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嘘も本当も何もかも【新帝&臨帝】

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玄関を開けて早々に「臨也さんと付き合うことになりました」と帝人から告白されて新羅はどう反応するべきか少し迷った。
セルティ以外に気持ちを向けることが少ない新羅ではあったが人間だ。
普通に驚いたり戸惑ったりする。

「とりあえず中に入る?」
「……失礼します」

こんな日に人生相談か、と思う気持ちもあったが逆に昨日でなくて良かったと思う。
あるいは目の前の少年は日にちを勘違いしているのだろうか。
真剣に嘘を吐くことも別に悪くはないと新羅は思う。
セルティに話題を提供できるのだから少しの間、年下にからかわれてやってもいい。

「泣きながら付き合って欲しいって言われたんです」
「臨也が? 泣きながら?」
「昨日の朝に……」

紅茶を帝人の前に置きながら、色々な意味で困るだろうなあと帝人の心中を慮った。
冷蔵庫にあったモンブランを勧めれば恐縮されてしまう。
この前、知り合ったばかりの少女も遠慮がちだったと考えて二つ買っておけばよかったと後悔する。
いつも食べるのは新羅だけなので多くは用意しないのだ。

「これは三時のおやつ用だったんだ。たぶんケーキはセルティが買ってきてくれるからバレないように今のうちに片付けたいんだけど……一口貰えれば私は構わないよ」
「……すみません、頂きます。どこ食べますか? 栗?」
「モンブランの一口。案外難しいね。なんと言っても土台はメレンゲみたいだからフォークを入れた瞬間に崩れ落ちそうだ」
「嫌じゃなかったら一口どころか、一緒に食べてください」

一人で食べるのが気まずいのだろう。
新羅は頷きながら「それで、帝人君は臨也と付き合うことにしたのかな?」と話題を戻す。
帝人にとっては嫌なものかもしれないが、この話をするために来たのだろうから仕方がない。
二人してモンブランを突きながらここには居ない臨也について話す不思議。

「泣いてたんです。臨也さんが泣くなんて、僕……ビックリして」
「嘘泣きでもしそうにないんだけどね」
「そうですね。精々大笑いして浮かんだ涙を拭うぐらいですか?」
「それも実は珍しいかな。見たことはあるけどね」
「仲、いいですね」
「腐れ縁って奴だ。中学の時からだから」
「臨也さんのこと、どう思ってます?」
「さあね。臨也のことだから俺が言ったその意見とは逆になろうと頑張ったりするんじゃないかな」
「それはそれで何だか健気ですね」
「負けず嫌いなんだろうね。そういう一途さみたいなのは静雄と同じだと思うんだけど」
「平和島さんも負けず嫌いなんですか?」
「見て分からない? 支離滅裂に見せかけて唯我独尊に見せかけて静雄の頭の中は至ってシンプル」
「負けたくないから強いんですか」
「まあ、これだって端から見ている私個人の勝手な解釈だからね」

一呼吸おいて新羅は帝人の手が止まっていることに気付く。

「お酒が利きすぎてあんまり美味しくなかった?」
「……あ、いえ」
「どうせ貰い物だから気を遣わないでいいよ」
「臨也さんですか?」
「よく分かったね。もしかして渡されたことがある? あ、君の誕生日は先月だったか。遅くなったけど誕生日おめでとう」
「新羅さんも誕生日おめでとうございます」
「知ってたんだ」
「セルティさんが教えてくれました」
「仲良いね。妬いちゃうなー」

本気の軽口に帝人は微笑んで「臨也さんと付き合うことになったんですけど」と小さな声で呟く。
聞かせないようにしているかのような言葉。

「僕、好きな人が居るんです」

わざわざ言ってくるということは臨也ではないということだろう。
自分に求められていることもよく分からなかったが新羅は「それはセルティじゃないよね?」と一番の心配事たずねた。
帝人がセルティを好きだとなると結構な障害だ。

「違いますよ」
「よかった。セルティが君をフルにしても仲がいいからこそ悩むだろうからね」
「セルティさんは優しいですからね。困らせたくないです」
「セルティは人の世話を焼くのが意外に好きだからね。だからって勘違いしちゃダメだからね」
「分かってます。もうすぐでセルティさんが帰ってくると思いますから、僕は」
「一緒にいてくれても構わないよ? 人が多い方がセルティも喜ぶ」
「でも、新羅さんは二人っきりがいいですよね。誕生日ですから、静かに過ごしてください」

急に爆弾を持ち込んで置きながら帝人は知らん顔。

「帝人君は困ってたの? 臨也に告白されて」
「泣かれたのに驚きました」
「そっか……。別に臨也が嫌いじゃないならそのまま付き合ってあげればいいんじゃない?」
「エイプリルフールだと思いませんか?」
「分かっているだろうことを指摘するなら、それが帝人君に与えられた逃げ道なんだろうね。君は逃げたい?」
「分からないんです」
「……一問一答にもならなくて、ごめんね」
「いえ。すみません……誕生日にこんなこと言い出して」
「友人の意外な一面を知ったことが誕生日プレゼントだと思っておくよ。何かあったら、またおいでよ。セルティは誰かに頼りにされると喜ぶからさ。あ、惚れちゃダメだからね」
「セルティさんが素敵な人なのは言われなくても知ってます」

笑って返されて玄関で会った時の緊張が解かれたことに新羅は少し良かったと思った。
さすがに何の解決もなく放り出すのは気が引ける。
新羅に対して吐き出すことで帝人が楽になったのなら意味がある。

「どうして僕に相談しようと思ったんだい」
「どうしてだと思います?」
「セルティに臨也の友達だって聞いたから?」
「そうです。ごめんなさい。セルティさんには少し時間を潰してもらっているんです」
「君が帰ればセルティも帰ってくるのか……」
「邪魔してすみません」
「内容が内容だからね。清廉恪勤なセルティには聞かせられないよ」

分かっていたことではあるが、どこまでも、いつまでもセルティ中心な新羅の言い分がおかしかった。
口の中にあるモンブランの味を紅茶で流し込んで立ち上がる。
流しへと持って行こうとして止められた。
一分一秒でも早くセルティに会いたいのだろうか。

(こんな風にうがつのは失礼か……いや、新羅さんだもんなあ)

携帯電話でセルティにメールを送って新羅に「もう帰ってきますよ」と笑う。
余裕の顔をしていた大人が苦笑いに変わった。





馬のいななきにセルティが帰ってきたことを確認して帝人は玄関からガレージへ向かう。
礼を言って明るい顔を見せれば安心したように肩から力を抜いて「よかった」とPDAに打ち込んだ文字を見せてくれるセルティ。

「今日はお邪魔してしまって、すみませんでした」
『いいんだ。新羅はちゃんと相談に乗ってくれたか? アイツは悪い奴じゃないんだがちょっと』
「大丈夫です。どうするべきか決めました」
『そうか、ならいいんだが……。また何かあったら、私でも新羅でも気軽に頼ってくれ!』
「お二人とも本当に優しいですね」
『実は今日は新羅の誕生日なんだが』
「いえいえ。誕生日は二人で過ごしてくださいよ」
『そうか……新羅も別に怒ったりしないと思うんだが……』
「口で言ってるものと実際は違うものですよ」
『アイツは無駄にべらべら喋ってよく分からない時があるからな』