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エイプリルフールに対する理解【静帝】

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朝目覚めてすっきりとした寝起きに今日はいい日だ、などと帝人は思っていた。
その時まで――。

「俺はお前のことが好きだ。付き合ってくれ」

真面目な顔で静雄に言われて帝人は言葉を失った。
具体的に手に持っていた空のマグカップが床に落下しそうになって静雄に受け止められる。
携帯電話を取り出して日付を確認。
四月一日。
エイプリルフール。
嘘を吐いていい日。
だが、この嘘はさっぱり分からない。
分からないからこそ性質が悪い。

(僕達、すでに付き合ってるじゃないですか!)

これは分かりにくい破局宣言なのだろうか。
嫌いだ、別れようと静雄は言っているのか。
そんなに静雄が器用なタイプでないのは知っている。
帝人と別れたいと思うなら回りくどい方法など取らず普通に切り出すはずだ。

「静雄さん……別れましょうか」
「なっ! なななあ、何でだ?!」

驚愕に目を見開く静雄。
先程の言葉は冗談ではないらしい。

(え? 好きが嘘とかそんなのないとは思ってたけど……えぇっと?)

陶器のマグカップが静雄の手の中でゴミと化していた。
砂になっているマグカップに帝人は心の中で合掌する。

「嘘ですよ、嘘。エイプリルフールじゃないですか」
「そうか、嘘か。……エイプリルフールってなんだ? いや、何か聞いたことはある」
「静雄さんを騙せる人……弟さんとかは?」
「あ? 幽は別に嘘は吐かねえぞ」
「静雄さん騙されやすいですからね。今も騙されたままじゃないですか」
「そんなことねえよ」

言ってから不安になったのか静雄は電話をかけだした。
相手は間違いなく話題に上がった、幽だろう。
朝からすみませんと思いながらも帝人は静雄の言っている意味を考えた。

「もしもし? お前、俺のこと騙してねえよな」

こんな聞き方ではどんな返事が来るのか分かりそうなものだ。

「なにぃ?! ……何を、何を俺に嘘吐いてたって……お前、嘘吐きは泥棒の始まりだぞ!!」

わりと茶目っ気があるらしい幽が何を言ったのか気になったが、
それ以上に静雄の説教に帝人はくすぐったいやら恥ずかしいやら微妙な気分になった。

(嘘吐きですみません。泥棒はしていません)

自分はどうして静雄に叱られなかったのか帝人は改めて不思議に思う。
小さな冗談でも真に受けた場合静雄は発言者にキレる。
帝人はそういう類のことで怒られたことはない。
そもそも静雄が帝人に向かってキレたことなど一度もない。

(静雄さんを滅茶苦茶キレさせてみたい……)

それこそ破局フラグなことを帝人は考えてしまった。




少し声をかけて集まってくれた狩沢に礼を言う。
休日平日関係ない職業の人間はノリがいい。

「帝人君、帝人君。俺の家で逆さずりにされて鞭で百回殴られて」
「臨也さん、それはエイプリルフールの嘘ってことでいいんですよね?」
「ウソウソ。俺がやるなら鞭じゃなくて棍棒だよ。叩くのは千回だ」
「それも嘘?」
「うん。本当はちゃんと首輪をつけて足の腱を切って瞳をえぐり取って部屋に閉じ込めとくよ」
「……気持ち悪いです」
「エイプリルフールだからって無理して嘘吐かなくていいよ」
「本心から気持ち悪いです」
「まあまあ、みかプーもイザイザも落ち着いて」

二人の会話を聞いていた狩沢がなだめる。

「ビックリドッキリ企画を仕掛けるのに当日とかじゃ遅いのよ! サクサク決めないと」
「どんなことがいいですかね」
「そりゃあ『僕……臨也さんと浮気しちゃいました』って証拠写真付きで」
「証拠あったら嘘じゃない?!」
「嘘から出た真だよね。さあ、帝人君足を切ろうか」
「生きてここから出られない……みたいなホラー展開やめてくださいよ」

臨也が暇だと言うから狩沢との待ち合わせ場所に使ったのだが色々と間違いだった。

「それなら私が『みかプーの子供が』って」
「シズちゃんは普通に育てそうだから驚かないよ」
「いえいえ、それはおかしいでしょ」
「やっぱそうよねー。驚いても『そうか、俺の子だな』とかで終わっちゃうよね。楽しみに待たれたら気まずいな」
「えぇ??」
「もっとなんか絶望する感じがいいよ。帝人君の切り取った右耳を送りつけて」
「どうしてさっきから臨也さんは怖いこと言うんですか!!!!」
「ドキドキしてる? それは恋だよ」
「今日にどれだけ嘘を吐く気ですか!!」

怒るべきか自分の失敗を嘆くべきか帝人は混乱していた。

「帝人君が片足なくなっている写真とか送りつけようよー。ちゃんと止血してあげるから」
「ちょっと待ってください。写真加工とかじゃなくて本当に切る気じゃないですか!」
「それはシズちゃんにイザイザが殺されるだけでビックリドッキリ……はイザイザの死体を目の前にしたみかプーの反応?」
「臨也さんの死体を山に埋めに行かないといけないなんて……」
「いや、ちょっと俺が死ぬ前提で話さないでくれない」
「きっと『帝人はもっと痛かったんだ』と血の涙を流しながら臨也さんの首を素手でメキメキっと」
「ぎゃー!! 気持ち悪いこと言うのやめて」

自分の首を押さえながら臨也は呻く。

「そういえば、嘘には二種類あるわよね?」
「嘘を教えることを前提とした嘘と本当に騙すための嘘、とかそういうの?」
「それってどう違うんですか? さっきまでの臨也さんの言葉とかが前者ですか?」
「嘘だって教えるまでがネタ。これは例えばみかプーが睡眠薬いれられたお茶を飲んじゃったよとか」

言われて臨也が出したお茶を見る。
帝人はすでに一口飲んでしまった。

「嘘だけど、ちょっとビックリして嘘だったことに安心しただろ」
「臨也さんのことなのであんまり安心してないんですけど……」
「失礼な。帝人君が一人で来たならするけど誰かが一緒ならやらないよ」
「全然安心できない言葉です。……それこそエイプリルフールにかこつけた嘘じゃないですか?」
「本当に睡眠薬が入っていた場合はそうよね」

狩沢のツッコミに帝人は合点がいく。

「……あ、騙すための嘘? 今のがそうなるってことですか」
「そうだね。帝人君をまるっと騙して、拉致が完了して逃げ切るまで騙したことは教えない」
「エイプリルフールだからこそ、嘘は嘘だって伝えるわけだから、ただの嘘はなしよ」
「でも臨也さんが僕に言ったみたいに『静雄さんの足切って監禁しますよ』って言っても――」
「シズちゃん喜ぶんじゃないの?」
「化け物の思考回路は分からないねえ」
「怖がらせる嘘じゃなくって喜ばせる嘘を吐いて『嘘でした』って」

それは酷い嘘な気がした。

「これは定番の『好き好き大好き』嘘でした」
「嘘じゃないですから!」
「シズちゃんのプリン食べちゃった、とか」

急に程度が低くなった。

「……ん~、僕が臨也さんを監禁調教して五体不満足にしましたとかそういう告白の方がビックリドッキリ?」
「なになに、帝人君ってばそういう趣味なの? 仕方ないな、付き合ってあげるよ」
「イザイザの笑顔が怖いわー」
「それでも静雄さんは変なペットぐらい許してくれそうです。静雄さんが僕を怒りそうな嘘が分からないです」
「俺を変なペット扱いとか、帝人君っ」
「それならみかプー『怒ってくれないなら別れます』って」