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藤ノ宮 綾音
藤ノ宮 綾音
novelistID. 27764
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emotional  番外編01

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 「おっおい、傑」
 「ん?あ、駆」
 「なに?」
 「お前今朝、なんか本買うとか言ってなかったか?」
 「あっ!!今日発売の雑誌!兄ちゃんごめん、ちょっと買ってくるから先に」
 「待ってるよ」
 「あ、うん!」

 通りかかったコンビニへと走っていく駆を見送り俺は再度呼びかける。

 「あの、傑?一ついいか?」
 「なんだ?」
 「お前、そのさ、えーーーっと」
 「だから、なんだ?」
 「駆と何かあったか?」
 「………」

 何故そこで黙る。
 余計に気になるだろうが。

 「いっいやあさ?あれだ、一応、心配してたからさ」
 「………上手く、行ってる……のかな?これは」
 「へっ?」
 「国松、駆はさ………可愛いだろ?」
 「ブーーッ!!!!」

 なんだ、誰だコイツ!!
 真顔で、真顔でしかもキメ顔で今コイツなんて言った!?
 それは普通、女子の話題をしている時なら同意も否定もしてやるけども!
 何で友人の一つ下のしかも『弟』の可愛さの有無を話さないとならんのだ!?

 えー……傑ってこんなだったか!?うそだろ!?

 「時々心配になるんだ」
 「なっ何が?」
 「俺より他の奴に行ったらどうしようって」
 「ブーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
 「さっきから汚ねー……」

 だっ誰のせいだ!!!
 お前あれだ!あれだろ!!今の、奴は=『男(ヤツ)』って変換だろ!!!
 アホか!!誰もがお前と同じ目を持つと考えんなっ!!

 「だっ大丈夫だろ?駆は今んとこサッカー一筋みたいだし」
 「………そうかな?」
 「ああ」

 俺なんでこんなフォローしてんだろ?
 違う、こんな会話をしたい訳じゃない。
 聞きたいのはこんなことじゃないんだ。

 「つっ」
 「?」
 「付き合ってんのか?駆と………まっまさかな!ゴメン俺なんか変なこと」
 「なんでそれっ!?」
 「マジかよっ!!!」

 なっ、その展開は予想できなかった!!!!!
 てっきりハッキリとフラれて、ちゃんと兄弟に戻ろう的な段階になって、それをなんとか上手くいくようにフォローしようと、俺はそう考えていたのに。

 不意をつかれたせいか珍しくもこんな時に限って、ポーカーフェイスを崩してくださった日本サッカー界の至宝様は、顔を真っ赤にしてハッキリとした動揺を見せて下さいました。

 どうせなら、真顔で全否定して隠して欲しかった。

 「なんかさ、駆が俺の事さ」
 「マッマジかよっ!」
 「俺も信じられなくてさ、その日はずっと抱きしめて寝た」
 「へー、抱きしめて……はぁ!?」
 「駆さ、顔を真っ赤にしながら恥ずかしいとか言うからさ、俺は自分を止めるの必死でさ、それで」
 「まてまてまてまてまてまてまて!!!!」
 「なんだ?」

 聞きたくねーーーーーーーーーーーから!!!
 なんだそのラブラブのろけっぷりは!!
 なんでそうなる。
 えっ?おかしいのは俺だけか?

 「見つけるの時間かかっちゃった、ごめんね兄ちゃん、国松先輩」
 「いいよ、行こう」
 「うん」

 はたから見れば兄弟が仲良く帰っている図なんだろうが、俺の目にはショッキングピンクのオーラを周囲に振りまいて歩いているカップルにしか見えないのは、俺も傑に毒されたからだろうか。

 俺はこの時、この二人の事を知ってしまった事を後悔することになるとは予想にもしなかった。