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藤ノ宮 綾音
藤ノ宮 綾音
novelistID. 27764
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emotional 02

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 ♪♪ジャカジャン~♪♪
 
 室内に鳴り響き始めた携帯の着信を知らせる音にゆっくりと夢の中から覚醒する。
 起きていたら碌な事をしそうにないと、早々にベットに入ったのは正解だったようだ。

 「はい?」
 『おれ、国松』
 「ああ、どうした?」
 『どうしたって何お前、寝てたのか?』
 「ああ」
 『せっかくの休日を寝て過ごすとかお前らしくねーな』
 「………今、家に俺達しかいないから」
 『は?』
 「両親と妹が一泊二日の旅行に出かけて、家には俺と駆しかいない」
 『うえっ!?お前………あー……納得した』

 あれ以来、国松はイロイロと俺の相談にのってくれる。
 特にどうこうアドバイスをくれる訳ではないが、ただ話しを聞いて相槌をうってくれるだけでもかなり気持ちが楽になる。
 だからだろうか、国松にも今のこの状況が俺にとってどういうことなのかをすぐに悟ってくれた。


 「お前さ、今日家に泊まりに来ないか?」
 『あー……そうしてやりたい所なんだが、親戚が家に来ていて無理そうだ』
 「そ……うか」
 『悪い』
 「いや」
 『傑、お前大丈夫か?』
 「フッ、正直焦ってる。余裕がない」
 『だろうな』

 そう、余裕がない。
 むしろ、崖っぷちギリギリだ。
 些細な事で爆発してしまいそうで、怖い。

 『なあ傑』
 「ん?」
 『駆にいっそ話したらどうだ?』
 「なっ何言って!」
 『気持ちも分からなくないが、そんな風に不安定になってヤバイ状況になる位なら、話して楽になったらどうだ?』
 「そんなこと……出来る訳ない……だろッ」
 『まあ……強制じゃないが、そろそろ腹を括るしか、ないんじゃないのか?』
 「ッ」
 『お前と駆の為にも』

 そう言って電話は切れた。
 頭の中では先程の国松の言葉がグルグルと回っている。
 自分の気持ちを駆に伝える?そんなこと、出来る訳がないだろ?

 国松、お前は俺を何だと思ってんだ?

 確かに答えがハッキリすれば状況は今よりもよくなるだろう。
 告白して駆に軽蔑されて、避けられれば、不用意に危険な状況にはならない?
 それはそうだと思う。けど。だけど。

 俺だってただの人間なんだぜ?

 アイツを、駆を傷つけるのが怖い、けど、それよりも。俺は。

 駆に嫌われて拒絶される事のほうが怖いんだ。

 ベットの上で膝を抱える。

 結局、駆の安全よりも自分の気持ちを優先してしまう、そんな男なんだ俺は。

 窓の外で降り続いている雨の音を聞きながら目を閉じる。
 考えるのは最愛の人のこと。

 失う事が怖い。
 どうしたらいいのか、わからない。

 駆、俺はお前が愛しくて、そして、怖いよ。 
作品名:emotional 02 作家名:藤ノ宮 綾音