My Heart
咲のデザインスクールのクラスメイト、夏目翔が見事に第一希望の美大に合格。希望どおりデザイン科への入学が決定した。咲はもちろん、エデンの仲間も心から彼の合格を喜んだ。今日は翔を豊洲に呼んで、彼の合格祝いのパーティーだ。
翔は、古いデザインと新しいデザインを融合させるのがすごく上手くて、彼のデザイン案は東のエデンサイトにも利用されて好評を博していた。そのお礼の意味もこめての合格パーティーだった。
飲んで、食べて。みんなでおおいに盛り上がった。翔も楽しそうに、未来の夢をみんなと語り合っていた。
咲はそんな翔を見て、本当によかったと、自分のことのように嬉しかった。
以前、翔から告白めいたことをいわれた時もあったけど。滝沢がジャマして以来、翔はそれらしいことは何も触れず、相変わらずやさしく咲に接してくれていた。
「咲さん・・・」
ちょっと風にあたろうとベランダにでていた咲の横に、いつのまにか翔がきていた。
「あ、翔くん、どう?楽しんでる?あ、でも、未成年だからお酒は飲んじゃだめだよ?」
「大丈夫っすよ。それより、咲さん、今日はありがとうございます。」
「ううん、そんなお礼なんて。翔くんの合格、みんなすごく喜んでるよ。だからみんなで祝いたいって思って・・・」
「咲さんは?」
「え?わたし?もちろん、喜んでるよ。本当におめでとう、翔くん」
「咲さん、俺、もうすぐ19歳。誕生日が4月だから」
「そうなんだ」
「咲さんと4つしか違わなくなるよ、年」
「そうだね。でも、19歳か。やっぱり若いね~」
「23歳だってすっごく若いよ。特に咲さんは」
「おいおい、俺には23歳はおっさんっていわなかったか?」
振り向くと、滝沢が二人の後ろに立っていた。
「なんだよ、おっさん。また、ジャマしにきたのかよ」
「ジャマ?別に。俺は俺の彼女のそばにいたいって思っただけさ」
そういって滝沢は咲の横に来て、彼女の肩に腕をまわした。
「へんなムシがつくと困るからな~」
「ふんっ!どっちがムシだか!」
「なんか、いま、おもしれえこと、いわなかったか?翔・・・」
「ふ、ふたりとも!ちょっと待って!わたし、飲み物とってくるから」
そう言って咲はベランダから部屋の中に戻っていった。
「・・・本気なのか?」翔が滝沢へたずねる。
「それ、咲のことか?だったら、いうまでもないね。俺が本気でないはずないだろ」
「ふん・・・でも、あんた、咲さん残して行方くらましてたんだろ?エデンのヤツラに聞いたぜ。その間連絡もなくて・・咲さん、ずいぶん心配したらしいじゃん」
「それはな、大人の事情ってやつがあったんだよ。コドモにはわからない、ね」
「わかんねーな、そんな大人の事情なんて。俺だったら・・・俺だったら、絶対咲さんを追いていったりしねー。たとえどこかへ行かなくちゃならない場合でも、ぜってー咲さんに連絡とる。咲さんを心配させねーように、コマメに連絡いれる」
「翔、お前・・」
「あんた、本当に咲さんをシアワセにできんのかよ?咲さんのこと、本当に大事にしてんのかよ?」
翔は挑むような目を滝沢へ向けた。
「あんた、自分の都合のいいときだけ、咲さんにくっついてんじゃないのか?咲さんのこと、あんたにとって二の次なんじゃないのか?」
「・・・・」
滝沢はしばらく黙って翔の目を見返していたが、やがて口を開いた。
「翔。お前、ホントに咲のこと心配してくれてんだな。ありがとよ。お前の気持ちには礼いっとくよ、一応」
「な、なんだよ、あんたに礼なんていわれたくねーよ、しかも咲さんのことで」
「まあ、人の感謝は素直にうけとっとけよ。あのな、翔、俺が、咲をシアワセにするとか、できるとか、そういうことじゃねーんだよ。」
「なに?」
「それにな、俺が咲をシアワセにするなんて、おこがましいんだよ。咲は俺をシアワセにしてくれるよ?それは絶対的真理。」
「ふん、勝手なことを・・・」
「俺は咲がいないと・・・咲が俺を信じていてくれていないと、俺はぜんぜん俺じゃなくなっちまう。俺っていう存在にはさ、咲はもう不可欠っていうか、血管の一本っていうか、細胞の一部っていうか。いや、もっと・・・そう、心臓みたいなもんなんだぜ、俺にとっての咲は。だから、俺が咲を大事に思ってるか思ってないかなんて、愚問中の愚問なんだよ。心臓なきゃ生きてけないだろ?心臓が動かなきゃ、一歩も前へ歩けないだろ?」
「・・・・」
「でもな、咲はさ、俺といればシアワセとか、俺と一緒だからいいとか、そういうことだけの子じゃないんだよ。もっとやさしい子なんだ。俺だけじゃない。いろんなヤツラの気持ちを思いやる子なんだよ。翔、お前のことだって・・・咲はすごく気づかってた。心の底から、お前が第一志望の学校に受かるようにって。神社にもお参りしてたぜ」
「咲さんが・・」
「うん、咲はさ、そういう子なんだよ。俺と咲の二人だけがよけりゃそれでいいなんて、思う子じゃないんだ。俺は、そりゃ、時々やきもちやけるけどさ。そんなやさしい咲が俺、好きだから・・・」
「あんた・・・」
「だからさ、俺がなぜ行方くらまさなきゃいけなかったか、咲はよくわかってるし、俺がやってきたこと、咲は・・・咲だけは信じてくれてるんだ。100パーセント、ね。俺だって、咲と離れている間はさみしかった・・・でも、それは咲を危険に巻き込まないためには必要なことだったんだ」
「咲さんのためだったとでもいうつもりか・・・?」
「咲のためだけど、それだけじゃないよ。俺ができる限りのことをやってみるため・・・日本全国のすべてのヤツラを救おうなんて、そんな大げさなこと考えてたわけじゃないけどさ。俺ができることをやろうって、やらなきゃって思ってたから。そのタタカイのため。かな?」
そう言って滝沢は翔へ笑顔を向けた。
「お前みたいな奴ががんばって、未来へむかって元気一杯なのを見るとさ。俺のタタカイもまんざら無駄じゃなかったって思えて。俺、うれしいよ」
「な・・なんだよ、別に、俺、おっさんのために受験勉強がんばったんじゃないからな!」
「ああ、わかってる。でも、お前らみたいなさ、未来を信じられるヤツラがけっこういるってことがさ、俺、うれしいんだ」
「滝沢・・・」
「そんな俺のメインの構成要素が、咲ってわけ。咲をシアワセにするもしないも・・・俺と咲って、一身同体だから、さ」
「ふん!変なリクツだぜ。これだから、おっさんは・・・」
「ははは、カンベンしろよ、「おっさん」は。俺、まだ23歳だっつーの!」
「俺からみりゃ、十分、おっさんだから」
「こいつ!でも、お前、見所あるやつだからな、許してやるよ!」
「ふん!別にあんたに許してもらう必要なんかねーよ」
「だけどな、翔。咲だけはだめだ。咲はお前には渡せねー。っていうか、誰にもゆずれねえ。それだけは覚えておけよ。」
「ふんっ!!あんたの心臓だからかよ?」
翔は、古いデザインと新しいデザインを融合させるのがすごく上手くて、彼のデザイン案は東のエデンサイトにも利用されて好評を博していた。そのお礼の意味もこめての合格パーティーだった。
飲んで、食べて。みんなでおおいに盛り上がった。翔も楽しそうに、未来の夢をみんなと語り合っていた。
咲はそんな翔を見て、本当によかったと、自分のことのように嬉しかった。
以前、翔から告白めいたことをいわれた時もあったけど。滝沢がジャマして以来、翔はそれらしいことは何も触れず、相変わらずやさしく咲に接してくれていた。
「咲さん・・・」
ちょっと風にあたろうとベランダにでていた咲の横に、いつのまにか翔がきていた。
「あ、翔くん、どう?楽しんでる?あ、でも、未成年だからお酒は飲んじゃだめだよ?」
「大丈夫っすよ。それより、咲さん、今日はありがとうございます。」
「ううん、そんなお礼なんて。翔くんの合格、みんなすごく喜んでるよ。だからみんなで祝いたいって思って・・・」
「咲さんは?」
「え?わたし?もちろん、喜んでるよ。本当におめでとう、翔くん」
「咲さん、俺、もうすぐ19歳。誕生日が4月だから」
「そうなんだ」
「咲さんと4つしか違わなくなるよ、年」
「そうだね。でも、19歳か。やっぱり若いね~」
「23歳だってすっごく若いよ。特に咲さんは」
「おいおい、俺には23歳はおっさんっていわなかったか?」
振り向くと、滝沢が二人の後ろに立っていた。
「なんだよ、おっさん。また、ジャマしにきたのかよ」
「ジャマ?別に。俺は俺の彼女のそばにいたいって思っただけさ」
そういって滝沢は咲の横に来て、彼女の肩に腕をまわした。
「へんなムシがつくと困るからな~」
「ふんっ!どっちがムシだか!」
「なんか、いま、おもしれえこと、いわなかったか?翔・・・」
「ふ、ふたりとも!ちょっと待って!わたし、飲み物とってくるから」
そう言って咲はベランダから部屋の中に戻っていった。
「・・・本気なのか?」翔が滝沢へたずねる。
「それ、咲のことか?だったら、いうまでもないね。俺が本気でないはずないだろ」
「ふん・・・でも、あんた、咲さん残して行方くらましてたんだろ?エデンのヤツラに聞いたぜ。その間連絡もなくて・・咲さん、ずいぶん心配したらしいじゃん」
「それはな、大人の事情ってやつがあったんだよ。コドモにはわからない、ね」
「わかんねーな、そんな大人の事情なんて。俺だったら・・・俺だったら、絶対咲さんを追いていったりしねー。たとえどこかへ行かなくちゃならない場合でも、ぜってー咲さんに連絡とる。咲さんを心配させねーように、コマメに連絡いれる」
「翔、お前・・」
「あんた、本当に咲さんをシアワセにできんのかよ?咲さんのこと、本当に大事にしてんのかよ?」
翔は挑むような目を滝沢へ向けた。
「あんた、自分の都合のいいときだけ、咲さんにくっついてんじゃないのか?咲さんのこと、あんたにとって二の次なんじゃないのか?」
「・・・・」
滝沢はしばらく黙って翔の目を見返していたが、やがて口を開いた。
「翔。お前、ホントに咲のこと心配してくれてんだな。ありがとよ。お前の気持ちには礼いっとくよ、一応」
「な、なんだよ、あんたに礼なんていわれたくねーよ、しかも咲さんのことで」
「まあ、人の感謝は素直にうけとっとけよ。あのな、翔、俺が、咲をシアワセにするとか、できるとか、そういうことじゃねーんだよ。」
「なに?」
「それにな、俺が咲をシアワセにするなんて、おこがましいんだよ。咲は俺をシアワセにしてくれるよ?それは絶対的真理。」
「ふん、勝手なことを・・・」
「俺は咲がいないと・・・咲が俺を信じていてくれていないと、俺はぜんぜん俺じゃなくなっちまう。俺っていう存在にはさ、咲はもう不可欠っていうか、血管の一本っていうか、細胞の一部っていうか。いや、もっと・・・そう、心臓みたいなもんなんだぜ、俺にとっての咲は。だから、俺が咲を大事に思ってるか思ってないかなんて、愚問中の愚問なんだよ。心臓なきゃ生きてけないだろ?心臓が動かなきゃ、一歩も前へ歩けないだろ?」
「・・・・」
「でもな、咲はさ、俺といればシアワセとか、俺と一緒だからいいとか、そういうことだけの子じゃないんだよ。もっとやさしい子なんだ。俺だけじゃない。いろんなヤツラの気持ちを思いやる子なんだよ。翔、お前のことだって・・・咲はすごく気づかってた。心の底から、お前が第一志望の学校に受かるようにって。神社にもお参りしてたぜ」
「咲さんが・・」
「うん、咲はさ、そういう子なんだよ。俺と咲の二人だけがよけりゃそれでいいなんて、思う子じゃないんだ。俺は、そりゃ、時々やきもちやけるけどさ。そんなやさしい咲が俺、好きだから・・・」
「あんた・・・」
「だからさ、俺がなぜ行方くらまさなきゃいけなかったか、咲はよくわかってるし、俺がやってきたこと、咲は・・・咲だけは信じてくれてるんだ。100パーセント、ね。俺だって、咲と離れている間はさみしかった・・・でも、それは咲を危険に巻き込まないためには必要なことだったんだ」
「咲さんのためだったとでもいうつもりか・・・?」
「咲のためだけど、それだけじゃないよ。俺ができる限りのことをやってみるため・・・日本全国のすべてのヤツラを救おうなんて、そんな大げさなこと考えてたわけじゃないけどさ。俺ができることをやろうって、やらなきゃって思ってたから。そのタタカイのため。かな?」
そう言って滝沢は翔へ笑顔を向けた。
「お前みたいな奴ががんばって、未来へむかって元気一杯なのを見るとさ。俺のタタカイもまんざら無駄じゃなかったって思えて。俺、うれしいよ」
「な・・なんだよ、別に、俺、おっさんのために受験勉強がんばったんじゃないからな!」
「ああ、わかってる。でも、お前らみたいなさ、未来を信じられるヤツラがけっこういるってことがさ、俺、うれしいんだ」
「滝沢・・・」
「そんな俺のメインの構成要素が、咲ってわけ。咲をシアワセにするもしないも・・・俺と咲って、一身同体だから、さ」
「ふん!変なリクツだぜ。これだから、おっさんは・・・」
「ははは、カンベンしろよ、「おっさん」は。俺、まだ23歳だっつーの!」
「俺からみりゃ、十分、おっさんだから」
「こいつ!でも、お前、見所あるやつだからな、許してやるよ!」
「ふん!別にあんたに許してもらう必要なんかねーよ」
「だけどな、翔。咲だけはだめだ。咲はお前には渡せねー。っていうか、誰にもゆずれねえ。それだけは覚えておけよ。」
「ふんっ!!あんたの心臓だからかよ?」