ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第9部
「ごめんね、皆。ありがとう」
なのは が必死に笑顔を作り、それにつられてフェイトも少しずつだが元気を取り戻していった。
「アンク、疲れたでしょ?アイス…食べよう?」
「そうだな…少し頭を冷やすか…」
………
少し、時間がたった。
あれから映司を探そうと思ったが、相変わらずあいつの居場所がわからない。
驚くことに人間っていうのは時間が経つにつれて過去の出来事から立ち直ることができるらしい。
この「ハラオウン家」でも変化が起きた。
ガキとあのクソガキも少しずつだが兄妹らしくなっていった。
エイミィの奴とクソガキの母親は以前より仲良くなったらしい。
俺はいつの間にか全員からの警戒心が消えていた。
外出するときも誰も監視はつかず、今では一人で外に出歩ける。
俺は…いつの間にか奴らの「家族」になっていた。
だが、運命ってのは残酷で…
それも、なんの前振りもなく、いきなりやってくるもんなんだな。
クリスマスもあと5日、あいつらは家に装飾をしていた。
「まさか地球にはこういう行事があるとはな。僕も勉強不足だな…」
「はんッ!お前の頭が固すぎるんだよ!!」
「アンクだめだよ!クロノは地球の文化まだ知らないんだから…」
俺たちはクリスマスツリーの装飾をしていた。
ちなみに俺は強制的に労働させられていた。
…めんどくせぇ
「それにしてもここにきてだいぶ時間がたったな」
「あぁ、相変わらず俺は解放されねぇけどな!!」
「アンク…、ここから早く出たいの?」
「…いや、どこにも行く宛ねぇな」
「そう、よかった」
ガキは俺がどこかに行くのが嫌らしい。
俺がこういう発言したら決まって同じ質問をしてくる。
「全く、お前達と出会ったのが俺の運の尽きだな」
「あぁ、最初は正直僕たちも驚いたよ。なにせ……あれ…」
「どうしたの?クロノ」
「い、…いや……。えっと…」
俺は完全に忘れていた。
この世界に来る前、ディケイドの奴が言った忠告のことを…。
「なんだクソガキ、もうボケがでてきたのか?」
「すまない…あれ…。…フェイト、君はアンクが
どうやって僕達と会ったのか覚えているか?」
クソガキの何気ない一言。
俺は一気に血の気が引いた気がした。
「な、なにいってるのクロノ。最初にシグナム達と交戦した時に私達が拘束したんだよ」
「そうだったか?…あぁ!そうだ!!たしか なのは のリンカーコアが彼らに奪われて…」
「え?なのは のリンカーコアは別に…」
俺は手を止めた。
そして右手を怪人化させ変化がないか確認した…。
「えっと…、そうだな!ははっ!!僕ももうそんな歳か…」
「クロノまだ私とそんなに変わらないよ!」
俺は闇雲にエイミィの奴の元に向かった。
だが、俺は薄々感づいていた。
「おいエイミィ!」
「っ!!!!な、なにアンク?驚かさせないでよ…」
「お前…フェイトが最初、携帯買いに行ったとき同行していたの誰だか覚えてるか!!?」
できれば勘違いであって欲しかった…
「え?…随分前の話だなぁ…。えっと…たしか『リンディさん』と行ったはずじゃ…。うん、そうだよ!今思い出した!!」
「っ!!?そうか…」
「ん?どうしたのアンク?」
俺は自分の部屋に入り壁にもたれかかった。
そして力が抜け、しまいにはそのまま座ってしまった。
「おいおい…マジかよ…」
−お前達は関与するほど…
お前達の存在が…消滅していく−
「ディケイドの奴…初めからそう言えってんだ…」
俺は悟った。
別に俺たちに変化が起きるわけじゃねぇんだ。
逆に俺たちがあのガキ達と思い出を作れば作るほど、その分あいつらの記憶が消えていく。
そしてあいつらの記憶が完全に消えたとき…
俺たちは…
消滅する。
「アンク…」
「っ!…ガキ、どうした?」
いつの間にかガキが俺の隣りにいて、俺の怪人化した右手を握っていた。
ガキは…泣いていた。
「私は…アンクのこと忘れないよ」
「ガキ…気づいていたのか?」
「うん…最初は皆、ただのど忘れって思ってたんだけど…違ったの」
本当にこいつ、エスパーなんじゃねぇか?
「ふんっ!…お前もいつか忘れる…」
「…ヒグッ……」
映司……
俺たちには、
「時間」がねぇぞ。
作品名:ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第9部 作家名:a-o-w