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さよならセンチメンタル

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その笑顔に、ああこれは地雷か、と黒羽はすぐに察した。

「………ま、気のせいならいいんだけどさ。最近、妙に構えてるみたいだったから」

この反応は例によって、触れられたくない話題のときの合図だ。言外に、これ以上余計なことを言うなという圧力を感じつつも、ここで適当に流してしまうことも躊躇われて黒羽が次の言葉を探しあぐねていると、その気配を察したからか、急に佐伯が両腕を黒羽の首に絡ませるように回した。
あ、と思った時には口付けられていて、探していた言葉はあっさり消し飛んでしまった。そのまま床に押し倒すように体重をかけてくる佐伯を受け止めながら、黒羽は相手の思うツボだと知りつつも、まんまと煽られていることを自覚し、苦笑する。
ふ、と息を継ぐ間に視線がぶつかる。この瞬間のコイツの表情が好きだな、と思いつつ、黒羽はにやりと笑った。

「どうしたよ。急に積極的だな?」
「時間は有効活用しなきゃなんだろう?」

佐伯も悪い笑みを浮かべてこちらを見つめ返す。

「情緒がないんじゃなかったっけ?」
「バネ相手にそれを言っても仕方ないから、って。それに、ずっとそっちのペースで振り回されるのは面白くないしな」

それを聞いた黒羽は、思わず吹き出し、声を立てて笑ってしまった。いきなり大笑いされた理由がわからず、佐伯はあからさまな困惑顔だ。

「何がおかしいんだよ」
「いや、そーゆーとこ、変わんねーなと思って」
「はあ?」
「やたらと負けず嫌いなとこが、さ」

相変わらずでかわいいな、と思ったのだが、それを素直に言えば大顰蹙を買うのは目に見えていたので、声には出さず胸の内にとどめた。
かわりに、からかうような笑みを浮かべて、再び彼の方へと手を伸ばす。

「偶には負けてみるのも悪くないかもしれないぜ?」

からかわれたと思ったか、佐伯は露骨に不機嫌そうに眉を顰めた。笑っても怒ってもかわいいな、と思ってしまうのは、彼が男前だからなのか、それとも惚れた欲目なのか。

「………よく言うよ」
「でも、それはそれで物足りないって思うのかも」
「どっちだよ」

不機嫌な頬の輪郭を指でなぞるように確かめる。ただそれだけのことを飽きもせず繰り返してしまう自分が、何だかおかしくて笑いが込み上げてくる。

「どっちだろう? 多分、どっちでもいいんだろうな」
「何だよ、それ」

言葉遊びのようなふわふわとした会話に焦れたのか、佐伯の声音には苛立ちが滲んでいた。だが、そんなものはまるで意に介さず、黒羽は彼の形の良い唇を、親指でゆっくりとなぞり、甘い声で低くささやいた。

「――――お前がいい、って言ってんだよ」

作品名:さよならセンチメンタル 作家名:あらた