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俺の家族

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「板津っ!!」
「うわっ!ど、どうした!?」
豊洲の東のエデンのオフィスに飛び込んできた滝沢に、板津はびっくりしてソファーから飛び上がった。彼は今夜ソファーをベッド代わりにオフィスに泊り込んでいたのだ。

「生まれそうだ、板津!咲が、咲が、すっげー苦しそうで、出血してて・・」
「お、落ち着け、滝沢っ!。まず、まず、病院に電話だろっ!」
「そうだな、まず、病院に・・」
そう言いながらも滝沢の顔は真っ青である。
「お前、三人目じゃろっ!落ち着かんかいっ!!」
「三人目ったて、前は双子だったじゃん、実際二度目だよ、俺」
「いや、今そんなこと、言っている場合じゃな、なかろうがっ!!」
そう言いつつ板津も思わずカンデしまう。
「と、とにかく、咲のところへ!」
「そうじゃ!」

二人は全速力で廊下を走り、滝沢と咲たちが住居にしている部屋へ二人もつれ合いながら走りこんだ。
「咲っ!大丈夫かっ!今、病院つれてくからなっ!」
「おう、姉ちゃん、しっかりせえっ!!」
「あ・・・板津くん、来てくれたんだ・・」
咲は苦しそうに顔をゆがめながらも、板津に笑顔をみせようとする。板津は携帯電話を滝沢に放り投げて「電話せえっ!」と叫びつつ、ソファの上に横たわっている咲の背を支えた。

「しっかりせえよ、姉ちゃん、今、病院つれてくからな!」
「うん・・・ありがと・・・あ、いたた・・・」
痛みが強くなったのか、咲がおなかを抱えて倒れこむ。
その姿を見て、滝沢は電話を放りなげて、咲のそばに駆け寄る。
「さ、咲っ!大丈夫かっ!?」
「あ・・いた・・」
「さ、さきっ!!」
滝沢はもう涙目である。
「あほっ!お前、電話するのが先じゃろがっ!わしに貸せっ!!」
板津は床に転がっていた電話を拾いあげて、病院に電話し、すぐに救急車を搬送してくれるように頼んだ。
「姉ちゃん、今、救急車、迎えにくるからなっ!しっかりせえよっ!」
「う・・ん・・」
「咲、大丈夫か?もうちょっと待っててくれよ、たえてくれよ、咲・・・俺、俺・・・ああ、咲、代わってやりたいよ、ホント、俺が代わりに産んでやりたいよ・・・」
滝沢は咲の手を取って、泣かんばかりの状況である。こういう時、男っていうのは、ホント、何にもできない。
「あほっ!お前がコドモどうやって産むっちゅうんじゃ!」
板津が滝沢の頭をぱしっとたたいたが、滝沢はいつもの冷静沈着さはふっとんで、妻が心配でおろおろする新米パパとなりさがっている。

「パパ~??ママ~??」
「あっ、結、潤っ!」
騒ぎに目が覚めたのか、一歳になったばかりの滝沢の双子の娘たちがよたよたと寝室から出てきた。

「どうちたの?ママ、びょーきなの?」
結がたどたどしい言葉で問いかける。潤は不安そうに、みんなを眺めている。
滝沢はすぐに二人の幼い娘を抱き寄せて、声を落ち着かせて話しかけた。
「ごめん、ごめん、起きちゃったね?大丈夫だよ、咲は病気じゃないよ。赤ちゃんが生まれそうだから、今準備しているんだよ」
「あかたん??」
「そう、話したよね?結と潤のところに、弟か妹がくるんだよ?今日がその日になりそうなんだよ?」
「ほんと?うれちい」
結と潤は不安気な様子を消して、目を輝かした。
「いたつのおじちゃんも、あかたん見にきたの?」
「お、おう、そうじゃ。ママの手伝いきたんじゃよ」
板津も二人の頭をやさしくなでる。実は結と潤の二人に、板津はでれでれなのだ。滝沢とせりあうほど、二人を生まれたときから可愛がっていた。
「とにかく、滝沢、お前、病院つきそっていかんと!その間、結と潤はどうすんじゃ!」
「そうだな・・・うん、一緒に病院つれてくよ、おんぶして」
「よしっ!わしもいくっ!二人をここに残しておくのも心配じゃし、咲も心配じゃし。お前のことも心配じゃからのう、そんな、おろおろして」
「なっ・・だって、生むのは咲なんだぜ?痛いのも咲で・・・自分だったら全然いーけどさ。俺、どうしたらいいかわかんなくなるよ」
そう言って、滝沢は苦しそうに眉を寄せている咲の手を握った。
「ふんっ!お前、三人目の子供じゃろがっ!!もそっとしっかりせんかい!」
「三人目ったって、結と潤は双子だっただろ?実際、俺、これが二回目だよ!」
・・・なんだか、さっき同じ会話をかわしたような・・・。


「タキザワさ~ん!!」


その時、救急隊員の声が聞こえた。
「あっ!!こっちでーす!こっち!!」
滝沢が大声をはりあげる。板津はおんぶひもを取ってきて、潤を自分の背におんぶした。
「潤ちゃん、いいか?いくで、みんなで病院に」
咲が苦しそうにいう。
「板津くん、ありがと・・・ごめんね、迷惑かけて・・」
「あほっ!迷惑なんてかけとらんじゃろが!余計な心配せんと、子供生むことだけ考えとくんじゃ!」
「うん・・・」


救急隊員が咲を担架に移している間に、滝沢も結をだっこひもで自分の胸にだっこした。みんなで救急車に乗り込み、病院へ向う。

その途中でも咲は苦しそうにはあはあいっていて、滝沢も板津も気が期ではない。滝沢は目に涙をためて、結を抱きかかえながら、咲の手を握っている。板津も背中に潤をだっこしながら、咲の横で「しっかりせえよ、もうすぐじゃぞ」とはげましの声をかけている。
救急隊員が奇妙な表情で、遠慮がちに聞いた。
「あの・・・お父さんはどちらで?」
「えっ!あ・・俺、俺ですっ!」滝沢が手をあげる。
「わっ、わしは、付き添いじゃけんっ!ずっと・・・ずっと、この夫婦の付き添いじゃけん!」板津が妙に力説する。
咲は思わず、噴き出してしまった。
「滝沢くんも板津くんも、おかしいっ。ふふふっ・・・っつ・・いたたっ!」
「咲っ!!」滝沢と板津が同時に叫んだ。


病院の廊下の長椅子で、滝沢は結を、板津は潤を、抱っこしながら、じりじりと、子供が生まれるのを待っていた。夜中の1時である。結も潤もすやすや寝息をたてている。

「おい、ヴィンテージ・・・」
「・・・なんか、お前からそう呼ばれるの、久しぶりだな、板津」
「ふん。最近、お前、ヴィンテージはいとらんしな。だいたい、お前が三人の親になるなんて、思ってもみんかった、出会った頃はな」
「ああ・・・俺も、26にして、三人の子持ちとはね。ま、俺としてはさ、咲と結婚したとき、五人計画たててるんで、あと二人、目指すつもりなんだけどね」
「五人~?お前も、相当、スキモンじゃの~」
「咲みたいな嫁さんもらえば五人だって十人だって、カルクいけるさ。お前、そんなこといって、人一番俺の娘をかわいがってるじゃないか?」
「そ、そりゃ、そうじゃ。結も潤も、お前の娘とは思えんくらい、めんこいからのう~。お前とは似ても似つかず、素直じゃしのう。やっぱ、母親に似たんじゃろうな~」
「ふん、いってくれるぜ。でもさ・・・サンキュー。付き添ってくれて。感謝してるぜ」
「なにいうとんじゃ。わしゃ、結と潤に付き添ってんじゃけん、お前じゃないわい」
「はは、それでもさ、サンキュー。」
「ふんっ・・・」


二人は今まで過ごしてきた時間を思い出していた。
京都の板津の下宿で初めて会った頃。
板津が物部に車にひかれて大怪我をしたときのこと。
作品名:俺の家族 作家名:なつの