emotional 04
「駆、俺は……」
「?」
「俺は、お前が好きなんだ」
「!?」
「言っている意味がわかるか?駆の言う好きとは違う好きなんだ」
「兄ちゃん……」
「だから、そんな自分に気がつかれないように、距離をとってた。フッ、そう言うと格好良く言いすぎだな、逃げてたが、正しいか」
「………」
「なぁ駆」
握り締めた手に緊張から力が入る。
俺はこんなに臆病だったんだな。
「俺の事、嫌いになったか?」
どんなに嫌われても、軽蔑されてもいい、ただ、ただお前を好きでいることだけは許してほしい。
もう自分では止められないから。
ゆっくりと視線を上へと上げる。
どんなことになっても、覚悟する。
視線が駆と合った瞬間だった。
握っていた手が振りほどかれる。
やっぱり、駄目か。
そう思った次の瞬間。
そっと背中に回された手は確かに駆のもの。
自分を今、抱きしめているのは間違いなく駆。
「駆?」
「ズルイッ」
「?」
「ズルイよ、兄ちゃんはッ」
「駆?」
「ズルイ!!」
大きくそう叫ぶと駆は抱きしめる腕に力を込める。
ナニが起こっているのか理解できない。
「僕と違う好き、そんなのっ、そんなのわかんないっ!」
「……」
「わかんないけどっ!!けどっ!僕は兄ちゃんとこうしていたいっ!」
「!?」
「うまく言えないけどっ、嫌じゃないっ!うれしいっ」
それは余りに信じられない現実。
願いすぎて望みすぎて見ている夢のよう。
抱きしめてくれている駆の身体も、震える声も、言われた言葉も全て、自分が望みすぎた幻じゃないのか?
だって、あるわけがない。
こんなの創造も出来なかった。
許されるなんて。
そんなの、思ってもみなかった。
「駆っ!」
「兄ちゃんッ!!」
必死に抱きしめ返す。
駆の頬を両手で掴みゆっくりと引き寄せる。
駆は逃げない。
泣きながら、顔を真っ赤にして、そしてゆっくりと瞳を閉じる。
神様、ありがとう。
「ごめんね兄ちゃん、でもね、僕は……何があっても兄ちゃんの傍にいたいんだ」
「駆ッ、お前さ……天然すぎっ」
「えっ?」
「可愛いすぎる、襲われたいのか?」
「なっ!にいちゃん!!」
「フッ」
進めた距離なんて一歩にもみたないものだろう。
だけど。
前に進めたことが、それだけが最高に嬉しかった。
駆が俺の傍にいる。
笑ってくる。
それだけで、今は胸ねがいっぱいになった。
作品名:emotional 04 作家名:藤ノ宮 綾音