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もくまおう

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【もくまおう】

ランセ地方にあるハジメの国のブショーリーダー、ネヤにとって、亡き母の墓参りをするのは日課であり、習慣だ。
母親の墓はハジメの国の森の奥にある。父親が言うには母親と初めて出会った場所だそうだ。
その父親も今は居ない。
足下にはパートナーポケモンのイーブイが居る。
右手の木桶に持ち運べるだけの水を入れて、柄杓を入れ、歩いていく。
左手には育てている花を花束にして、持っていた。
今日は晴れで、雲がいくらか青空に浮かんでいる。

「着いた」

開けた場所には磨かれた直方体の石が置かれ、ネヤの母親の名が掘られていた。
墓石に柄杓で桶の水をくんでかける。墓の手入れをするのはネヤだけだ。
墓に水をかけるだけかけると、花を置いて、手を合わせる。

(母さま……)

心中で、母に呼びかける。
かつては、三つ上の兄であるオトヤも母の墓参りをしていたいた。
オトヤは先代のブショーリーダーであり、小さい頃から父親にブショーリーダーとなるための
訓練を受けていた。
ブショーリーダーをしていたオトヤが、ある日、伝令から来た手紙を読んでから、ブショーリーダーを
ネヤに任せて、行き先も告げずに旅に出た。
ブショーリーダーというのは世襲制ではない。ポケモンと気持ちを通じ合わせることの出来る人間、
ブショーの実力が強ければ、元から居たブショーリーダーを蹴落とすことが出来る。
その国で一番強いブショーがブショーリーダーだとネヤは聞いたことがあった。
ネヤの父親は、ハジメの国のブショーリーダーだった老人にブショーリーダーを譲られた。
それから十年以上、父はブショーリーダーを務めていた。
父親は母親が死んでから、オトヤにブショーリーダーを譲り、旅に出た。
老人、父、オトヤ、ネヤの順番で、ハジメの国のブショーリーダーは変わっている。

(大変なことになってます)

どうにか、ブショーリーダーを務めていたネヤだったがある日、隣のカエンの国から城を渡せとイクサを挑まれた。
ランセ地方にはイクサというブショーとポケモンが協力して戦う戦いがある。
リーダーを譲られたとは言え、ネヤはろくにイクサの経験もない。周囲の国は攻めてこなかったのだ。
オトヤの見よう見まねでイクサをしたネヤはプリンを引き連れたオイチと出会った。
オイチは自分に仕えたいと言い、そこから平穏な日々は終わりを告げた気がする。
特訓をしていたら少年三人組にカエンの城を攻めろと言われて攻めて勝ったら、次は周囲の城となり、
今ではネヤはカエン、アオバ、イズミ、ハジメの城を手に入れてしまった。四つの城の主である。

(私としては、平穏に暮らしたい。父さまや、兄さまの帰りを待って……)

イクサは嫌いだ。
ネヤが必死でやっているのは家族の帰る場所を守るためであり、預けられた国を守るためだ。
自分の平穏のために周囲の城を落としたら、北の脅威を聞かされた。
北にはノブナガという急激に他の城を手に入れて勢力を拡大しているブショーリーダーが居るらしく、
ノブナガを止めるために、オイチが幻のポケモンをネヤが手に入れることを提案したのだ。
幻のポケモンは十七の城を手に入れることによって姿を現すらしい。

「幻のポケモンは、父さまも言ってた」

ランセ地方に伝わる伝説。
十七の城を手に入れたら現れると言われている幻のポケモンを巡り、各地ではイクサが繰り広げられているという。
この辺りではイクサは少ない。田舎だからだ。
昔、まだ母親が生きていた頃、オトヤが父親に”父さんは幻のポケモンを手に入れたくないのか?”と聞いていた。
父親は笑い、”私はこの国とお前達や大事なポケモン達が居れば十分だ”と答えた。
ネヤも同じだ。
聞かされていたおとぎ話のように勇者にでもなれというのだろうか。
それは無理だ。
イクサは嫌いだし、ブショーとしての才能があるとか、イクサの才能があるとか言われても、嬉しくはない。

「父さまは、先々代のブショーリーダーのことだね」

「モトナリさん、どうしてここに?」

穏やかな声が聞こえ、ネヤが振り向いた。
背後に居たのは元アオバの国、ブショーリーダーであるモトナリだ。
ネヤはアオバの国でモトナリ率いるブショー達を倒してから彼は城をさっさと明け渡して出て行ってしまっていた。
モトナリ達を倒したネヤは残ったブショーに手伝ってくれるように頼み込んだり、
スカウトをしたりしてからイズミの国に攻め入った。モトナリの足下にはツタージャが居る。

「君に会いに来たら、墓参りに行っていると聞いたから、お母さんの墓みたいだけど」

「そうです」

「――良いお母さんだったんだね。先々代も、いい人だと聞いている。先代も、将来が有望だったと」

柔らかい笑顔を浮かべながらモトナリが言う。
家族のことを褒められるのは嬉しいが、同時に寂しくもなる。皆、今は居ない。

「ブショーリーダーは兄に任せて、私は、畑を耕したり、補佐をしたりだったのに、今じゃ、私がリーダーで」

父親はネヤのことをオトヤの予備とは考えてはいなかった。ネヤはイクサ嫌いであり、好戦的な方ではない。
行方が掴めない父親やオトヤが居れば今すぐにでもブショーリーダーを押しつけたいところだ。

「私もね。ポケモンの研究をしたりしていたかったのだけれど、周囲が頼ってくるからね。放っておけなくて、
ブショーリーダーをしていたよ」

「止めたなら、研究家にもなれるんじゃ」

「出来ると想っていたんだけど、そうもいかないようでね。北の脅威は、いずれこちらにも来るだろうから、
中央を突破されたら、一気にこっちだ」

モトナリは引退したがっているようだったが、アオバの国のブショー達はモトナリを頼りにしていた。
オイチも言っていたノブナガの脅威をモトナリは出してきた。ネヤは周囲の国は知っているが、
遠くになっていくとどんな国があるのかは知らない。

「中央が頑張ってくれたらいいのに」

思わず呟く。モトナリはネヤの言葉を咎めることはしなかった。

「イクサは、嫌いかい?」

「嫌いです。旗を取るイクサとかならまだ良いけど、やっぱり嫌い」

「私もイクサは嫌いなんだ。ポケモンの研究をしていたいぐらいでね。その辺りは、私と君は似ているかも知れない」

旗を取るイクサはアオバの城でやった。モトナリは、”敵を倒すだけがイクサではない”と言っていたが、
そんなイクサもあるのかとネヤは驚いた。城を巡るイクサは城主であるブショーリーダーがフィールドのギミックや
ルールを変えられる。
足下でイーブイとツタージャがお互いを見合っていた。剣呑な雰囲気ではなく、互いに興味深そうだった。

「モトナリさんはだけど、ブショーリーダーで」

「失いたくないものがあったから、ブショーリーダーになったんだ。頼られたのもある。ネヤ、
君は――もっと世界を見た方が良い」

「世界を?」

ネヤが問い返すと、モトナリは笑みを深くした。

「君はね。ハジメの国に閉じこもっているんじゃなくて、きっともっと大きな世界を見るべきなんだ。私以上にね。
作品名:もくまおう 作家名:高月翡翠