side with you
結局、あたしはゼロスをマネージャーにすることにしたのだった。
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翌日、あたしはセイルーン公演の二日目を控えていた。
あたしのテーマカラーである真っ赤なミニスカドレスは、普段着るにはちょっぴし恥ずかしい服だが、ステージ衣装としてはよく映える。
「さあ、リナさん……時間です」
「ええ。
分かったわ」
マネージャーのゼロスが時計を気にしながらあたしに合図を送る。
実際、疲れも知らず、言葉の通り馬車馬のように働くゼロスに助けられてセイルーン公演までこぎ着けたことは事実である。
「よく見てなさい。
あたしの生き方を」
「もちろんです。
あなたを見るために、僕はここに立っているんです」
にこりと微笑む姿は、かつての戦いの場で見せる笑みと同じなのに、とても頼もしく思えた。
「行ってくる」
あたしはスポットライトの当たるステージへと走っていく。
耳が痛いほどの歓声が上がり、ステージを円形に囲む観客のエネルギーが膨れ上がる。
死の臭いのする世界から、生の活力の満ちた世界への転換の一端が、今ここに確かにある。
「今日はあたしのコンサートにようこそ!
じゃあ、さっそく一曲目!
……Meet againからいくわよ」
ステージ裏のゼロスはきっと、いつもの笑顔であたしを見つめているのだろう。
魔族だとか、敵になるかもしれないとか、今はどうでもいい。
この極限状態の世界を復興するために、あたしはあいつを利用しているに過ぎないのだ。
たまに、あいつが傍にいてくれて良かったと思うこともある。
あたしの戦いは始まったばかりなのだ。
この、ステージの上での新たな戦いが。
作品名:side with you 作家名:魅桜うさぎ