二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

衝動SSまとめ(鋼錬)

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 

ロイエド




2012/3/12更新

ヴァンパイアパロ。
バージョン2v









――――――――――――――――――――


テロリストの基地と思われる場所を検挙した。
そこから押収した棺桶。

それが私の運命を大きく変えた―――


棺桶が話題になったのは押収してから1週間が経っていた頃だった。
テロリスト達の足がかりを見つけ、それどころではなかったのだ。
テロリスト達は早々にイーストを去り、北へ向かってしまった。
あそこならば私が行かずとも・・・いや、むしろ嫌がるだろう。
資料を全て渡し、後は任せるかたちで終わった。

そうして1週間が経ち、その間何度も開けようと試みたにもかかわらず、
一度も開かないその棺桶は私の元へやってきたというわけだ。


「開けてみますか?」


カチャリ―と銃を構えるリザを制止する。
ロイが見る限り、この棺桶は錬金術によって封じられている。

その術を解いてやらねば・・何をしても無駄だろう。



ロイは暫く棺桶を観察し、紙とペンを手にする。
錬成陣をスラスラと描き始める。
そしてその紙を棺桶へと置き、手を置く。
すると錬金術特有の光が包み、棺桶をガタガタと震わせる。

光が止み、静けさが戻る。


「開いたんでしょうか?」

「・・・ミイラで無いことを祈るが。」


ロイは棺桶の蓋に手をかける。
キィ―という音をたてながらゆっくりとその棺桶は空気を吸い込んだ。



「「・・・・・っ・・!!!!!??」」



ロイとリザは息をのんだ。
中に入っていたのは遺骨でもミイラでもなく、それはそれは美しい少年だった。
胸元まで伸びている金色の髪。金色の睫。
肌は透き通るほど白い。
その両方を引き立てるかのような漆黒の衣服。
とても美しい・・・芸術作品のようだった。



「・・・・大佐、この子は・・。」

「あぁ、呼吸をしていない。」

「死んで・・いるのでしょうか。」

「・・・・分からない。」

「・・・。」

本当に分からなかったのだ。
呼吸はしていない。脈も無い。冷たい。
なのに、必ず目を覚ます・・・という生命力を感じる。

ロイとリザは死んだ人間を何度も目にしてきた。
だからこそ分かるのだ。これは死人ではないと。


「軍医を呼んで来い。」

「ハッ。」

その後、軍医がその少年を診たが。
やはり『生きてはいない』という診断だった。
だが、『死んでいるにしてはおかしい』とも言い残した。
検死にまわすべきでしょうという意見にロイも賛同した。

「では少尉を呼んで参ります。」

「あぁ、待ってくれ。念のため――――




ネェ オコシタノ ダァレ




「う・・・そ・・・」

「まさか・・・」

そこには上半身を起こし、こちらを向いている少年。
先ほど『生きてはいない』と言われた少年がこちらを見ていたのだ。

まっすぐに見つめるその瞳はその容姿にぴったりの金色の瞳。
それは二人に恐怖を植え付けるほど美しかった。


「オコシ・・た・・ダレ?」



「・・私だ。」

「大佐っ!!」

安易に答えてはっ!!とリザが言うよりも早く。
その少年はロイの目の前に来た。

来た・・・というより居たのだ。
あまりの一瞬のことで分からなかった。
ロイも身動きをするのを忘れ、リザは何秒もかかってやっと銃を向けた。

「・・・・きみは・・」

「大佐、危険です。」

「・・・・タイ・・サ?・・na・・me・・ナマ・・え?」

「・・・それは私の名前では無い。」

「大佐っっ!!!!」

話し続けようとするロイをリザは必死に止める。

何者なのか、人間なのか、何なのか、分からない。
何がどう命の危険に転ぶか分からない。
それにこの少年の動きは・・見えない。

だが、ロイは最初は恐怖というものを感じたが。
今はそれは収まっていた。

不思議とどんどん興味がわいてくる。

「・・・ニック・・ネム・・・・タイサ?」

「止まりなさい。」

「中尉、」

「・・・・・・チューィ・・ナマえ?」

「止まらないと撃つ。」

少年はロイの顔へと伸ばしていた腕を止め、リザの方を振り返った。

髪が揺れるのが僅かに見えた気がした。
だが、そのときにはもう顔がくっつくほどの距離に居た。
力を入れることを忘れられた腕は下がったままだったが、
精一杯の意識の中、引き金を引いた。


パンッ――――


「中尉っっっ!!!!!!!!」




「ちゅうい。ソレなまえ?」

「そんなっ・・バカなっ・・」

「これは・・・」

弾は少年の腕を貫通した。
だが、少し血を流したかと思うとその穴は塞がった。
まるで幻のように、傷が消えていった。

それだけじゃない。

少年の体は僅かに浮いていたのだ。


「一体・・・・・!!??」

「・・・君は何なんだ!!?」



「・・・・ソノ・・顔・・do not like.・・嫌!!!!」



突然大声をあげ少年は天井近くまで浮かびあがり手で目を覆う。
徐々に混乱していっているようだった。
少年を中心に風が巻き起こり始める。

そんな少年を大佐はなんとか落ち着かせようとした。

「中尉ここは私に任せてくれないか。」

「ですがっ!!!」

「では、命令だ。」

「・・はい。」

ロイは極力優しい声音で呼びかける。


「君の名前は?」

「・・・・・・。」


少し手をゆるめ、指の隙間からロイを伺う。


「私の名前は、ロイ、だ。」

「・・・・・・roy?」


小さく発音された音は正しいものだった。


「なんだい?」

「・・・・ロイ・・」

「何かな?」


少年を取り巻く風が止む。
そのことに安堵する。
リザもまた安堵した。


「ロイーーーーーーー!!!!」


ロイのことを思い切り呼んだかと思うと、少年はロイにとびついてきた。
思わず銃を握るリザをロイが止める。

ロイの腕の中、その少年は眠ってしまっていた。
今度はスヤスヤという寝息を立てて。



これが一体何者なのか分からない彼との出会いだった。

end
作品名:衝動SSまとめ(鋼錬) 作家名:おこた