺の前では、いやなことはいやだとか、欲しいものは欲しいとか、言ったっていいんだよ。俺相手なら遠慮なくそれができるでしょ?泣きわめいたっていいよ。それで君が寂しくなくなるのなら、」
「……」
「だから死にそうになって帰ってきた俺に、おかえり、って言ってよ」
ああ、だからか。寂しいって思ったのは臨也さんも同じだったのかも。だからこそ、自分は鍵を持たずに僕に託すなんていう、ひねくれた真似をしたのかもしれない。
非常識で人間離れしてて、ふらふらしてるこの人がちゃんとここに帰ってくるように、そのために僕はいるんだ。
僕はちゃんとこの人に必要とされてる。僕じゃなきゃだめだって、臨也さんは言うんだ。だからこそ、たった一枚しかないこの部屋の鍵が、いま僕の手にあるんだから。
「…臨也さんはこれから、もう少し早く帰るようにしてください」
「…え、帝人君、それって」
「僕も、なるべく寄り道しないようにしますから。だって臨也さんは鍵を持ってないでしょう?」
「あ、うん。そうだね」
「だから僕が──、早く帰ってきて鍵を開けておいてあげないとね」
(おまけ)
「あー、でもよかったなあ」
「?何がですか、臨也さん」
「うん?だってこれでもう夜我慢しなくていいじゃない。いやーもう限界でさあ、毎晩一緒に寝てるのに何もできないなんて」
「!!!!」
「でももう遠慮しなくていいよね。あ、平気平気、次の日学校に行けなくならないように手加減はするから…って待って待って帝人君!ボールペンしまってえええ!!!」