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藤ノ宮 綾音
藤ノ宮 綾音
novelistID. 27764
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emotional 04

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 「駆、俺は……」
 「?」
 「俺は、お前が好きなんだ」
 「!?」
 「言っている意味がわかるか?駆の言う好きとは違う好きなんだ」
 「兄ちゃん……」
 「だから、そんな自分に気がつかれないように、距離をとってた。フッ、そう言うと格好良く言いすぎだな、逃げてたが、正しいか」
 「………」
 「なぁ駆」

 握り締めた手に緊張から力が入る。
 俺はこんなに臆病だったんだな。

 「俺の事、嫌いになったか?」

 どんなに嫌われても、軽蔑されてもいい、ただ、ただお前を好きでいることだけは許してほしい。
 もう自分では止められないから。
 ゆっくりと視線を上へと上げる。

 どんなことになっても、覚悟する。
 視線が駆と合った瞬間だった。
 握っていた手が振りほどかれる。

 やっぱり、駄目か。

 そう思った次の瞬間。
 そっと背中に回された手は確かに駆のもの。
 自分を今、抱きしめているのは間違いなく駆。

 「駆?」
 「ズルイッ」
 「?」
 「ズルイよ、兄ちゃんはッ」
 「駆?」
 「ズルイ!!」

 大きくそう叫ぶと駆は抱きしめる腕に力を込める。
 ナニが起こっているのか理解できない。

 「僕と違う好き、そんなのっ、そんなのわかんないっ!」
 「……」
 「わかんないけどっ!!けどっ!僕は兄ちゃんとこうしていたいっ!」
 「!?」
 「うまく言えないけどっ、嫌じゃないっ!うれしいっ」

 それは余りに信じられない現実。
 願いすぎて望みすぎて見ている夢のよう。
 抱きしめてくれている駆の身体も、震える声も、言われた言葉も全て、自分が望みすぎた幻じゃないのか?

 だって、あるわけがない。
 こんなの創造も出来なかった。


 許されるなんて。
 そんなの、思ってもみなかった。

 「駆っ!」
 「兄ちゃんッ!!」

 必死に抱きしめ返す。
 駆の頬を両手で掴みゆっくりと引き寄せる。
 駆は逃げない。
 泣きながら、顔を真っ赤にして、そしてゆっくりと瞳を閉じる。

 神様、ありがとう。

 「ごめんね兄ちゃん、でもね、僕は……何があっても兄ちゃんの傍にいたいんだ」
 「駆ッ、お前さ……天然すぎっ」
 「えっ?」
 「可愛いすぎる、襲われたいのか?」
 「なっ!にいちゃん!!」
 「フッ」

 進めた距離なんて一歩にもみたないものだろう。
 だけど。
 前に進めたことが、それだけが最高に嬉しかった。
 駆が俺の傍にいる。
 笑ってくる。

 それだけで、今は胸ねがいっぱいになった。

 
作品名:emotional 04 作家名:藤ノ宮 綾音