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人の話は聞かなきゃね!

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そうだと同調する声が上がり、クスクスと笑い声も聞こえてくる。
俯いて黙って聞いていたアリスは怒りで頭が真っ白になった。冗談じゃないわよ。何が悲しくて次から次へと此処まで酷い事言われなきゃならないの。沸々と湧き上がる怒りを声に出す。

「黙んなさいよ。」
「何よ!やる気?」

アリスはキッと顔を上げると、集団を睨み付けた。

「あんた達は、ブラッドのハーレム要員か何か?どうせ一人じゃ相手にもされてないんでしょうけど。私とあなた達の立場は違うのよ。勘違いしないでよ。」

もう舌が動く通りに勢いで喋っているだけだ。後先を考えてなどいない。お互い沈黙を保ったまま一触即発の状態だった。掴み合いの実力行使でも構わない勢いだ。

険悪な空気の均衡を破ったのはブラッドの声だった。例によって気だるい様な声で話しながら近づいてくる。

「おやおや、お嬢さん方は此方にお集まりでしたか。皆さん、私のアリスとお付き合いいただいてありがとう。さぁ、今日はこれで失礼しよう、アリス。」

アリスの隣に立ち返事を待つが、アリスは返事もせずにむくれている。その肩を抱いて広間へ歩くよう促しながら、今日は楽しめたかいと聞いてきた。アリスは不機嫌な声で、ええ、皆さん本当に良くしてくださったから。と周りに聞こえるように当て付けに言う。
テラスと広間を仕切る大きなガラスの壁の所まで来ると立ち止まり、ブラッドはアリスの耳元に小さな声で囁いた。

「ところでお嬢さん、先刻、自分はブラッド=デュプレにとって特別な存在だと公言していたようだが、これは光栄な事だと受け取って良いのかな?」

「!」

みるみる顔も耳も赤くなる。

「それは・・・聞き間違いだと思います・・けど・・」

消えそうなくらい小さい声で答える。

「そうか、それは残念だ。私の特別なお嬢さん。」

そう言いながら、左手に盗られたはずのダイヤを戻すと指にキスをした。



帰り道、アリスの歩調に合わせてゆっくり歩く。ここで思い切って聞いてみる。

「今日、私の事を婚約者だと紹介したのは何故なんですか?こういう事で嘘ついちゃって、後々大丈夫なんですか?」

「嘘? アリス、君は私の花嫁になることを承諾したのではなかったのかな?私は、君が自分でよければと言ってくれた事を、結婚を承諾したと受け取ったんだが。」

全身を雷で打たれたような衝撃が走る。それは本を借りた時の、ぼんやりしてブラッドの話を聞き逃した時のことを言っているのか。アリスは焦った。今更、あの時は話を聞いていませんでしたとは言えない。
我ながら何という墓穴を掘ってしまったのか。何か言わなければと思うが上手く頭が回らない。
暫く無言で歩く。
頭の中で、この男との教会での白い衣装に身を包む自身を想像してみたが、映像にすらならない。イメージできないのだ。

有り得ない。


「ブラッド~」

エリオットが屋敷の方向から、走って来た。
二人の前に着くと、

「アリス、飯いっぱい食べたのか?」

なぜかご機嫌なエリオットに、思い切って言ってみる。足が痛くて歩くのが辛い、と。

エリオットに抱き上げられると、ブラッドは考え事をしたいから二人は先に屋敷に帰るように指示を出す。遠ざかる男を見てアリスはホッとした。たとえ一時凌ぎだとしても、今は顔も見たくない。

エリオットの姿が遠くなると、ブラッドはクククと笑い声を漏らす。

「これは存外面白い。もっと楽しませてくれ、私の特別なお嬢さん。」




紅茶の話を途中で止めて、ブラッドは向かい側に座るアリスを見ていた。
先刻は本に熱中し自分の声が届いておらず、今また何を考えているのか、目の前の少女は完全に此方の話を聞いていない。気心の知れた腹心でもないのにこういう失礼な事をされるのは初めてだ。普通ならここで殺しているところだが、子供と大人の間に漂うこの存在が、最近妙に気になっている。その理由を自分でも知りたいと思うのだ。これが余所者の魅力と言われるものか。
余所者がこの屋敷に来て暫く経つ。そろそろ慣れても良い筈なのに、未だに敬語を使い距離を取る。 簡単には近づけない、近づけさせない。そんな女は珍しくもなんとも無い。一度壁を崩してしまえばゲームは終る。興味も無くなる詰まらない存在だ。彼女もそうなのか、是非知りたいと思う。
この失礼な余所者が次に意識を此方に向けた時、どんな言葉を投げかけてみようか。それに対しどんな反応を見せるのか。こんな面白い趣向の退屈凌ぎは初めてだ。 面白くなければ殺してしまえばいいだけのこと。

さぁ、私を楽しませろ。