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新生勇者戦記 ブレイヴ・サーガ・ディザスター 第14話

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  第14話 「チャリティー・ライヴ」


  春休みのとある日。新歓ライヴに向けての練習をしていた放課後ティータイムのメンバー。

  桜高の事件から3ヶ月余りが経とうとしていた。だが、未だに心に傷を負っている生徒は少なくない。彼女達のメンタルの回復は驚異的なものだった。

  ウォーミングアップに「ふわふわ時間」の演奏をする彼女達。

      ♪ 「ふわふわ時間」

                      ・
                      ・
                      ・

  演奏が終わる。彼女たちが初めて作詞作曲して披露したこの曲。今や彼女達の代名詞的な曲となっていた。だが、今の感じに澪がダメだしする。

  澪 「うーん・・・・若干律が走りすぎだったような感じがするぞ?」

  律 「そーかー?このくらいが私はちょーどいーんだーい。」

  梓 「そうなると音が合わせづらくなっちゃうんですよ〜・・・。」

  律 「ぶーぶー!いーじゃん!べつにぃー!」

  澪 「いや、よくないだろ・・・。」

  唯 「あれー?次の曲、カレーだけど・・・フレーズわすれちったー。へへへ☆」

  梓 「また忘れちゃったんですか?!もー!しっかりしてください、唯先輩!」

  そこには文化祭以前の軽音部の空気が戻りつつあった。紬が思わず笑いを溢す。

  紬 「・・・ぷっ!あはははは!」

  律 「なんだー?!ムギが壊れたかぁ?!」

  澪 「どうかしたのか、ムギ?突然笑い出して。」

  紬 「だって、いつもの私達の空気が戻ってきたんですもの。そう思ったら何だか嬉しくなってきちゃって・・・。」

  それを聞かされた一同ははっとなった。何も無かった平和な日常の頃の空気。それが確かにあると気づかされたのだ。

  澪 「・・・そうだな。言われて見れば確かに。まだあの出来事から半年も経っていないのに・・・・・これもやっぱり・・・。」

  律 「だーいすきなゆーしろーくんのおかげってかー?」

  横から律が突っ込む。顔を真っ赤にした澪がゲンコツを入れて否定する。

    ゴンッ!!

  澪 「いきなりなにゆーんだっっ!!バカ律っっ!!」

  律 「いてー!!」

  紬 「澪ちゃん、そんなに恥ずかしがらなくても・・・恋愛って大事な事よ?」

  澪 「む、ムギまで何を言って・・・あーもー練習、練習!!新歓ライヴに向けて練習しておかなくちゃなー!!さーカレーだ!ホッチキスだー!!」

  だが、傍らでは唯が梓にすがり付いていた。

  唯 「ねー、あずにゃーん、おしえてよー。」  

  梓 「ぎゃー!!わかりましたから抱きつかないでくださーいっっ!!!」

  このぐだぐだ感がまた彼女達の軽音だった。また紬が笑う。  

  この状況に一つ軽めに溜息をつくと澪はふっと笑った。

  澪 (ほんと・・・ムギの言うとおり久しぶりだ。こんなぐだぐだ感が日常茶飯事だったんだ。律は走り気味で、唯は天然炸裂させて、梓がしっかりしろって促して、ムギがそれを見てニコニコしてて・・・・でも一度演奏を始めれば一つにまとまる・・・それが私達放課後ティータイムなんだ。)

  その時だった。顧問のさわ子が入ってきた。

  さわ子 「おはろはろ〜みんなちゃんと練習やってるー?」

  そしていつものティータイムが早速始まる。今日のケーキはミルフィーユだった。さわ子は感激しながら堪能する。

  さわ子 「ああ〜幸せ〜・・・・これが私の生きがい〜・・・。」

  梓 「・・・せっかく練習が続けられる空気だったのに・・・せめて後2曲くらいは練習したかったです。」

  さわ子 「梓ちゃん、固いことは言わないの!ティータイムの後でもいいじゃない。これをやらなきゃ私の一日が始まらないのよ!春休みにティータイムが出来るなんて最高!」

  梓 「春休みだからこそ、新歓ライヴに向けての練習じゃないですかー!」

  澪 「まぁ、まぁ、梓。少しくらいはこう言った時間も私達には必要なんだからさ。」

  梓 「・・・澪先輩・・・そう言われてみるとそうですね。」

  澪は梓にとって尊敬する存在の先輩だ。澪の言葉を梓は素直に受け入れる。

  律 「どっちが教師なんだか〜・・・さわちゃんは落ち込むとかするイメージ無いよなー。ホント!」

  さわ子 「前にも言ったような記憶あるけど、そんなことないわよ。ほんの3ヶ月前は学校で気を張り詰めさせていた分、家ではホントにブルーだったんだから。生徒達を守りきれなかった事をずっと悔やんでいたわ。何故、あの時あの場所に居てあげられなかったんだろうって・・・。」

  紬 「先生・・・じゃあ、私達にも無理して振舞っていたんですか?」

  さわ子 「まぁね・・・けれど、それじゃダメだって思って・・・前に進むしかないじゃないってね・・・あ!!!」

  突然さわ子が思い出したかのように声を出す。  

  さわ子 「そー、そー!大事な事を伝達するのを忘れてた!!急な話だから無理しなくてもいいんだけど・・・。」

  律 「なんだぁ?急に?」

  さわ子 「市が急遽ハカイジュウ災害で落ち込んでしまっている街を少しでも明るくしようと、チャリティーライヴを今月末に市民文化センターで開催するの!その事で今、市内各地のバンドや各学校の軽音部を募集してるのよ。出たいって言うなら手続きをとるんだけど・・・。」

  確かに急な話で突然だった。だが事実、澪や律としてもチャリティーライヴをやりたいという意気込みがある。

  律 「確かに急な話だ・・・それにちょっと市内とはいえ、遠いしなー。」

  紬 「路線を乗り継いで、幾つか駅を越さなきゃいけないものね。」

  律 「けど、前に澪にも言ったけど、チャリティーライヴやろうって思ってたんだよ・・・みんなはどう思う?」

  紬 「当初、周りの空気を考えるとやりづらかったのよね・・・一時期は部活自体を家の会社関係のスタジオで練習してたものね・・・うん!音楽の力でみんなを元気にするチャンスよ!やろー!」

  澪 「うん!やりたいっ!私もずっとそう思いながら練習してた。私達が街の人達にできる事だ!!多少距離はあるかも知れないけど、やってみる価値はあると思う!」

  澪の意見に梓も笑顔で賛同する。

  梓 「澪先輩の言う通りです!急過ぎな話ですけど、悪い話じゃないと思います!!私もやってみたいですっ!!」

  律 「反対意見も出ないみたいだな。唯はどう思う?」

  唯 「え?え??んーとねぇ・・・途中でカフェとか寄って遊んで行きたいよねー。」

  律 「・・・・・いや、そんなこと聞いてないからっ。」




  その日の夕方。澪と律は唯達と別れた後、街の川原に寄り道していた。暇を持て余していた勇士朗と蓮も加わって、コンビニのフードを食べていた。澪の傍らには愛用ベースが置かれている。

  律 「なんだか悪いな。調達してもらっちゃって・・・・まさか、きげんぎれじゃないだろーな〜これぇ・・・。」