二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

とらわれの心

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 



「バジル……」
 目だけが、バジルをとがめるように、しっかりとにらみつけてくる。
「なんでキスなんてしたの?」
 なんでもないような声。
「なんで……?」
 アンディは汚れていない。
 なんでだ? なんで……?
 バジルは混乱する。
(俺にキスされたのに、コイツは汚れないのか……)
 アンディにはなんでもないことなのか。
 いや、理由次第か。
 バジルは嫌そうに目を細めてアンディを見下ろし、言葉を探す。
 アンディにキスした理由。そんなのは……。
「てめぇが汚ねぇからだ」
 答えながら、自分でも納得がいかない。
 バジルはぷいっとそっぽを向いた。
「何それ……」
 案の定、アンディが呆然として呟く。
 横目で見て、呆気にとられてぽかんとしているアンディのわずかに開かれた口を見る。
 ……あの口とキスしたのだ。
「なんでもねぇよ」
 柔らかい感触。甘い吐息。柔らかい髪。ふんわりと漂う甘い香り。柔らかい、甘い……。
 白い肌。大きな目。キレイな、キレイな……。
 バジルはフンと鼻を鳴らしてアンディから離れ、自分の席に戻る。
 もうまるで興味を失ったかのように日誌を開いてみせる。だが、ペンは動かない。
 アンディの方を見ると、鞄に必要な物を入れて、帰る準備をしている。
 本当に何もなかったかのようだ。
 バジルは日誌に目を落とし、考える。
 ……どこまでいけば、コイツを泣かせることができるのか。
 アンディは、汚い人間のはずなのに、キレイに見えて、腹立たしくてしょうがない。
 自分の手で汚したい。
 めちゃくちゃにしてやりたい。
 アンディが、自分も汚いと、認めるまで。
 バジルと同じだと認めるまで。

 ……そう、俺のものになるまで。

 バジルは、その感情の名前を知らなかった。





(おしまい)
作品名:とらわれの心 作家名:野村弥広