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聖なる夜

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絢爛豪華にして荘厳なサン・ピエルパオロ大聖堂の地下に正十字騎士團ヴァチカン本部がある。
地下とは思えないほど天井が高くて広々とした廊下を、霧隠シュラは歩いていた。
正十字騎士團所属の祓魔師のコートを着ているが、前のボタンはひとつも留めていなくて、コートの下は軽装である。
急に戦わなければならない事態になるかもしれないので、すぐに魔剣を取り出せるようにしておきたいからだ。
シュラの足取りは軽い。
表情も明るい。
歩きながら、携帯電話で話をしていた。
話している相手は、日本にいる奥村雪男。
正十字学園高等部三年生であり、祓魔師であり、祓魔塾の悪魔薬学の講師でもある。
そして、シュラの年下の恋人だ。
恋人として付き合い始めて一年半は過ぎたが、二年になるにはまだもう少しある。
付き合い始めたきっかけは雪男からの告白で、そのとき、シュラはかなり驚いた。
正直に言うと、恋愛対象外だった。
出会ったころまでさかのぼれば、その時点でシュラがもう成人していたのに対し、雪男は線が細くて小さな少年だったのだ。
それが再会したときには、雪男は背が高くなり、がっしりとした体つきになっていて、腕の長さも太さも、なにもかも、シュラを追い越してしまっていた。
けれども、やはり昔の面影はあって、だから、つい、子供扱いしてしまっていた。
付き合うことに決めたのは、勢い、というか、本当のところは自分でもよくわからない。
放っておけなかった。
あるいは、一緒にいて楽だった。
そのどちらか、ではなく、そのどちらもで、さらに他にもいろいろ混ざり合っていたような気がする。
そんな感じで付き合い始めたので長続きしないかもしれないと思っていたのだが、その予想は外れた。
シュラが呼びもどされてヴァチカン本部勤務になり、遠距離恋愛になった今も、たいへん順調である。
「ああ、今のところ、問題ない」
『じゃあ、二十四日には、こっちに』
「うん」
今月二十四日と二十五日は日本にもどると決めている。
クリスマス休暇だ。
日本にもどり、そして、雪男に逢う予定である。
雪男の誕生日が二十七日なので、そのお祝いもするつもりだ。
プレゼントはもう用意してある。
店に行ってプレゼントを選んでいるとき、心が弾んでいた。これを贈ったら喜ぶだろうかと想像すると、うきうきした。贈る楽しみ喜びがあるんだなと感じた。
『シュラさん』
「ん?」
『早く二十四日になってほしいです』
耳のそばにある携帯電話から雪男の声が聞こえてくる。
『あなたに逢いたい』
本当にそう思っているのがわかる、想いのこもった声。
それが耳から胸へ落ちてきて、心に触れた。
くすぐったいような気分になる。
嬉しい。
自然に口元がゆるみ、頬に笑みが浮かんだのを感じる。
まわりに人がいなくて良かったと思う。
こんな、にやけた顔、だれかに見られたくない。
そのあとしばらく歩きながら話をして、目的地に近づいてきたので、シュラは電話を切った。
気分は良いままである。
浮かれているといってもいいぐらいだ。
シュラは扉のまえで立ち止まった。
扉をノックし、向こうから返事が聞こえてくると、扉を開け、部屋に足を踏み入れた。
部屋の中は広い。置かれている調度品は見事なものばかりである。
シュラは部屋を進んでいく。
部屋の奥のほうに、美しい木目の入った立派なデスクがある。
デスクの向こうには肘掛けイスがあり、そこには部屋の主が腰かけている。
彫りが深くて端正な顔立ち。
シュラに向けられているその顔に、快活な笑みが浮かぶ。
アーサー・オーギュスト・エンジェル。
現「聖騎士」、最強の祓魔師の称号を持つ者である。
シュラはデスクの近くまで行くと、アーサーの正面に立つ形で足を止めた。
そして、口を開く。
「なんの用っすか?」
予定外に、この部屋に来るよう呼びだされたのだ。
「特に用がなければ、おまえを部屋に呼んだらいけないのか?」
からかうような口調でアーサーが問い返してきた。
シュラはフンと鼻で笑った。
「用がないなら帰るぞ」
「つれないな」
「それで、用件は?」
「もちろん仕事の話だ」
あっさりと、アーサーは話を切り替えた。
「シュラ、おまえはクリスマス休暇を申請していたな?」
そうたずねられて、シュラは嫌な予感がした。
「ああ」
低い声で返事をする。
「申請して、許可が出てる」
「その許可を、おまえの直属の上司にして聖騎士の権限をもって、取り消す」
笑顔のままアーサーは告げた。
作品名:聖なる夜 作家名:hujio