“絶対”の証明
━━━ごめん…。別れよう━━━
今でも忘れられない彼の言葉。
━━━あの頃に戻ろう━━━
今ではもう分からない。
親友だったころのあの距離感。
━━━今までありがとう━━━
嫌だ…。
本当は別れたくなんかない……。
━━━大好きだったぞ━━━
こういうときにそんなに綺麗な顔をして微笑まないで欲しい。
━━━蘭丸━━━
これが名前で呼ばれる最後の瞬間。
だから、辛くても苦しくても笑って言ったんだ。
『俺も大好きだったぞっ…。拓斗……。』
そしてこれが彼の名前を呼ぶ最後瞬間。
『今まで本当にありがとうな……。』
別れを言い俺は彼が帰路に付く姿をただただ静かに見つめていた。
あれから半年くらいが立った。
最初の頃は気まずかった俺らも今では少しあの頃と同じようになってきたと思う。
別れた頃は部員のメンバーにも何となく気を使われたりして本当に迷惑を掛けたと思っている。
だが、それと同時に皆の優しさなどを沢山感じられて凄く心が暖かくなった。
だから…きっと神童と別れた事は間違えではなかったのだと思う。
きっと……きっとそうだ…。
そして俺の心の傷が回復した頃、アイツが現れた。
第一印象は“良い奴そうだな”
どんな奴かと思い楽しみにしていた。
………と思ったのは一瞬。
次からの印象は“最低”
その一言に尽きる。
だけどそんな奴から急にとんでもないことを言われたんだ。
「霧野先輩。俺と付き合ってみません?」
「…………は?」
「だ・か・ら、俺と付き合いませんか?」
「…………。いやいやいや………いやいやいやいや………。」
アイツの言っている事が余りにも可笑しくて笑いまで込み上げて来そうだった。
と言うかもうすでに込み上げて笑ってしまった。
「ちょっ………いやいや……っはははっ……まじ……ちょっとっ………ま、まって………くっ………はははははっ………。」
「え?ここ、笑うとこですか…?」
「いやっ……だってお前が俺にっ……くっ……ふふふふふっ……はははっ……」
「いや、笑わないで下さいよっ!」
「だって……っ…。しかも上から目線だしっ……はははっ……」
「細かいことは良いじゃないですかっ!!
てか、いい加減笑うの止めてください!!」
「くっ……分かったっ…分かった、から……」
俺はそう言うと一度目をつむり息を整えた。
再度狩屋の顔を見るとまだ笑いが込み上げてきたがそれを無理矢理押さえつけてアイツの話を聞くことにした。
「霧野先輩って俺が此処に来る前、神童先輩と付き合ってたんですよね?」
「っっっ!!!?」
予想外の狩屋の台詞に思わず動揺してしまった。
そのため、その質問に対しての答えが遅れてしまった。
だからきっと、今さら何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。
そう思った俺はまた深く深呼吸をしてアイツの顔を見据えながら答えた。
「そう……だか…、それがどうした……?」
思っていた以上に自分の声が震えていた事に自分で驚きを感じた。
「いまでも…忘れられないんですか?」
俺が神童と付き合っていた頃を忘れられない……?
そんなはずはない…
だって俺は……
……“俺”………は?
「………チッ…。忘れられてないようですね。」
「ち、違うっ!!」
「何が違うんですか…?」
「俺は……俺達は……っっ!!
やっと……やっとっっ……!
今まで通りに…っ……やっと………戻れ…たんだ………っよ……っっ!!」
自分の口から紡ぎ出される言葉は今まで自分自身の心に被せてきた嘘の言葉。
こんな奴の前で視界が歪むのはきっと自分自身を誤魔化して来た対価。
(全部……。
ぜんぶ俺は知っていた……。
分かっていたんだ…本当は………。
自分がまだ……神童の事を“好き”だと………。
だけどっ……だけど……っっ!!)
「お前には……っ!
狩屋には関係無いだろっ!!」
(そうだ…もう関係無いんだ……。
俺が神童を好きだとしても戻れない……。)
目から溢れでた雫達が連なり一筋の道が出来た。
涙はそのままの頬を伝いきって自分の足元へと“ポタポタ”と次々に落ちていった。
その音を聞くたびに改めて“自分が泣いている”のだと実感し、悲しさや情けなさを感じる。
「………霧野先輩。泣いてる姿……綺麗ですね。」
「…………………は?」
「いや、だから、泣いてる姿が綺麗ですね。」
「………………………………はぁ?」
「霧野先輩…耳悪いんですか?」
「悪いのはお前の頭と性格だけだよ」
俺は思わず持ち前の反射神経でツッコミを入れてしまった。
だが、これは不可抗力と言うものだと思う。
たとえ目の前に居る後輩がイラついたとしても…。
「うっわー…。性格は可愛く無いんですね……。」
「悪かったなっ!性格が悪くて!!
でも、俺は男だから可愛いなんて言葉とは元々無縁なんだよ!!」
「“性格が悪い”なんて一言も言ってないですよ?
ただ少し“可愛く無い性格だなぁ”って思っただけです。」
「いや…言ってる意味は変わらないからな。」
「んー…そうですかね?」
「そうだよっ!!」
つくずく失礼な奴だと改めて俺は思う。
口では狩屋の方がなんだかんだ言って強いと思うから、俺は小さな抵抗を見せるためにアイツの顔を真っ直ぐ見て睨んでやった。
自慢じゃないが俺は狩屋よりは背が大きい為馬鹿にされる事はない。
「む……。
さっきまで泣いていた人が何睨んでるんですか……?」
「五月蝿い黙れチビ」
俺がまた間を入れずに素早くそう言うと目の前に居る狩屋の口元が緩みニヤケながら話始めた。
「霧野先輩の綺麗な顔からそんな暴言が出るのはこの悪い口のせいですね…?」
「………は?」
俺がそういったと同時に狩屋の手が俺の顔を包み込み軽く触れるだけのキスをされた。
「っっっ!!!?」
俺は急なアイツの行動に驚きを隠せず、目を白黒とさせてしまった。
「あれ?大丈夫ですかー?霧野先輩。」
思いっきり『大丈夫じゃないっ!』と言ってやりたかったがまだ完全に脳ミソがさっきの行為を整理仕切れずに俺は立ったまま固まってしまった。
「………はあ。
なんかすみませんでした…。
今日の事はやっぱり無かったことにしてください……。」
アイツはそう言うと暗くなった校門に向かい帰っていった。
今でも忘れられない彼の言葉。
━━━あの頃に戻ろう━━━
今ではもう分からない。
親友だったころのあの距離感。
━━━今までありがとう━━━
嫌だ…。
本当は別れたくなんかない……。
━━━大好きだったぞ━━━
こういうときにそんなに綺麗な顔をして微笑まないで欲しい。
━━━蘭丸━━━
これが名前で呼ばれる最後の瞬間。
だから、辛くても苦しくても笑って言ったんだ。
『俺も大好きだったぞっ…。拓斗……。』
そしてこれが彼の名前を呼ぶ最後瞬間。
『今まで本当にありがとうな……。』
別れを言い俺は彼が帰路に付く姿をただただ静かに見つめていた。
あれから半年くらいが立った。
最初の頃は気まずかった俺らも今では少しあの頃と同じようになってきたと思う。
別れた頃は部員のメンバーにも何となく気を使われたりして本当に迷惑を掛けたと思っている。
だが、それと同時に皆の優しさなどを沢山感じられて凄く心が暖かくなった。
だから…きっと神童と別れた事は間違えではなかったのだと思う。
きっと……きっとそうだ…。
そして俺の心の傷が回復した頃、アイツが現れた。
第一印象は“良い奴そうだな”
どんな奴かと思い楽しみにしていた。
………と思ったのは一瞬。
次からの印象は“最低”
その一言に尽きる。
だけどそんな奴から急にとんでもないことを言われたんだ。
「霧野先輩。俺と付き合ってみません?」
「…………は?」
「だ・か・ら、俺と付き合いませんか?」
「…………。いやいやいや………いやいやいやいや………。」
アイツの言っている事が余りにも可笑しくて笑いまで込み上げて来そうだった。
と言うかもうすでに込み上げて笑ってしまった。
「ちょっ………いやいや……っはははっ……まじ……ちょっとっ………ま、まって………くっ………はははははっ………。」
「え?ここ、笑うとこですか…?」
「いやっ……だってお前が俺にっ……くっ……ふふふふふっ……はははっ……」
「いや、笑わないで下さいよっ!」
「だって……っ…。しかも上から目線だしっ……はははっ……」
「細かいことは良いじゃないですかっ!!
てか、いい加減笑うの止めてください!!」
「くっ……分かったっ…分かった、から……」
俺はそう言うと一度目をつむり息を整えた。
再度狩屋の顔を見るとまだ笑いが込み上げてきたがそれを無理矢理押さえつけてアイツの話を聞くことにした。
「霧野先輩って俺が此処に来る前、神童先輩と付き合ってたんですよね?」
「っっっ!!!?」
予想外の狩屋の台詞に思わず動揺してしまった。
そのため、その質問に対しての答えが遅れてしまった。
だからきっと、今さら何を言っても言い訳にしか聞こえないだろう。
そう思った俺はまた深く深呼吸をしてアイツの顔を見据えながら答えた。
「そう……だか…、それがどうした……?」
思っていた以上に自分の声が震えていた事に自分で驚きを感じた。
「いまでも…忘れられないんですか?」
俺が神童と付き合っていた頃を忘れられない……?
そんなはずはない…
だって俺は……
……“俺”………は?
「………チッ…。忘れられてないようですね。」
「ち、違うっ!!」
「何が違うんですか…?」
「俺は……俺達は……っっ!!
やっと……やっとっっ……!
今まで通りに…っ……やっと………戻れ…たんだ………っよ……っっ!!」
自分の口から紡ぎ出される言葉は今まで自分自身の心に被せてきた嘘の言葉。
こんな奴の前で視界が歪むのはきっと自分自身を誤魔化して来た対価。
(全部……。
ぜんぶ俺は知っていた……。
分かっていたんだ…本当は………。
自分がまだ……神童の事を“好き”だと………。
だけどっ……だけど……っっ!!)
「お前には……っ!
狩屋には関係無いだろっ!!」
(そうだ…もう関係無いんだ……。
俺が神童を好きだとしても戻れない……。)
目から溢れでた雫達が連なり一筋の道が出来た。
涙はそのままの頬を伝いきって自分の足元へと“ポタポタ”と次々に落ちていった。
その音を聞くたびに改めて“自分が泣いている”のだと実感し、悲しさや情けなさを感じる。
「………霧野先輩。泣いてる姿……綺麗ですね。」
「…………………は?」
「いや、だから、泣いてる姿が綺麗ですね。」
「………………………………はぁ?」
「霧野先輩…耳悪いんですか?」
「悪いのはお前の頭と性格だけだよ」
俺は思わず持ち前の反射神経でツッコミを入れてしまった。
だが、これは不可抗力と言うものだと思う。
たとえ目の前に居る後輩がイラついたとしても…。
「うっわー…。性格は可愛く無いんですね……。」
「悪かったなっ!性格が悪くて!!
でも、俺は男だから可愛いなんて言葉とは元々無縁なんだよ!!」
「“性格が悪い”なんて一言も言ってないですよ?
ただ少し“可愛く無い性格だなぁ”って思っただけです。」
「いや…言ってる意味は変わらないからな。」
「んー…そうですかね?」
「そうだよっ!!」
つくずく失礼な奴だと改めて俺は思う。
口では狩屋の方がなんだかんだ言って強いと思うから、俺は小さな抵抗を見せるためにアイツの顔を真っ直ぐ見て睨んでやった。
自慢じゃないが俺は狩屋よりは背が大きい為馬鹿にされる事はない。
「む……。
さっきまで泣いていた人が何睨んでるんですか……?」
「五月蝿い黙れチビ」
俺がまた間を入れずに素早くそう言うと目の前に居る狩屋の口元が緩みニヤケながら話始めた。
「霧野先輩の綺麗な顔からそんな暴言が出るのはこの悪い口のせいですね…?」
「………は?」
俺がそういったと同時に狩屋の手が俺の顔を包み込み軽く触れるだけのキスをされた。
「っっっ!!!?」
俺は急なアイツの行動に驚きを隠せず、目を白黒とさせてしまった。
「あれ?大丈夫ですかー?霧野先輩。」
思いっきり『大丈夫じゃないっ!』と言ってやりたかったがまだ完全に脳ミソがさっきの行為を整理仕切れずに俺は立ったまま固まってしまった。
「………はあ。
なんかすみませんでした…。
今日の事はやっぱり無かったことにしてください……。」
アイツはそう言うと暗くなった校門に向かい帰っていった。