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Shadow of HERO 8

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今までで一番強い口調で怒鳴られ、思わず委縮する。確かにその通りだ、ここは長話をするような状況でも場所でもない。後で絶対捕まえると思いながら、ロックバイソンの手助けへ回った。

「手が止まってますよ、さっさと運び終えましょう。
「お、おう……。」

さすがに3人で運ぶと早いもので、8階の怪我人はすぐに運び終わった。9階で動いていた折紙サイクロン、10階でファイアーエンブレムのところも手分けして助けて行く。

「こいつが最後か。」

最後に一人を彼女が背負う。その後にバーナビーが続いて、階段を駆け上がる。
突然、形容し難い轟音が響いてビルが大きく揺れた。

「っ…折紙!」
「へっ……!?」

彼女が背負っていた作業員を、前を走っていた折紙サイクロンへ明け渡す。彼が驚きながらも受け取ったその瞬間、壁が崩れて階段が塞がった。

「一体何が…!?」
「多分、このビルが隣のビルに衝突したんだ。こりゃ屋上からの脱出は無理だな。」
「だったらハンドレットパワーで突き抜けてしまえばいいのでは?」
「ここでやったら最悪隣のビル傷付けて事態が悪化するぞ。少し下へ下りて、力使って窓から飛び降りる方がいいだろな。」
「分かりました、そうしましょう。」

具体的なことを想像できるところから察するに、もしかしたら彼女はこういう事態に直面したことがあるのかもしれない。だからあの揺れで、とっさに怪我人が閉じ込められる可能性を察知できた。相変わらず、条件反射に近い判断の的確さには舌を巻くものがある。
壁の崩壊に注意しながら、慎重に階段を下りて行く。

「………」

彼女は多分、飛び降りたらそのままどこかへ消えてしまうのだろう。追える状況ではなくなってしまったし、そうなったら能力があっても捕まえることはできない。仕方のないことだ。だったら今何か言えることはないのだろうかと思う。そんな場合ではないが、貴重な彼女との時間を無言でいるというのは、なんだか勿体ない。

(何か…。)

進みながらでも言える、何か。この際、正体を突き止めるためのものでなくてもいいから何かないのか。
虎徹との関わりを思いだしていると、1つ浮かんだものがあった。

「あの!」
「なんだ?」
「20年前、助けてくれてありがとうございました。」
「―――え?」
「クリスマスイブの夜、あなたは幼い僕を犯罪者から助けてくれたでしょう?」

デパートの立て篭もり事件の時、ありがとうと言われて顔を綻ばせていた虎徹。噂が立つなら多少は認識されていたのだろうが、影での行動はお礼を言われることが少ないだろう。あの言葉は彼女にとって特別なものなのだったのではないか。
20年も前のことなんて忘れているだろうし自己満足にしかならないのだが、それに気付いたら言わずにはいられなかった。だからといって出任せを言ったつもりはない。バーナビーは本当に、あの時のヒーローに感謝していたのだから。

(そうだ…僕はずっとあの時のヒーローに会いたかったんだ。)

両親の敵捜しのためなどではなく、単純にお礼を言いたかったから。彼女が無地なのか知りたかったから。
でも彼女はヒーローではなく、誰も存在を知らなかった。傷付いていた己は、それで更にショックを受けた。その時耳に入ったのが、犯人がまだ捕まっていないということ。生きるための拠り所を欲していた心は、手近なそれに食いついた―――それまでの感情を全て忘れて。

(それが原点、)
「バニー!!」
「っ!?」

後ろから付いてきていた彼女が叫ぶ。何事かと振り返る前に、ドンと勢い良く突き飛ばされた。急なことに踏みとどまることが出来ず、階段から落下する。
視界の片すみでバーナビーが見たものは、崩れる壁の中に消える彼女の姿だった。
作品名:Shadow of HERO 8 作家名:クラウン