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もくまおう

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君はポケモンを愛しているし、ポケモンに愛されている。イクサが嫌いなのもポケモンが傷ついたり、傷ついたりするのを見るのが嫌なのもあるが、ポケモンを道具扱いするブショーを見るのが嫌いなんだろう」

モトナリに言われて、ネヤは心中で同意する。
ポケモンは心を通じ合わせたブショーに力を貸してくれるが、ネヤが想うにその関係は互いが上でもなければ下でもない、対等だ。

「でも、十七の城を落とすとか、幻のポケモンを手に入れるとか、ノブナガを倒すとか、無理」

「君は三つの城を手に入れられた。一つずつで良いからやっていけばいいんだ。君は優しい。人やポケモンの気持ちに敏感だ。それは悪いことではないよ。相手が求めているものを理解して、答えてあげられる」

「答え……」

「自分以上の力を見せろと相手が思うならば見せればいいし、君が相手を倒さなければならないと感じるならば、
倒せばいい。答えるだけの力を出す特訓や訓練は必要だけどね。ネヤ、君なら出来るさ。私も手伝うよ。
オイチ殿や、他のブショー達も居る。ポケモン達だって居るんだ。戦うことは嫌かも知れない。
けれど、戦わないと見えないものもある」

ハジメの城を守ることだって必要だが、モトナリはネヤにそれ以上の大切なものを得て欲しいと伝えてきている。
世界の広さを知らなくて、空の青さを知ることも大切だろうが、得るものも、失うものも、得ようとしなければ得られない。
止まっている状態で失うのならば、得ようと行動をする方がマシだ。

「私、やってみます。――モトナリさん、手伝ってくれるって」

「私では役者不足かな?」

「いいえ。助かります!!」

迷いは浮かぶだろうし、ネヤはブショーリーダーとしてはまだまだ力不足だ。
それでも、助けてくれる人は居るし、ポケモンだって居てくれる。イーブイがネヤの方に飛び乗ってきた。
ネヤはイーブイを撫でる。ツタージャが自分もやりたいとモトナリを見つめてきたのでモトナリはツタージャを抱えた。

「ハジメの城に戻ろう。私の他にも、君の力になってくれる人が居る」

ネヤは正義の味方になりたいわけではないし、幻のポケモンを手にいられるとも想っても居ない。
守りたいのは、家族が帰って来られる場所で、大切なものを包む平穏だ。
他のポケモンとも逢いたいし、他の国も見て見たい。
ネヤは空っぽになった桶と柄杓を持つと、モトナリと共に城へと帰る。

(手を、伸ばしてみよう)

彼女は、望むことを望んだ。


【Fin】
作品名:もくまおう 作家名:高月翡翠