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君が信じてくれるから

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※東のエデンのアフターのお話。オリジナルキャラが登場します。大丈夫な方はどうぞ。


すべてが上手くいくわけじゃないってことくらい、わかってる。失敗することだってある。わかってる。でも、やっぱり、実際に、そういう立場になると、やっぱり心は傷ついてしまう。


豊洲に集まったニートたちの何人かは、その超絶的なネットコミュニケーションテクニックを買われて、一流企業やその関連会社に就職した人たちもいた。滝沢のあの日本携帯ハイジャックでのメッセージの後、オトナたちの中にも、ニートたちを積極的に社会参加させようと動いた人たちもいたのだ。でも、そうやって脱ニートで社会人になったはずの人たちが、半年くらいして結局会社というものに馴染めなかったり、会社のほうでニートたちの勤務態度にクレームつけたり。いろいろな事情で、結局会社を辞めたり、辞めさせられたりで豊洲のニートの聖地に戻ってくる人たちもいた。

竹川くんもそういう一人だった。咲は自分と同い年で、エデンサイトの手伝いもしてくれていた彼が、泣く子も黙るような財閥系の超有名通信会社に就職が決まったとき、本当に喜んだ。自分のことのように嬉しかった。竹川くんの技術や、本当はやる気があるってことを認めてくれる人がいて、嬉しかった。でも、その彼が、5ヶ月後、再び豊洲に姿を現し、フロアーの一角に陣取って、パソコンに向かっている姿をみつけたのだった。


事情を根掘り葉掘り聞くのも悪いと思ったので、直接聞けなかったけど、ある日、竹川くんのほうから「よう」と咲に声をかけてきた。

「俺さ、また、ニート人生に復帰。あの会社、どうも、なじめなかった」
「そうなんだ・・・」
「俺もわがままだったかもしれないけどさ。俺が意見出しても、いろんなオヤジたちがさ、課長とか部長とかがさ、そんなことできるわけがない、とか、ありえない、とかさ。すぐ意見つぶされちゃってさ。なんか、俺、何のために雇われてんのかなって思ってたらさ。オヤジたちがさ、タバコ部屋でさ、一種の社会貢献のために、俺を、ニートの俺を雇ってるって話してるの、聞いちまってさ。別に俺じゃなくてもよくてさ、俺が働くまいが、働こうが、全然あのオッサンたち、かまないわけでさ。ただ、会社はニートの社会参加に貢献してますっていう、宣伝効果がほしかったらしい」
「そんな・・・」
「俺、一応さ、俺のできること、精一杯やろうってがんばったつもりだったんだけどさ。やっぱ、社会復帰難しいのかもな」
「竹川くん・・・」
「あんた、俺にいろいろ話しかけてくれてさ。仕事決まったときもすっげー喜んでくれたからさ。一応、報告しとこうって思ってさ・・・って、おい、ちょっと、泣くなよ!」
「ご、ごめん・・」
そう言いながらも涙が溢れてくるのを止められなかった。竹川くんは本当に優秀なプログラマーだと思うし、本当にがんばったはずなのに・・・。なぜ、こうなっちゃうのかな?何が悪かったのかな?

「まいったなー。俺さあ、そんなつもりで話したんじゃないんだぜー」
「ごめんね、つらい思いしたのは竹川くんなのに。私、勝手に・・・。ゴメンね」
「だっからさー。俺、別に、絶望してねーし。一度は会社勤めしてみて、やっぱ、それなりによかったと思ってるしさ。そのおかげで、俺、俺なりになんかできるかもって思い始めたしさ」
「そうなんだ・・・」
「そっ!アイツラが無理だ、できない、っていってたことさ、逆にできるって証明してやろうかと思ってさ。やっぱ、仮想敵国みたいなものあったほうが、やる気でんだよなー」
竹川が、既に未来へ目を向けていることを知って、咲はほっとした。
「竹川くん、私になにか手伝えることがあったら、いってね?私、デザインくらいしかできないけど」
「あんた・・・・前から思ってたけどさ・・・やさしいんだな」
「そっそんなこと、ないよ・・・」
「滝沢がホレルのもわかるぜ」
「そっ・・・そんな・・・」
「あんた、ふんわりしてるけど、ただヨワッチイじゃないんだな」
「竹川くん・・・」
「じゃっ!近況報告終わり!俺、戻るわ。またな」
「うん、竹川くんだったら、いろんなことできるよ!絶対できるよ!」
「・・・だから、そういうセリフ、オトコゴコロを惑わせるから、やめてくれる?いわれなくても俺、相当ジブンに自信あるからさ」
竹川は苦笑いしながら、そう言って去っていった。


咲はその場に残って、竹川が何かをやろうと歩き出したことに、すごく勇気付けられていた。まだちょっと涙がにじんでいる瞳をこする。

(私もがんばらなきゃ・・・)


「さ~き~」
「えっ?」
いつのまにか、滝沢が後ろに立っていた。

「咲、もしかして、竹川と浮気?」
「えっ!?ち、ちがうわ、そんなんじゃ・・・」
「ジョーダン!わかってるよ、そんなんじゃないって」
そう言って滝沢は咲の顔を見つめて、まだ残っていた涙を自分の手でぬぐった。
「たださ、咲はさ、他の人の苦しみや悲しみも自分のことみたいに、引き受けちゃうからさ。俺、時々心配なんだ。咲が傷つきすぎやしないかって」
「ううん、大丈夫、そんなことないよ。それに、私なんかが心配しなくても、竹川くんは全然平気で、がんばってるもん」
「うん、アイツはさ、すっげーヤツだからさ。きっと大丈夫さ。すっげーことやってくれるよ、きっと」
「そうだよね」
「でもさ・・・咲のやさしさ、咲が自分のために涙流してくれたこと、アイツ、すっげー嬉しかったはずだぜ」
「そんなことないよ、私、なんか勝手に泣いちゃって・・・」
「俺、わかるんだ、竹川の気持ち。俺も同じだったから。咲が俺のために涙流してくれて。平澤や板津が俺のこと心配してくれて。すっげー嬉しかったからさ」
「滝沢くん・・・」
「いくらイキガッテもさ、一人じゃやっぱり、限界あるしさ、できること」
「うん・・」
「誰かに信じてもらってるって、すっげー、嬉しいからさ。すっげーチカラになるんだよな。俺、咲がずっと俺を信じてくれてるからさ、ここまでこれた」
「滝沢くん。私が少しでも役にたってるなら・・・私もうれしいよ」
「咲。「少し」じゃないよ。俺、咲がいてくれるから・・・咲と一緒だから、戦えるんだ、いろんなこととさ」
「滝沢くん・・・」
滝沢は咲をぎゅっと抱きしめた。
「咲と出会えてよかった・・・咲が、俺のこと・・・愛してくれてよかった・・・」
「滝沢くん・・・わたしだって・・・滝沢くんと出会えてよかった」
「本当に?」
「本当に!」
「俺でよかった?咲。俺みたいなヤツでよかった?」
「滝沢くん、だから、だよ。滝沢くんじゃないと、イヤだよ・・・」
「咲・・・俺も咲じゃなきゃ全然ダメ。咲なしじゃ、「滝沢朗」は存在しねえよ」
「滝沢くん・・・」
「咲。愛してる・・・」
「あ・・・わたしも・・・」
二人はそっと唇を重ねた。

「咲・・・もう一回、聞かせて。俺のこと、愛してる?」
「もちろん・・愛してる・・」
「咲、もっと大きい声で言って・・・」
「愛してる!」
「もっと・・・もっと大きな声で聞かせて?」
「あ・・愛してるっっ!」
「サンキュー!すっげーうれしい!」
滝沢はニンマリ笑って、咲の背後に向かって、大声を上げた。
作品名:君が信じてくれるから 作家名:なつの