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Helianthes

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 「魚座の師弟には、実の親子以上の絆がある。ルゴニスの元に還るのが、アルバフィカの願いだった。私もそれを適えてやりたかった。……許せ」
 「──シオン様……」
 「だが、毒に染まらずとも魔宮薔薇と共存出来る聖闘士を育てることが叶えば、歴代の魚座も浮かばれよう」
 「……そんなことが、本当に出来るんですか?」
 「それを成すのが私の務めだと思う。幸い、その手伝いをしたいと願い出た薬師もいるのでな」
 「…………」
 「聖闘士の闘いは、遺体も残らぬことの方が多い。アルバフィカだけではなく、この慰霊地の恐らく半数以上は空の墓だ。墓標など所詮、生き残った者の気休めかも知れぬが……それでも良ければ、これからも花を手向けに来てやって欲しい」
 「……ありがとうございます。教えて下さって」

 私はそっと手を伸ばし、アルバフィカ様のお墓に触れた。
 ご自身には最後の最後まで、側に寄ることすら許して頂けなかったけれど。

 「例えアルバフィカ様がここにはいなくても、こうしてお花をお供えすれば、きっと判って下さいますよね。お優しい方ですもの」
 「ああ──そうだな」

 アルバフィカ様。たった独りで歩んでいかれるシオン様を、どうぞ見守り下さい──
 私はもう一度、手を合わせて祈った。


 「──そうだ、シオン様。今日は教皇の間に、お花をお届けに上がったんです」
 「花を?」
 
 シオン様は驚いたように、私と百合の花束を見比べた。

 「昨日テネオさんという方がいらして、また以前のように花を届けて欲しいと」
 「テネオが……」
 「テネオさん、教皇様──シオン様のことを、とてもお慕いしているんですね。せめて花だけでも飾って差し上げたいと仰っていて」
 「……テネオはその師に似て、心優しい男だ。あの者のお陰で、私はどれだけ勇気付けられたか知れない」

 これまで教皇様にお花をお届けする場合は、入り口で女官か侍従の方に渡してきた。
 でも今の段階では手が足りず、そういう役目の人はいないらしい。
 花器に活けるところまで私がした方が良いように思い、教皇の間に戻られるシオン様にご同行させて頂くことにした。

 「前の教皇様は白い百合がお好きでいらっしゃったと、母から聞きました。シオン様はどんな花がお好きですか?」
 「──私……か?」
 「シオン様がお好きな花があれば、次からはそれをお持ちするようにします」
 「…………」

 シオン様は、少しの間考えておいでのようだった。
 そしてふと空を仰がれると、雲一つない聖域の蒼穹に輝く太陽に、軽く目を細められ──

 「……日輪の花」
 「え?」
 「向日葵というのだったな、確か。太陽に向かって、真っ直ぐに大地に立つ。その強さに──良く似た友がいた」
 「──……その方は……」
 「死んだ訳ではない。もう……二度と会えぬがな」

 一瞬だけ、シオン様の声が揺らいだように聞こえたのは、気のせいだったのだろうか……。

 「向日葵でしたら、もう少しお待ち下さい。花が咲き出すのは初夏になってからなんです」

 ああ──楽しみにしている。
 頷かれたシオン様は、その時にはもう、また元の凛としたご様子だったけれど、とても優しい目をしておられた。



 廻る季節と共に、聖域は少しずつ元の姿を取り戻していき、そこで働く人も増えていった。
 私は、毎週のように教皇の間にお花を活けに伺っている。
 シオン様はお忙しくて、いつもお会い出来るとは限らなかったけれど、たまに慰霊地でお独りで佇んでいらっしゃるのをお見掛けすることがあった。
 そんな時のシオン様は大抵、遠く東の方角をご覧になっていて──


 「私の目はあなただけを見つめる」──

 向日葵にそんな花言葉があることを、多分ご存知ではなかっただろうけれども。



FIN
Helianthes/日輪の花
2012/3/30 up
作品名:Helianthes 作家名:saho