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れんげ納豆スキー
れんげ納豆スキー
novelistID. 3632
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顔に怪我

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―…伊作が、私にと作ってくれた物だ…よく効く。

ぼそぼそと、耳を澄まさなければ聞き逃してしまいそうな声量
先輩がこのように話すようになったのは、やはり顔に傷が出来てからだとも七松先輩は言っていた。
直接関わることなど、今まで殆ど無かった為に意識したことは無かったが
顔に傷を負うと言うこと、それを背負い生きている中在家先輩
日常生活すらも変化せざるを得なかったのに、ましてや忍を志している身忍務に携わるにあたり、
出来るだけ目立たない容貌であることは、低学年で習う位の常識だ。

―やはり、顔に傷が出来ることは、この先忍として、不自由な身となりますか…

いつだって優秀で、教科も実技も学年一で、先生方の覚えも目出度く
調子を狂わされることもあるが、後輩の手本となり
委員会でも常に先輩である委員長にも褒められる
何時だって私の自信を高める出来事しかなかった。

今この時に至るまでは。

不意に大きな暖かい手が、私の頭を撫でる
まるでつい先程までいた先輩のように…
さすが六年も共にいれば、自然と似てくるものなのかもしれない

―…忍にも様々な役割がある…あまり気に病むな…あいつも…傷がある程度で…心変わりはしない

―…っ

言い聞かせるように発せられる言葉に、自分の心情を見抜かれていることを悟り、必死に考えまいとしていた感情が溢れだす。

七松先輩のことはよく分かっています
例え私がどのように醜い有り様になったとしても、あの人は私を慈しんで下さるでしょう
けれどその度に私はあの人を悲しませ、胸を痛ませてしまう
私を美しいと愛して下さったあの人を苦しませてしまう…

あぁ私はなんと愚かなことをしてしまったのか
あの人を思い煩わせてしまうだなんて!
忍としての生よりも、己の欲に対し嘆くなど
三禁すらも侵してしまった私は忍失格ですね…

―…早く善くなると良いな。

―…はい。

これ以上情けない姿を晒したくは無くて、涙の滲む顔をうつ向けると
先輩は気を利かせたのか、静かに部屋を後にした。
一人残された私は、一縷の望みを託し、少しでも傷が目立たなくなるようにと
あの人の笑顔を思い浮かべ、祈るように薬を掬いとり傷口へ塗れば、その痛みにまた涙が流れるのだった。
作品名:顔に怪我 作家名:れんげ納豆スキー