比翼連理 〜外伝〜
4.ハーデス 〜誓い〜
―――そして。
舞い降りた花園の変化に目を細めながら、その中心に佇む壮絶なまでの輝きを放つ光の存在を見る。強い意思を秘めた蒼き瞳が己を捉えていた。
「余に挑んでくるつもりか......」
増大していく小宇宙。
眩しいばかりの光の渦がペルセフォネの胸元に飾られた五芒星形のペンダントより生まれ出でる。それはやがて一つの形を成した。
「地界の覇権の象徴......正義の剣、か」
静かに吹く風が不安げに咲く花々たちを宥める。
「―――ハーデス、おまえのもつ冥界の掟、わたしの正義の剣.......おまえの正義とわたしの正義、どちらが勝るのか。わたしはもう嘆き悲しまぬ。わたしはおまえを倒し、地上へ戻る!」
すっと切っ先が向けられる。
愛を引き裂かれて、嘆き、悲しみにくれるだけの神ではなかったのだ。クロノスとレアの血を引く姉弟......大地の母と天空の父より生まれ、慈しみ育てられてきた神は光と花々に守られ、父母の強い力を継承した神でもあったのだ。
「そうか......ならば挑んでくるがいい。おまえの自由はおまえ自身の力でもぎ取れ。余は余の力でおまえを組み臥すまでだ」
与えられぬならば、奪うしかなかった。
力で組み臥すしかなかった。
奪い取った五芒星形のペンダントに闇の支配を施して。
それでもペルセフォネは抗い続けた。
たった一度の微笑さえも望むことは許されなかった。
たった一度の微笑が与えられたのは.......。
壮絶なまでの輝きを放ちながら、光が砕け散った瞬間だった。
永遠に届かぬ想い。
闇のヴェールで我が想いを包み隠す。
そして、おまえに捧げよう。
「 余の心は 永遠におまえのもの 」
五芒星形のペンダントはただ静かに光を発した。
Fin.