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衝動SSまとめ(鋼錬)

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ロイエド





2012/3/1更新

ヴァンパイアパロ。









――――――――――――――――――――



棺桶の中で眠り続ける君の頬はいつ触れても温かい。
今すぐにでも起きて『おはよう』と語りかけてきそうなほどに。


今でも変わらず愛している。


君を。



君だけを。




今でも思い出せる。
君が私に笑いかけていてくれた日々を。


幸せな日々だった。


もう100年も前のことか―――







君に出会い、私は自分を初めて受け入れることが出来た。

永遠の命というものは虚しい。

だが、君は私を、私という存在をカッコイイと言ってくれた。
君は暗闇で光る私の瞳を綺麗だと言ってくれた。
歴史が大好きな君はいろんな歴史を見れる私が羨ましいと言った。


本当に嬉しかった。


自分の本当の姿を隠さずに過ごせたのは君だけだった。





君は病気に侵され、どんどん衰弱していった。
その先にあるものは死なんだと長く人を見てきた私にはすぐに分かった。
日に日にやつれていくというのに、君はいつだって私に笑顔を向け続けた。

だが、反対に私は涙を流してばかりだった。

それが君には苦しかったんだろうね。




優しい君は、死の瀬戸際に私にこう言った。



『大好きだよ。』



私は拒み続けた君に己の血を与えた。
君の命を引きずりだしてしまった・・・。

目を覚ました君は、私に向けて困った顔で笑った。
君は私を許してくれたね・・・・・






それから長い生を二人で生きた。
いろんな国へ行き、いろんな歴史を知る。
いろんな物事を知り、沢山の本を書いてきた。

君は私の前ではいつだって明るく振舞っていた。


だが、食事のときだけは・・・悲しそうにしていた。
私の首から流れるのは血だけではなかった。




それでも私は幸せだった。
君と一緒に居られて。

それが私の全てだった。




だが、恐れていたことが起きた。





君は血に溺れた―――





理性を失い、人を多く殺めた。
それを止めようとする私も危うく心臓を傷つけられるところだった。

意識を取り戻した君は、真っ赤に染まる己の体を見て。
ただただ涙を流していた。


そして私を見てこう言った。



『死にたい。』――




私は君を眠らせる決意をした。
それが君の幸せならばと・・・

もう十分私は君に幸せにしてもらった。
幸せな時間を与えてくれた。
次は私が君を幸せにしてあげなくては・・・・。


君は私に体を預けた。
腕の中で泣き続ける君は私に何度も謝っていた。


『ごめんね。』


『一人にして。』


『ごめんねロイ。』



『大好きだよ。』



『ごめんね。』





『幸せな時間をありがとな。』――



それは君の精一杯の優しさだった。
残る私のことを思っての君の精一杯の言葉。


私は銀のナイフを君の心臓に突き刺した――




君の体はあの頃のように綺麗なままだよ。

君の魂が転生するのを見届けた。

同じように金色の髪をしていて、金色の瞳だった。
優しそうな母親と父親で安心したよ。


私は満足だ。




この長い生を虚しく感じることはあっても、満たされることは無いと思っていた。
これも全て君のおかげだ。


いつか・・・もし。
私がまた君に会えることが出来たなら・・私は人間であることを祈る。
そしてあわよくば、また傍に居られたらと・・。


空っぽのエドワードの体を抱き上げ、ロイは太陽が光り輝く場所へ歩き出す。
二人の体はキラキラと輝く灰となった。












「すっげぇ綺麗・・・。」





end


作品名:衝動SSまとめ(鋼錬) 作家名:おこた