11月11日はポッキーの日
「っ!!だ、から……っ!!違うっ!!」
「しょうがないですね…。今日はこれで我慢して下さいね。」
そう言うと、狩屋は先程と同じように俺に顔を近付け、後頭部を押さえつけながらキスをしてきた。
唇から舌を割り込ませ、丁寧に前歯をなぞったり、舌を絡めては唾液をこっちに流し込んでいた。
どちらの唾液だか分からないものが、俺の口からだらしなく垂れていくのが分かった。部室は俺達が出す卑猥な音が響き渡った。
流石に途中苦しくなり狩屋の胸を叩いてキスをやめてもらおうとしたが、叩いていた手を捕まれ小さな反抗をすることさえ許してもらえなかった。
「……っ……んっ………ふっ…はぁ………かり……や…ぁ……」
酸素を奪うようなキスはそのあとも続き、終わる頃には完全に酸欠状態となり、まるで数時間前に見た自分の彼女の顔と自分の顔とを重ねてみてしまった。
「先輩…。前々から思ってましたけど、先輩ってエロイですよね…」
「は…あ?」
何をいっているんだ…。
酸素が回りきらない脳ミソでもかれが馬鹿なことをいっているのは理解した。
「先輩はやっぱり、神童先輩よりも俺と付き合った方が良いと思うんですよ。」
「な…にいって……」
「だから、考えておいてください。
返事は何時でも良いんで。」
「へん…じ?」
「じゃあ、先輩。さようなら。
誰かに道端で襲われないように気をつけて下さいね。」
一息でそこまで言うと静に部室から出ていった。
直ぐに部室には静寂が訪れる。
そこに一人俺はぼうっとたっていた。
だが、狩屋がきて狩屋とキスをしてしまったのは俺のそばにあるポッキーが夢で無いことを指し示していた。
11月11日。
本日はポッキーの日。
俺は今日という日を一生呪う。
何と言っても次の日から狩屋が俺につき回り、過剰なスキンシップをしてきたりして、神童には誤解されるし、メンバーの皆からは“二股”と攻められる、俺にとっては毎日胃が痛くなるような日々がつづくのだから。
作品名:11月11日はポッキーの日 作家名:悠久